科学における「○○の悪魔達」

「黒白き悪魔」が舞い、冬の季節の到来も直視せざるを得なくなるこの頃…

冒頭の「黒白き悪魔」とは私の物凄く捻くれた「雪」のイメージです。

寒さの直接攻撃と露骨に狙われる足元、濡れから末端も冷やしてくる… 色々と慣れていない者には厳しいものがあり、ここ十年ほどどうしても良いイメージが持てない。後は何となく陰鬱さを思わせ、(こちらは情景描写でもよく描かれているのでしょうか?)この点からもどうしても「黒」と言う色を雪の中に見てしまいます。

(後はある国民的RPGにおいて悪魔崇拝の軍勢が雪原地帯を本拠地としている所
から 雪 = 悪魔 のイメージが出来ている所為か
)


科学(一部は哲学?)における「○○の悪魔」

「悪魔」と聞いて、科学の中でも時折出てくる「○○の悪魔」。
科学の説明においても、思考実験として幾つか出てきます。

マクスウェルの悪魔・ラプラスの悪魔 が有名ですが、本を探していた際に目に入った『デカルトの悪魔はなぜ笑うのか』 ... デカルトの悪魔は知らなかった。

デカルトとは『方法序説』、「我思う、ゆえに我あり」で有名なルネ・デカルトです。(『方法序説』が近代科学の手法を述べている等の関係で科学においてもよく目にする人物のように思われます)

xy(z)座標の直交座標(別名:カーテシアン座標)も「デカルト座標」と呼ばれ、幾何学と代数学を結びつけたデカルトの功績とされています。

…デカルトも悪魔を持っていたのか。
(検索しても上位には本のタイトルしか出てこない…)


「○○の悪魔」達


ラプラスの悪魔

ある時刻における原子の状態(位置と運動量)を知ったラプラスの悪魔はその原子の時間に対する変化を計算する(運動方程式を得く)ことで、その原子の動きを完全に予想することができる。(古典力学の恩恵)

あらゆるものは原子により構成されている。構成原子の動きが完全に予想できるのならば、あらゆるものの未来を完全に予言できるのではないか。

しかしながら、量子力学における不確定性原理(位置と運動量の広がりの値の積はある値以下にはならない)により原子の状態を完全に決定することは原理的に不可能であり、未来の予言は出来ないことが示された。


マクスウェルの悪魔

仕切りで区切られた2つの領域の仕切り部分に居るマクスウェルの悪魔は「高温の粒子」のみを検出し、高温の粒子が来た時にだけ仕切りを開ける。これにより、粒子は低温のものと高温のものに分けられる。

エントロピー(乱雑さ)の観点から見ると、低温と高温が混在する初期状態の方がよりエントロピーが高く、低温と高温が混在している初期状態から低温のものと高温ものに分けられるという結果はエントロピーの減少を意味する。

自然が自発的に向かう方向はエントロピー増大に向かう方向である(熱力学第2法則・エントロピー増大則)に反しておりこの結果は起こり得ない。

したがって、マクスウェルの悪魔は存在し得ない…とされていたが、現代ではマクスウェルの悪魔を召喚する研究があるそうです。

(訂正:初稿では ボルツマンと記載していましたが、マクスウェルの誤りでした。
マクスウェル・ボルツマン分布 等に引きずられて混ざってしまっていました)


デカルトの悪魔

デカルトの悪魔は、脳に入力される情報を操作して幻影を見せる。

我々の認識する世界が、脳にそうなるように入力された情報により形成される幻影だとして、我々はどうしてそれが幻影であると判定できようか。(デカルトはこれと区別するため、認識する主体としての「自己」の必要性を述べており、これが有名な「我思う、故に我あり」に繋がっている)

このバリエーションが、我々の認識する世界は何か(外部に存在するコンピュータなど)に操作された脳が我々に見せているものである、とする「水槽の脳」説です。

検証も反証も不可能なため、現状では科学の領域ではない…でしょうか?


絶対これの信者だろうと言われて久しい「水槽の脳」…これもデカルトだったか…
どうやら、私はデカルトからは逃げられないようです。


「我々の認識はどこから来るのか?」について色々な所で議論され続けていますが、今の所の私の最も納得しているものは、「脳と言う神経の塊が、科学法則に従って我々の認識を構築しており、それで見える認識が我々の認識である」という解釈です。(水槽で繋がれていたとして区別できないものですね。)

「水槽の脳」… 映画『マトリックス』が有名みたいです。何回かお勧めはされていますが、見たことはないので、冬休みに消化すべき「積ん読」に加えておきますかね。
(「マトリックス」と聞いてイメージするものは?…専門の人:タンパク質関係の研究手法(マトリックス支援…)   普通の人:映画 私:行列…ですよね?)

エントロピーの増大に従って(?) 私の積ん読の山は膨張を続けるようだ…

参考文献

デカルトの悪魔はなぜ笑うのか - 100のアナロジーで読む素晴らしき科学の世界 ジョエル・レヴィ(Joel Levy) 著  緑 慎也、今里 崇之 訳 創元社 2014

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