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縁はつづくよどこまでも

突然だが、僕は猫ちゃんだけではなく、ワンちゃん(犬)も大好きである。雑種犬を飼っていたことがある。中1の時に死別し悲しみに暮れていた。

そんな時に映画「クイール」と出会った。映画を観て以降、盲導犬について深く考えるようになった。目の不自由な方を放っておくことができなくなった。そして、人間のために尽くしてくれるワンちゃんに感情移入してしまって、盲導犬と出会うたびに溢れる涙。

高校大学時代に障がいをお持ちの方のお役に立つ仕事をしたいとはまったく考えていなかった。ただ、目の不自由な方に出会うたびに「無事に目的地に辿り着いて欲しい」と願っていた。「お手伝いをしたい」というこころは漠然と持っていた。そしてどうしても盲導犬に目がいってしまう…


そのようなこころで学生時代を過ごす中、就職活動で「なんとなく」公務員を志望した。やりたいことがまったくなかったのだ。そして「なんとなく」資格予備校に通った。周りは優秀な方ばかりで落ち込む日々だった。

予備校の授業が終わって帰るのはデパートが閉店する時間帯。帰り道にデパートの中を通っていたのだが、入口に設置してある盲導犬の募金箱が目に入った。
昔飼っていた犬や映画クイールの記憶が走馬灯のように目の前に現れた。

「なんとなく」という思いで、バイトで稼いでいるお金のほとんどを募金した。当時、親には呆れられた(笑)
その後も予備校帰りにその盲導犬の募金箱にわずかばかりだが募金するようになった。見返りなんて考えず、1円でもいいから毎日毎日募金箱にお金を入れていた。ほんとうに「なんとなく」だったのだ。

前の記事で書いた通り、公務員にはなったが、希望した勤務地には入庁は出来なかった。


某区役所に内定が決まり、希望部署は総務課と建築審査課で出した。実は密かに出世コースを狙っていた。

ところが、現実は甘くはなかった。配属されたのは福祉事務所。事務職で入ったのに福祉事務所…

当時は「終わった」と思った。


ケースワーカーとして生活保護受給者への援助、自立支援業務がスタートした。
毎日怒鳴られる、暴行される、ほぼ毎日起こる傷害事件…
詳細は省くが、いろいろな葛藤があった(ご想像にお任せします)

とにかく無我夢中で仕事をした。110世帯くらい担当した。そこではいろいろな人と出会った。その中でもある全盲の方との出会いが僕のこころを動かした。

初めてご自宅に訪問に行く時に、目の不自由な方とどのようにお話を進めればいいか悩んだ。ところが、会った瞬間にその悩みは吹っ飛んだ。
その方はとにかく明るいのだ。

「昨日カラオケに行ったんだよ」
「明日雨降るから傘持ってきた方がいいよ」(実際翌日雨が降った)

余計な心配をした自分を恥じた。こちらが励まされたのだ。


ここまでお読みいただければおわかりかもしれない。
僕はすべてに自信も確信も持てず「なんとなく」生きていた。「なんとなく」進路を決めて「なんとなく」気づいたら目の不自由な方と関わる仕事をしていたのだ。


「盲導犬の募金箱が導いたご縁なのかな」

今はそう思う。


配属先が福祉でよかった。自己実現を達成できたから。その後も盲導犬関係の仕事とご縁があり不思議だなと思いつつ、幼い頃に飼っていた犬や映画クイールを思い出していた。

望み通りにはいかなかったけれど、誰かのために尽くせるってすてきだし、しあわせなこと。最近は猫に夢中ではあるが、人間に寄り添う犬や猫を見ると自然と笑顔になれるし感極まって涙が溢れることもある。

今でもデパートの募金は続けている。ご利益を期待しているのではなく、人間に寄り添ってくれるワンちゃんに感謝を込めている。(僕だって将来的にお世話になることがあるかもしれない)。


「徳を積む」なんて仰々しいことは言えない。ただ、目には見えないご縁に感謝せずにはいられない。目の行き届かないところに目をやることはどれだけ奥が深いことか。

どんな行いも必ず誰かが見ている。ご高齢の方も幼い子どもも障がいをお持ちの方も。きちんとみんな見ているよ。目の不自由な方だって見えている(僕はいつもそう思って接している)。


一連の出来事で学んだことは、考えても出せない答えなら無理に出す必要なんてないということ。普段必死に生きているだけで自ずと答えは出てくる。答えの方から寄ってくる。大事なことはそれに気づくことができるかどうか

余計なものなんて何一つない。

毎日悩みの尽きない日々を送っているが、春先になるとふと思い出す記憶である。

P.S.

私事ではあるが、昨年11月に介護職員初任者研修(ヘルパー)の資格を取得した。情熱だけでは変えられない未来もあるとは思うが、理念ある情熱を持ちこれからの未来を切り開いていく。
今度は「なんとなく」ではなく、目標を明確にして困っている方に手を差し伸べていきたい。

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