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15 不妊休職

流産をしたとき、私は仕事を休むことを決めた。

夫に相談する時、少し怖かった。

そこまでしなくていいんじゃないか
お金はどうするのか
キャリアを止めていいのか
休んで具体的に何をするのか

などと言われるのではないかと不安だった。
でも、そんな心配ごとは必要なかった。夫は、最後まで聞いて、いいと思うよ。お金は心配しなくていいよ。大丈夫だよ、と。

そもそも妊娠する前から、実は休職を考えていた。時間的な仕事との両立はできていたけれど、精神的な両立がだんだんと難しくなっていったからだ。


いや、私は少し疲れていたのかも知れない。


仕事から離れたかったのかも知れない。
いつも何かに追われて、責任を背負って、前へ前へより速く進もうとすることから逃げたかったのかも知れない。
人付き合いから距離を置いて、自分だけの時間を過ごしたかったのかも知れない。何のために、働いているのか見失っていたのかも知れない。

会社は好きだった。でもだんだん好きな気持ちが薄まっていく感覚がここ5年ほどあった。会社は大きくなって、人と人との距離が離れて、システムは複雑化して、業務は細分化され分担されていく。

失敗は許されず、ミスをカウントされ、管理を強化され結果を求められる。
自分自身がやるぶんにはなんとも思っていなかったけれど、役職がつき、昇進していくたびにそれは自分以外へマネジメント範囲が広がっていく。

いつの間にやら、仕事が面白く無くなっていた。

転職を考えている間に、結婚した。妊活において、転職は得策ではない。どうにか自分なりに努力を続けて、頑張っていた。

そんな状態は長く続かないと思っていたけれど、妊娠・流産をきっかけに、何かが一気に溢れて、崩れていった。離れようと決めた。

決めてからは、気が楽になった。戻る場所がある状態で休めるのはありがたい。周りからすれば、迷惑なことは私が一番わかっていた。ごめんなさい。でもありがとう。

本当にありがとう。

こうして、私の不妊休職は始まった。

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