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【映画感想】シャドウ・イン・クラウド

クロエ・グレース・モレッツがなんだか気味の悪い生き物をタコ殴りにする予告に魅せられまして。第2次世界大戦中、極秘任務を命じられたクロエが爆撃機の銃座に閉じ込められたままゼロ戦やグレムリンと闘うB級アクション映画『シャドウ・イン・クラウド』の感想です。

えー、B級映画としてめちゃくちゃちょうど良い駄目さ加減というか、そこが最高というか、これはもう傑作の部類に入るんではないでしょうか?(そのダメさも含めて)アガる瞬間の多い映画でした。そして、クロエですよね。もうね、クロエが主演してくれたから成立してると言ってもいいでしょう。上映時間83分のうちの80分くらいはクロエですから。あの、まぁ、思えばクロエが世間にみつけられたのは、マシュー・ボーン監督の『キック・アス』の少女ヒーロー"ヒットガール"だったわけで。その少女的な容姿のかわいさとそれに反比例する様なエグいアクションで注目されたわけです(そして、『キック・アス』にしたって、アンチ・ヒーロー映画なんていうニッチなジャンル映画だったわけですよね。)。そういう意味では、今作はクロエにとっても原点回帰的な一作なわけですよ(クロエなんで今更こんな映画に出るの?と思いつつ、こういう世界の中で映えるのはそもそもの出自がそうだったってわけです。)。

でですね、この映画完全に前後半に分かれてまして、この構成が、まぁ、面白いというか、よくこれでやろうと思ったなというか。えーと、まず前半はですね、特殊任務を受けたクロエがある戦闘機に入り込むって話なんですけど、ここでのシーンがほぼ狭い銃座の中なんですよ。で、なにせ銃座なんで、動きもないうえにほぼクロエのバストアップショットなんですね。ただ、それでも、なぜか観れてしまう…。これがクロエ力なんでしょうかね。更に、ここでのストーリー上の見せどころはゲスい男どもにクロエが差別的な扱いを受けるというところなんですけど、これをほとんど男たちの音声(セリフ)とそれを受けるクロエの顔芸だけで乗り切るんです。なのに、観れる。そして、意図してるところが分かりやすい(だって、めっちゃ言葉で説明されますから)。そのうえ、ここでクロエが動きを封じられることによって、後半のアクション全開(しかも、そうとうフィクションでエンタメに振り切っている。)パートへの布石になってるんですよね。脚本的には「うまい」って感じなんですけど、それをむちゃくちゃシンプルに分かりやすくやってるって感じですかね(B級的にはとても良い演出だと思います。)。ちなみに脚本は、あの『ブルース・ブラザース』、『狼男アメリカン』の巨匠ジョン・ランディスの息子さんのマックス・ランディスさんです。『ゴーストバスターズ アフターライフ』のジェイソン・ライトマン監督(オリジナルの『ゴーストバスターズ』の監督、アイバン・ライトマンの息子さん。)といい、この頃の巨匠たちの2世が出て来て面白い映画を作ってるのはいいですよね。

で、この銃座のシーンが終わると一気にクロエと共に映画自体が動き出すんですが、そのきっかけとなるシーンがですね、最高なんですよ。まぁ、これは実際に映画を観てもらってびっくり(そして爆笑)してもらった方が良いと思うので詳しくは書きませんけどね。ここまでも特殊任務を受けて戦闘機に乗り込むクロエの謎とか、ゼロ戦とか、グレムリンとかが現実と非現実の狭間を行くようなプロットで描かれてるんですけど、ここからは非現実(エンタメ)全開で行きますよという宣言の様なシーンで。更にその非現実の中に、前半パートで描かれた戦争という舞台での女性蔑視の問題(?)がクロエが頑張ることでテーマとして浮かび上がって来るんです。ただ、それがグレムリンと素手で殴り合うということと食い合わせが良いのか悪いのかが全然分からない。ともすれば、その現代的なテーマを矮小化してるとも取られかねない(しかし、描こうとしている気概は感じる。)。というのがね。まぁ、B級アクション映画としてはとてもいい塩梅なんです。


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