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ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングル

「ジュマンジ」、「ジュマンジ」ねぇ。えー、1996年に公開された前作は観たはずなんです。ロビン・ウィリアムスが主人公の。テレビかレンタルビデオで何回か観てるはずなんですけどね。うーん、あんまり憶えてないんですよね。もちろん、ボードゲームの中に入ってしまうっていう設定は憶えてるし、宇宙に行っちゃう様な展開があったのも憶えてます。で、当時、もの凄い人気のあったロビン・ウィリアムスの主演なんで、結構面白かったはずなんですけどね。ほとんど印象がないんですよねぇ。まぁ、ということは、1996年当時にしても、割とハリウッド娯楽映画のひとつとして流し見してたんではないかなと思うんですよ。(同じ年に公開された「セブン」とか、「トイ・ストーリー」とか、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」とか、「12モンキーズ」とかは強烈に印象に残っているので。)なので、今回の続編もそんなに積極的に観るつもりはなかったんですが、すこぶる評判がいい。そりゃあ、面白いと聞いたら確かめてみたいじゃないですか、どんだけ面白いのか。で、観たんですが、これは、これから何度も見返す系映画の仲間入りしましたね。むちゃくちゃ面白かったです。「ジュマンジ : ウェルカム・トゥ・ジャングル」の感想です。

というわけで、前作が1996年公開なので22年ぶりの続編ということで、まずは前作が公開された90年代懐かし良さっていうのはありますよね。テーマ曲の「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」は言わずと知れたガンズ・アンド・ローゼズのヒット曲ですが、(これ、なんで映画のタイトルの方は "ザ" がなくなってるんですかね?言いにくいですよね "ウェルカム・トゥ・ジャングル" )ああ、なるほど、ガンズと言えば90年代を代表するロックバンド…ん?と思って調べてみたら、「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」が出たのは87年じゃないかよ!80年代じゃん!てことは、この曲をテーマに使ってるのって単純にジャングルに行く話だから?ていうか、ゲームの中の場所なんで厳密に言ったらジャングルに行くわけじゃないし、ガンズのこの曲だって本当のジャングルのことを歌ってるわけでもないじゃん。(と思って調べたんですが、確かに出だしで「ジャングルへようこそ、楽しいゲームが待ってるぜ」って歌っていて、全体的には女性を落とす歌なので、まぁ、合ってるっちゃ合ってます。)ということで、これなんですよね。この曖昧さと言うかいい加減さというか、適当な感じの、ノリでやっちゃえっていうのが今回の「ジュマンジ」の面白さのひとつではあるんですよ。で、その適当なノリっていうのをほんとに適当にやってたらちゃんと面白くはならないわけで。(物語が破堤してしまいますからね。)この適当な軽いノリを出す為に、かなり丁寧に作っていると思うんですよ。(少しだけハミ出すみたない部分も含めて。)

だから、内容的には前作と同じで、 "ジュマンジ" というゲーム(前作はボードゲームでしたが、今回はテレビゲームソフトになってましたね。ただ、ジュマンジ自体は前作と同じ物で、時代にあわせて擬態化させているみたいな設定になっていて。ジュマンジ自体の意識を感じて面白かったですね、この設定。)の中に入ってしまった高校生4人組(これがオタクだったり体育会系だったりギャルだったり、いわゆるカーストの違う子たちなんですけど、それぞれの理由で居残りさせられてひとつの部屋に集まるっていう、まるっきり80年代の青春映画「ブレックファスト・クラブ」と同じ始まり方なんですね。)が現実世界に戻る為に力を合わせてゲームをクリアして行くっていう冒険譚としては割とベタな話なんですが、いろいろ設定が凝っていて。例えば、この高校生たちがそれぞれゲームをやる時にキャラクターを選ぶんですが、ジュマンジ内ではその選んだキャラクター(アバター)として登場するんです。(なので、ドゥエイン・ジョンソンの中身がオタクくんだったり、イケイケ女子高生がジャック・ブラックだったりするわけです。)つまり、これって、「転校生」とか「君の名は。」みたいな身体入れ替わり系の面白さじゃないですか。それが4人出て来て、更に20年前にジュマンジの中に閉じ込められてしまった人も登場したりするので、これなんかは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」的な面白さなんですけど。そういう様々な映画の要素が入っていて、つまり、「ブレックファスト・クラブ」の設定を使って、「君の名は。」と「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をやっている様なもんなんですね。で、そうやって書くと他の映画のいいとこどりかよと思われるかもしれないんですが、まあ、そうなんですよ。簡単に言ってしまえば正にいいとこどりなんですけど、いいとこ取ってただ繋げただけだったら支離滅裂になるはずなんですよ。これだけ要素ぶち込んでたら、普通。だけど、この映画はそこが肝と言いますか。その繋ぎ方や作られた世界で活躍するキャラクターの描き方がもの凄く丁寧なんです。あの、要するに、アイデア出す時は「あ、これ、面白いから入れよう。」、「わぁ、それならあれもやりたい。」って風に適当に何でもかんでもぶち込んでるのを、いざ形にする時にもの凄く繊細に緻密に作ってるんだと思うんです。そのノリとやるとこちゃんとやる感の(混沌さも含めた)バランスが最高なんだと思うんです。

で、基本的には青春映画なので、登場人物の子達に感情移入したいわけじゃないですか。でも、この映画の主人公たちは、見た目はマッチョなおっさんだったり、小太りなおっさんだったり、チビのおっさんだったり、セクシーなお姉さんだったりするわけなので、見た目の可愛さやつたなさに頼れないんですね。要するに思春期のオタクの少年とか、引っ込み思案な女の子っていうのを演技で見せていかないといけないわけなんです。そういうとこの作り込みがすっごいちゃんとしてるんですよ。(つまり、ここ、こんだけ自由にやっちゃったら、ここは絶対にきちんとやらないと面白くないっていうのの見極めが正確なんです。)しかも、その思春期の少年少女をドゥエイン・ジョンソンやジャック・ブラックが嬉々として演じてるのがですね、これがまたカワイイんですよ。(ジャック・ブラックなんて、ほんとに途中から女子高生に見えてきますからね。)要するにちゃんとハミ出すと言いますか、思春期に友達と遊んでる時なんかに延々とノリでアホみたいなことして異常な程楽しい時ってあるじゃないですか。そういうのをやらせるだけやらせて、後からちゃんと大人が軌道修正してあげると言いますか。そういう(子供が子供のノリで遊びながら大人になることを知っていくみたいな)正にこの映画が言おうとしていることそのものが、そのまま映画の構成にもなっていて。だから、なんか、すんなり入ってくるんですよね、アホなこともまともなことも。でね、普通はゲームで遊ぶということが主題で、そこから主人公たちの成長を描くって場合、ラストではゲームをすることから卒業することが成長のメタファーとして描かれると思うんですよ。なんですが、この映画の場合は、ゲームをすることで成長が描かれるので、ゲームを辞めることが成長することとイコールじゃないんですよね。要するに規範の世間で言われる様な大人になることが成長なのではなくて、現実の自分を知ること、そして、それを受け入れることが成長するってことなんだって描かれ方がされているんです。そこがほんとに凄くいいなと思ったんですよね。

ということで、ほんとに高校生の時にアホな友達とアホな想像して延々遊んでた時の様なそういう多幸感があって、それを前作の「ジュマンジ」が持ってた90年代ハリウッド娯楽作の軽さというかチャラさ(褒めてます!)できっちり作ってて。アホと見せかけてじつは繊細にいろいろ考えてるっていうイケメン映画だったわけです。(最近、この手の、「イット」とか「レディ・プレイヤー1」みたいなきちんと作ったエンタメ映画が多くて嬉しいですね。)

http://www.jumanji.jp/



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