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#67 -ご飯の炊き方を知らないヨーロピアンに遭遇した時。エピソード2

エピソード1はこちらから↓

ほら、いつものライスが売ってたよ。

そう言って、ボクの前にいつものライスを放り投げたビクトル。

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ずい分小さいパッケージだなーと思ってビクトルから渡されたいつものライスを手に取ってみる。

昔サッカーの合宿などで米を各自持参するということがあって、その時もこんな感じで1合分くらいを袋にいれて持って行ったもんだなー。などと昔のことをフト思い出した。

パッと見では先日と同じタイプのインディカ米(Long glain)だよなー?とは思いつつも、もしかしたらなにか違いがあるのかも?と思い、袋をあけようとしたら、

Viktor・ちょちょちょty・・なにやってんの!開けちゃダメだよ!

そう言って慌ててボクを止めにくるビクトル。

??

今、食べないのかな?

Viktor・これね、このまま茹でるんだよ!

はい?(;'∀')

Viktor・沸騰しているお湯にこの袋を入れて、時間がきたらこの袋をお湯から出すんだよ!

またビクトルは爽やかな顔で、身の毛もよだつ様なおそろしいことを言っている。。。

日本でもパックライスを沸騰した湯で温めるものはある。

が、これは真空パックでもない。そして何よりも米が生だ。

ビクトルは続けて言った。

Viktor・ほら、この袋には穴が空いてるだろ?ここから余分な水がでるんだよ。

もう一度、いつものライスを顔から15cmの所で見つめてみる。


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おぉ!確かに!無数の穴が空いている。

Viktor・でね、茹で終わったら、袋の上の部分の切れ目をフォークでひっかけてお湯から上げて、水気をきるんだよ。

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おぉ、これのことか!

と、変に関心してしまったのは束の間で、プラのバッグに入ったまま茹でられたご飯を想像したらそれだけで食欲が無くなった。。

実際にビクトルは実演してくれたのだが、茹で上がった時には袋は水分を吸いきったお米でパンパンになっていた。

フォークで切れ目にひっかけ水気をきってまな板の上に置いた後は、ハサミを使ってジョキジョキ開封。そして袋を逆さまにし、お皿にざぁーっと盛る。

・・・・・・

またもや犯罪現場を目撃したような気分になった。

え・・・こんなことしていいんすか?みたいな。。


これはもう黙ってられない。曲がりなりにも日本人である以上、お米の種類が違うといえど、お米がこんな風に調理されているのを見て見ぬふりはできん。ビクトルにご飯の正しい茹で方、いや、炊き方を教えてあげねばならない!

そう意気込んでビクトルには明日またここにこの時間に来い。君に日本流の炊き方を見せてやるから。と約束した。

しかしその夜、あることに気付いた。

そーいえば、最後に鍋でご飯を炊いたのっていつだっけ?

・・・・・

そう。よく考えたら大抵の日本人はジャーで炊いているのだった。。ボクももちろんその一人。カナダに留学した時はアジア人が多かったので、炊飯器も現地で買えたので、鍋で炊く必要もなかった。

鍋で炊いたのはたしか数回。まだご飯が残った状態の炊飯器を洗うのが面倒くさくて鍋を使った時くらいだった。おそらく成功した数より失敗した数の方が多かったはずだ。

・・・・・

一気に不安になってきた。

当時(2007年)は、まだスマホも持ってなかったし、自分のノートパソコンも持ってなかった。ネットが使えるのはホステルにある共有PCのみでしかも日本語が打てなかった。(そんな時代もあったなー)

今であれば、スマホで、「ご飯 炊き方 鍋」とか入れたらいくらでもレシピやYoutubeのビデオがすぐに出てくる。

こうなれば使えるのはボクの頭に入っている知識のみ!

「始めちょろちょろ、中パッパっ!赤子泣いても蓋開けるな」

・・・・・

なんかあんまり役に立たない言葉だなーと思った。

「ちょろちょろ〇分でパッパと〇分。赤子泣いても〇分は蓋開けるな!」

の方が、わかりやすいのにー・・・と故人に不満を抱く。

当日。

ビクトルは相変わらず爽やかな顔をしてキッチンへやってきた。

Viktor・おはよ。

ボク・おはよ。

内心、一抹の不安はありつつもお米の炊き方講座は始まった。

そのいちぃ!まずお米を洗うこと!

そのにぃ!ざるは必要ないこと!

そのさんん!水の量は人差し指で図ること!

そのよんん!水に浸す時間を設けること!

そのごぉ!調理中にお米をかき混ぜないこと!

そのろくぅ!弱火にしてからは蓋を絶対にあけてはいけないこと!

と、大まかなルールを叩きこみ。実践してみせた。

始めちょろちょろ・・・の下りは実際何分かわかってなかったので、ご飯がこんな感じになったら・・・と、上手いこと感覚の問題にしておいた。。

やはり苦戦するのが火加減。特にヨーロッパでは電気コンロが多く、ガスと違い火加減がすごく難しいのだ。


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この手のタイプのコンロは、熱くなるのに時間がかかって、一度強火レベルになったら、弱火レベルに落としても、すぐには弱火になてくれないのだ。。(使ったことある人、わかってくれるかなー?)


悪い予感は的中した。


焦がした。。。(*'▽')


ちょっとではあるが、こげた匂いが鼻腔をつく。


割と早めに気づいたので、まだ続行できるレベルではあったけど、とりあえずビクトルには、炊飯器という存在に依存している日本の現状を伝えてみた。必死に。まるでボクの失敗はボクのお米の炊き方スキルの無さの所為ではないかのように。。。

最後には、このおこげの部分が好きな人もいるんだよー。なんて苦し紛れの言い訳もしてみた。w

多少底の部分は焦がしたものの、一応炊けた。そしてお米もしっかり芯まで炊けていた。それだけでホッとした。

ビクトルにはほくほくの部分だけをよそって、さぁ召し上がれ!と副菜と共にお皿に盛った。

Viktor・おぉ!ざる使わなくてもご飯は調理できるんだねー。

いや、なんか驚くハードルが低すぎるけど、まぁ、こっちも失敗しかけたからよしとしよう。自分の分もよそって、一緒に食べることに。。

そしてビクトルの方をみると爽やかな顔をしたまま、当たり前のように、バターを炊き立てのご飯の上に乗せ、塩を振りかけていた・・・・



(; ・`д・´)おんどりゃぁ!!!!



ご飯の炊き方というか、お米に対する文化があまりに違っていたのを身に染みて経験した瞬間だった・・・


母さん・・・世界は広いです・・・



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