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【IB・MYP・Science】新学期Unit”もの”の探究(ものシリーズPart1:Unitの設計編)

”もの”ってなんなんでしょう。
水ってもの?生き物って・・・地球って・・・。

そんな問いかけからスタートしましたこのUnit。
現在、絶賛実践の毎日を過ごしております。
夏休み、仙台で行われましたIB PDworkshop、
MYP Science cat1に参加してきまして、
ようやくIBのユニフォームを着れたような気になっております。
そんな気も相まって、非常にやる気勇んで
このUnitに入りました。

これから継続的に(ファイト、自分)このUnitに関する実践記録を
シリーズ化しながらここに書き溜めていきます。
今回はPart1ということで、
「どうやってこのUnitを設計したのか」ということを
ざっっっくりと、本当にざっっっっくり
書いていきます。それぞれの目次がデカすぎるから、
項目ごとに記事を書いてみたいなあ・・・。


プロローグ:MYPカリキュラムの設計について

公立中学校にいたころ、よく耳にした言葉があります。
「教科書”を”教えるのではなく、教科書”で”教える授業をしよう。」
教科書”で”教える授業を推奨する意味は、
その当時もなんとなーくわかりました。
要は、その教科書に書いてあるのだから読んだら知れることは
わざわざ教えなくとも良い。教科書を題材として、何かを教えよう。
ということなのだろうなあ。って感じ・・・。
・・・で。じゃあ何を教えたらいいの?
ここに自分の中における最適解がありませんでした。
結局7年間公立中学校にいましたが、自分の納得のいく答えは見つからず
(もちろん僕自身の勉強不足だと思いますが。)
これがひいては、自身の職業観にもヒビを入れてしまっていた話は
また別の機会にするとしまして笑

今現在僕が行っているIBカリキュラムにおける
「何を教えるのか」ということから、
過去の自分の疑問に答えるように書き殴っていきます。


①何を教えるのか。(Concept)

最も重要なポイント、そして最もズレていたポイント。
かつての自分は、「内容」を教えていました。
現在の僕の認識は、「概念的理解」を目指して教える。です。
いやいや、概念ってなんぞ?となると思いますが、
ひとまずここでは、一つの図を提示しておきます。

図1 イカの概念図
(思考する教室をつくる概念型カリキュラムの理論と実践  H・リン・エリクソン 著 参考に作成)

図1に示したこちらの図は、僕の学習の捉え方を大きく変えるものでした。
Oxford Education というyoutubeチャンネルからアップされている動画やら
上記にも示した本の中にも掲載されているThe structure of knowledgeという
図なのだそうです。

下から・・・
第1層:事実(イカの足先、細い線)
第2層:トピック(イカの目、緑の四角)
第3層:概念(イカの胴体、黄色の四角)
第4層:principle generalization(イカの耳先、三角形)
概念的理解は第4層の部分にあたると僕は、解釈しています。

僕はこれまで主に、緑の四角部分(下から2層目の3つ)までを教えてきました。今回の”もの”の学習で言えば、「物質のもつ性質」であったり、「物質の状態変化」であったり、「混合物の分離方法」であったり、です。
ただこれらは教科書”を”教える範囲から飛び出していません。
そこで鍵となるのが第3層、第4層にあたる部分の存在です。
限りなく説明を省いて必要なところだけをお伝えします。

重要概念(Key concepts)の選択

IBMYPでは、Key conceptと呼ばれる概念が16示されています。
その中でScienceとしてスポットを当てられている概念は以下の3つ。
Change System Relationship
です。
これらの中から一つを選択し、後に紹介するRelated conceptと接続します。今回は化学分野であり、物体や物質の状態を見る際に変化という概念を
持ち込みやすいだろうということで変化というKey conceptを選択。

関連概念(Related concepts)の選択

現在のIBMYPでは、Related conceptsと呼ばれる概念が
物理、化学、生物、総合理科それぞれの領域において12示されています。
今回扱うトピックは化学分野ですので、化学領域に示される12の関連概念から1〜2個選択しKeyconceptと組み合わせていきます。
※文章で書く以上、Key➡︎Relatedと選択しているように見えますが、
実際の思考は、かなり混沌としており選択に順番などはありませんでした。
重要なことは、Conceptを混ぜ合わせた時に生まれる概念的理解(Conceptual understanding)が生まれることです。
Balance Consequences Form Models
Conditions Energy Function Movement
Transfer Evidence Interaction Patterns
上記の中から僕は、Conditions Modelsを選択。
これらを考えている時に常に頭にあったのは、僕自身の概念的理解。
もやもやした概念をあえて言葉にすると
「形あるものは、いつか崩れる」
「ものを分けて何かをつくる」
「見えないものをモデルをつかって解釈しようとしている」
といった感じでしょうか。それらの概念と定めた3つのConcept
Change Conditions Modelsを絡ませて以下のような
Conceptual understandingを言葉にしました。
ものは条件によって変化する。
ものの観察できない可能性のある変化は、しばしばモデルによって説明される。
この言葉を生み出すのに、だいたい2週間ほどかかりました。
はじめはなんとなく見栄え的なカッコ良さを狙って、
2つの文章を1文に押し込んでいたのですが・・・笑
如何せん、難解な文章になるため生徒に理解されないだろうということで、
2つの文章とすることにしました。

ここまででカリキュラムの心臓部が設計されたことになります。本当はもっともっと細っかく書きたい・・・!文章にすると、ただの言葉遊びをしているように見えてしまってなんだか悲しいですが。僕の文章力が足りないということで、次!

②なぜ教えるのか。(Global context)

非常に重要な心臓部であるConceptual understandingの設計を終え、
大満足したい気持ちは山々なのですが・・・
教師はおそらく何を教えるのかということを
教科書”で”レベルに引き上げることはできているが、
生徒自身への動機づけがなされない。=実社会とのつながりが見えにくい。
という状態のはず。
「なんだか目の前にパスタ(概念のまぜもの)はあるけど、
パスタソースかけられてないから食べる気にならんわ。なんで素パスタなんか食べんとあかんの?」と、そんな感じのイメージです。

図2(絵1) 素パスタ食べんとあかんの?

なんで教えるの?これに対する一つの解答として、
Global contextというものがMYPカリキュラムには存在しています。
教科の枠にとらわれない6の領域がありそこから1つを選択し、
その領域に関連する探求例を題材として探究を進めるのです。
今回はScienceで最も選ばれがちな領域「科学技術の革新」から
「方法」「製品」という探求例を選択し、パスタに和えることとしました。

できあがったものがこちらになります。
・「方法」という探求例を選択した場合、
人間は条件によるものの変化をイメージによって説明しようと試みる。そして、その変化を利用してものを精製する方法を生み出した。
・「製品」という探求例を選択した場合、
人間は条件によるものの変化をイメージによって説明しようと試みる。そして、その変化を利用して、ものを精製・再構築し新たな製品を生み出した
このような感じです。
今回できあがったこの文章が、Statement of Inquiry(探求のテーマ)です。
急に出てきたこの言葉(探求のテーマ)の解釈については、
また後日、ということで。。。

パスタソース(Global context)を絡めたことで、
実社会とのつながりが生まれ、
「この世界ではこのように利用されているんだ」
➡︎「だからこの人はこの概念的理解が重要だと言っているんだ」
となるわけです。(んー・・・なってほしいのです)
このパスタソースの出しどころが非常に難しいと感じています。
今Unitでは、まだ僕は提示してはいません。
「方法」では「塩の精製」やら「金属の精錬」やら
「製品」では「土器の製作」やら「日本刀」なんかをトピックとして
出したいなあ・・・と絵に餅を描いています。

③どのように教えるのか。(Question)

問いを立てます。練りに練って問いかけます。
問いにいくつか種類があり、それらを分類しながらストックしておき、
そして生徒のようすを見ながら必要な瞬間に出す!!!
・・・という理想を描いております笑
実際のところまだはじまったばかりなのですが、
「問いのタイミング」についてはわからないことだらけです。
ですので、ここではストックしている問いを分類ごとに説明します。

事実的問い

大雑把にいうと、「何?」「どんな手順で?」です。
事実的知識や手続的知識(説明省きます)を問うものだと認識しています。
教科書に書いてあったり、調べたり聞いたりすればすぐに情報が出てくる。
かなり事実よりの情報に対する問いかけです。
生徒をひきつける効果は、あんまり高くないです。
例)
・”もの”とは何か。(質量とは何か。体積とは何か。)
・”もの”は何でできているのか。
・”もの”はどのような条件で、変化するのか。”もの”の種類によって変化の条件に違いはあるのか。
・”もの”の形態の変化によって、”もの”の何が変化するのか。何が変化しないのか。
・”もの”はどのような方法を用いて分けるのか。(ろ過、抽出、再結晶、蒸留)

概念的問い

大雑把にいうと、「どのように?」「なぜ?」です。
概念的知識を問うものだと認識しています。
個々の解釈によって納得解が異なります。
なぜならその解釈の根拠となる個人の獲得した事実は、その個人特有のものだからです。生徒の興味を惹きつける効果は出しどころによっては高くなるのではないかと考えています。
例)
・”もの”はどのような形をしているのか。”もの”は条件によって、なぜ形態が変化するのか。
・”もの”の微視的な変化はモデルによってどのように表すことができるか。
・人類はなぜ”もの”を分けるのか。人間は”もの”の変化とその変化の条件をどのように利用しているのか。

議論的な問い

これまで獲得してきた知識(概念的理解を含む)を使用する機会となる問いだと認識しています。正直、まだこの問いに関する自分の理解が浅いため、この問いの使い所や狙いどころがまったくイメージできていません。ですので、現段階で考えている問いの例をどぞ。
例)分けることによって人類が生み出した”もの”が人類の進歩に与えたインパクトの大きさについて。

これらの問いを、生徒の言動や興味によって出し引きしながら、探究を進めていくようなイメージです。この問いが立ったことでようやく「毎時間何をするのか」問題が解消され、次はこれかな?と道筋を立てられるようになったように感じています。

④どのように評価するのか。(Assessment)

実はまだ、模索中でして・・・。現段階でこのUnitに関する具体的な設計を提示することができない状態です。
ただし、Assessmentについて仙台で学んできたこともありますので、
それはまた別の記事で投稿します。
(もう、書き疲れた・・・とは言えない)

ということで、授業を始めるまでの設計の流れを
ダラダラと書きました。
日々の実践はもうすこし、文章量抑えて(書くの辛いので・・・)
短めのスパンで書き込めるようにします。
生徒の生の声とか、書き留めておきたいし。。

大変な長文でしたが、最後まで読んでいただきまして、
ありがとうございました。

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