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社会で活躍するという点で、そして人として魅力ある人の子ども時代。5つの「共通項」とは?

「また会いたい!」と思う大人に出会うととても嬉しいですし、同時に、「その人の背後にあるものは何だろう?」とその秘密が知りたくなるものです。

「G1サミット」という次世代のリーダーたちが集う場で、そういう方たち6人に出会うことができました。時代を牽引するような知能とビジネスセンスを持っているのに、気立てがよくて変にとがったところがなく、あたりが柔らかくておもしろい。優秀な人にありがちな、
「わたしはすごくわかってますよ」
「こんなに鋭いこと言ってますよ」
という〝キレ者アピール〞もなくて、とても居心地のいい人たちでした。

それはなぜだろうと思いながらいろんな話をするうちに、「えっ、きみも!?」ということがひとつありました。

それが「農学部出身」(共通項その1)。

彼らと話をすることで、農学(部)という学問の特長や、今の時代を生き抜くヒントみたいなものが出てくるのではないか。彼らはそれぞれ自分のフィールドを持っているので、カラーのはっきりしたことを言ってくれるのではないか……そんな漠然とした思いもあって、対話や考えを深めていきました。


「見えないものを見る力」(共通項その2)

私は、長年、子どもの教育に携わっている者として、これまでも、「すごい!」と思う人の子ども時代の経験や育った環境など、その人のバックボーンに注目してきました。
私の中では、子ども時代に
「しっかり遊び切ること」
「アイデアを出すのが好きなこと」
「これぞと思う出会いを逃さずつかみ取ること」
などが大切な要因なのだ、ということはわかっていました。ただ、それを実践するのがなかなか難しいというのもわかります。今の親御さんたちは、ひとつの遊びを極めるよりも、たくさんのことをやらせてあげたいと思っていますし、遊ぶといっても、おもちゃからゲームから商品は溢れています。そして、遊ばせたいと思いながら、テストの点数も気になるのです。

農学部出身の6人とは、いろいろな話をしてきました。その中で、子どもの頃の遊びについて訊いたところ、「遊び切る経験談」(共通項その5につながる)がいくつも出てきました。「やっぱり私が大事だと思っていたことは正しかったんだ」そう確信した記憶があります。

6人に共通する特性は、「見えないものを見る力」。「見えないもの」とは「本質」と言い換えてもいいでしょう。まったく同じような状況を眺めていても、そこから人間の持つ特性や法則性みたいなものが、彼らには見えるということです。常に本質を求め、本質をつかみ取るための〝補助線〞を引く。

これは、計算問題のような正解を追い求める問いからは生まれません。自分の思考と自分の言葉を積み重ねるからこそつかみ取れるものであり、その本質がつかめるから、価値あるものを手に入れられるのです。

 
わからないことに辛抱強くこだわれるか? (共通項その3)


私が子どもたちを教えていて思うのは、
「ものわかりがいい子どもは伸びない」ということです。それはなぜでしょう?「わからない」というのは、本人にとってはつらいことです。早く「わかりました」と言いたい。そこでわからないのに「わかりました」と言ってしまったり、わかったふりをしてしまったりする子は伸びないのです。まわりに合わせることなく、「わかりません」「ピンときません」と言える子、わからないことに辛抱強くこだわれる子、わからないとおもしろくないと思っている子、そういう子は確実に伸びます。

この6人は、
「自分が納得しないとおもしろくない」
という生き方をしている人たちです。わからないことはわかるまで考える。わかるからおもしろい……そういうふうに生きてきた人たちです。
まわりに合わせるのではなく、自分のペースを持っている。自分のペースをつかみながら生きている。それを感じる人たちなのです。

それはまさに、私が子どもたちに持ってほしいと思う感性です。


「没頭」する経験を!(共通項その4)

「興味のあることは何ですか?」と訊かれて、答えられない若者が今は多いと感じます。興味のあることがわからないという背景には、人の評価に合わせすぎていることがあります。他人がどう思うか、他人にどう思われるか、そればかり考えていたら、自分の心の内側を見ることはできません。他人に「いいね」と言われたらいいというのは、自分の本来の興味、関心事ではないはずなのです。就職するにしても、どんな仕事がしたいのか、どんな働き方をしたいのかがわからなければ、どの会社に入ったところで満たされることはないでしょう。興味関心を知るためには、「没頭」することです。
「絶対これが好き!」「これが楽しい!」
と思うことに没頭する経験が必要です。


一匹のカニに夢中になる

花まる学習会のサマースクールでは、いろいろな体験プログラムを用意しています。ある日、海辺の宿の前で、私が子どもたちにちょっとだけかしこまった挨拶をしていたときのことです。たまたま私と子どもたちの間を、てのひら大のカニがササササと横切ったのです。すると、数人の子は私の話などそっちのけでカニを追いかけ始めました。カニは、宿と空調の室外機の間に逃げたのですが、そのすき間に頭を突っ込んで、もう抜けなくなっている子までいます。それでも、「ここにいる!ここにいる!」と夢中になっている。
この没頭の瞬間にこそ、脳が一番成長するのです。
決してテストで点数が取れる行動ではありません。ですが、脳の力としてはすごく伸びています。本当に集中した状態、好きなもので頭がいっぱいになっている状態、主体的・積極的な気持ちで「これだ!」と言っている状態。子どもの脳にとって、これ以上のことはありません。


好きなことで生きる (共通項その5)


好きなことで脳がいっぱいになる経験を何度もしたら、そうじゃないと幸せを感じられない人間になります。そんな脳の状態を自分でわかっていたら、そういうことしかしたくなくなるというもの。自分が本当にやりたいことだけやる。自分のペースでおもしろいことをやっていく。そうして自分にとって意味のある、価値のある日々を過ごしていく。人間にとってこれ以上の幸せがあるでしょうか。本当に好きなことは、とことん突き詰めたくなります。その結果、社会を変えるような大きな仕事を成し遂げることにつながったら、どんなに素敵なことでしょう!

G1サミットで出会った6人は、まさにそんな人たち。今の子どもたちにもぜひ出会ってもらいたい、〝ステキな大人たち〞なのです。


高濱正伸

高濱先生

株式会社こうゆう 花まる学習会代表
1959年生まれ。東京大学農学部卒。
1993年、「メシが食える大人に育てる」という理念のもとに、思考力育成や野外体験を主軸とする学習塾「花まる学習会」を設立。また、家庭での子育てが子どもの「生きる力」の鍵を握ることから、保護者向けの講演会を数多く行う。著書に『小3までに育てたい算数脳』(小社刊)ほか多数。

「G1サミット」で出会い、「また会いたい!」と思ったという、魅力ある6人の秘密をさぐり、『ステキな大人の秘密』を執筆。保護者の方へ。そして子どもたちへ。

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目次 
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宮澤弦さん

子どものファンになる!
「また会いたい人」になる!
イジメっ子を騙された必殺技!
考えに考えて考え抜く「解答なし勉強法」
土づくりの経験が経営の土台に
つらいときに頑張れば信頼度が上がる
理不尽から学ぶ

岡田光信さん
母からもらった科学への興味
原因不明⁉なぜいつも間違うのか
人生が変わった出来事
あらゆるものは「間」にあるという考え方
紆余曲折の末、わが道を行く
困ったときに助けてくれるもの

松山大耕さん
子どもに対して長期的な視点を持っていた両親
子どもと対等に接してくれる大人と遊び
農学部には「Grow」という哲学が全部ある
物の扱い方や価値観は、あとからでは身につかない
良心に基づいて行動することの大切さ


高橋祥子さん
人と違うのは素敵なこと!
同調圧力で押しつぶされそうに
「モーニング娘。」という娘がいるらしい?
他人のことは気にせず、自分の世界を深く持て
幅広く声明にかかわりたいと農学部へ
生きとし生けるものすべてが尊い


辻庸介さん
多くの大人と子どもに囲まれて育つ
自分がどう思うかではなく、相手がいいと思うかどうか
親の愛情を疑ったことは一度もない
ゲームの世界をリアルに取り入れれば子どもは伸びる!
親に反対される道を行ったほうがいい
起業とは真っ暗闇の中を走り続けること
仕組みを変えると報われる組織になる


出雲充さん
家じゅう薄力粉まみれ事件⁉
ザリガニ釣りから学んだ「常識」を疑うこと
数字から読み解く物語にハマる
思春期の頃
勘違いで仕事を辞めた⁉
レアもののミドリムシが教えてくれたこと
天才じゃなくても成功できる、それが農学部

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