見出し画像

もしかして本気で食事してないんですか?【エッセイ】

結局弁当が好きなんですよ。良いですよねお弁当。私は幕の内のような、色々入っているのが好きです。
コンビニやスーパーで買うのも良いですし、駅で買うものも粋です。仕出し弁当なんて聞くとわくわくしますよね。ほっかほっかしているものも美味しいですが、町中華が出している油まみれのお弁当も不健康そうで大好きです。
(食べ物は不健康そうなものが結局一番美味しい派閥所属)
あ、あとお弁当は冷たいまま食べるのが私は好きです。そうです、過去エッセイのステルスマーケティングです。

先日、取引先の方とお弁当を食べる機会がありました。
基本的にはお昼は一人で食べたい陰キャ野郎ですが、大事なお得意様です。私が明日ごはんが食べられるのもお得意様のおかげなのです。その日は誘いをけして断るなんてせず、一緒に食卓を囲うことにしました。そして事件は起こりました。

私の仕事はシステムエンジニアですが、サーバー関連になるとどうしても少し力作業というか、物理的に少し疲れる込み入った作業が発生することがあります。その日は午前中にその力作業をして、午後はシステムのメンテナンスという予定でした。
なんやかんやで午前中の作業をつつがなく終わらして、さあお昼休み。なんとありがたいことにお弁当を頼んでくれていたとのことです。私はありがたく、ご相伴にあずかることにしました。

お若い子「お弁当三種類ありますよ。どれにします?」
わたくし「何があります?」
お若い子「焼き肉と、生姜焼きと、シュウマイです」

すげえ肉系に偏っていることは無視して、私はシュウマイ弁当を選びました。きっとこのお若い子が買いに走ってくれたのでしょう。それだけで感謝です。いつも作業をしているのは私と、このお若い子とその上司さんの三人です。上司さんも別の作業を終え、私達の所へ歩いてきました。

お若い子「お疲れ様です。今日は焼き肉と生姜焼きとシュウマイです」
上司さま「……魚とかないの?」
お若い子「焼き肉と生姜焼きとシュウマイです」
上司さま「……シュウマイで」

きっと私と同じ気持ちで選んだだろうな、と思いながら席につきます。きっと焼き肉弁当くんと生姜焼き弁当くんもシュウマイ弁当くんに二連敗するとは思ってなかったでしょう。すみません、こちとらおじさんなので出来るだけ大人しいお弁当が好ましいのです。

談笑しつつ穏やかなお弁当タイムが始まります。ちなみにこの後午後はシステムで普通にバグが見つかり私が死ぬほど焦りますが別の話なので割愛します。言いたいのは談笑の内容なのです。
皆が食べ終わりそうな終盤。お若い子が少し笑いながら私に話しかけてきました。

お若い子「聞いていいですか?」
わたくし「なんです?」
お若い子「それでどうやってこの後白飯を食べるんですか?」

私の手元には一つのシュウマイと、お漬物と、半分の白いごはん。彼はこう言いたいのです。
「おかず足りなくないです?」
「白いごはんとおかずのバランス間違えました?」
と。

わたくし「普通に食べますけど……」
お若い子「そういうのって、こうバランスよく食べません?」
わたくし「ああ、ちょっと意地汚いとわかっててもほら、やっちゃうじゃないですか」
お若い子「何をです?」
わたくし「好きなものを最後に残すってやつ」
お若い子「なるほど。……なるほど?」

彼はきょとんと私の手元を見つめます。6個あったうちのシュウマイ1個。少量のお漬物。全体の半分のごはんです。そうですね、当初の問の「白飯何で食べるか問題」に答えてませんね。

お若い子「この場合のそれ、どれなんです?」
わたくし「ごはん」
お若い子「は?」
わたくし「ごはんを最後まで残していた。おれは。ごはんを」
お若い子「は?」
上司さま「マジでいってんのそれ」

なにやら上司さんも会話に入ってきました。わけがわかりません。私は常にマジです。マジで生きているのです。特に食に関しては気を抜いたことはありません。
お弁当で一番美味しいのって白いごはんでしょ?
何いってんだコイツラ? あ? やんのか? お?

お若い子「変わってますね……」
上司さま「本当に……」
わたくし「……」

これはバグを起こしてもしょうがないですね。しょうがないです。
ただ、お若い子の言うことはわかります。私も前はそうでした。おかずと白いごはんをバランスよく食べる。両方同じタイミングで食べ終えられたら「よくやった」と自分を褒めたくなる。わかります。満足しますよね。
でも、私はその満足の奥に私はいっているのです。
そこじゃないんです。てめえら、惰性で弁当を食べているな? こちとら本気でお弁当を頂いております。もうそこには私はいないのです。

炭水化物を最初に食べると血糖値が急激にあがって太りやすくなったり、眠くなったりするとかいう話あるじゃないですか。あれも加味しています。加味した上で、この食べ方が一番美味しいんです。
少量のおかずで大量の白米を食べて弁当を締める
これじゃないですか。考え抜いてこのおかずの量、白米の量にしているんです。私は「夜汽車の男」を下に見てますよ。あいつは目的と手段を履き違えた愚か者だ。「弁当をきれいに食べ納める」というミッションにとりつかれた哀れな男なんです。

ちなみにこの話は二人にはしませんでした。
私もわりと異常な事言ってんな、と自覚があるからです。よかった。自覚があるタイプの変人で。

さて、私はお弁当を本気で食べています。
惰性で食べている皆さまも、よろしければ日々の食事に本気になって味わってくれればと思います。
それが、食べ物を有り難く食べるということなんじゃないんでしょうか。
食べ物への感謝ってことなんじゃないんでしょうか。

格好よくいってますが、意地汚いだけな気がしますが。
それでは。



サポートという機能があるのに初めて気づきました。みなさんもそうだと思うのでぜひ私のエッセイで試してよいですよ。お願いします。