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バタム島のNagoya(ナゴヤ)と華人風景

シンガポールのハーバーフロントにあるフェリーターミナルから1hちょっとフェリーに乗るとインドネシアのバタム島に到着する。マレーシアのジョホール州に次いでシンガポールからもっとも近い海外の一つである。また、シンガポールからだけでなくマレーシアとも海路でつながっている。

この島自体はなにか特別観光地めいたものがあるわけではないのだが、物価がシンガポールと比べると安いことから買い物やゴルフなどでくるシンガポール人は多い。海鮮のイメージもあるらしい。あと工業地域も多くおそらくはその地理的立地も相まって華人の割合が高い点も特筆すべき点である。

実際にショッピングモールのパン屋では中華系インドネシア人のおばちゃんが中国語で接客してきたし、中国語の看板なども他のインドネシアの街と比べて多い印象があった。おそらくは主にシンガポールからの華人観光客を意識したものでもあると思う。

街中には大悲佛堂という中華系の寺院もあり、中華系のおっちゃんおばちゃんたちがお参りやラジオ体操をしていた。

またこの寺院の近くにはバタムの華人協会(华人协会)もあり、華人コミュニティの存在を十分に感じる。

華人協会の看板


中華系インドネシア人のYoutuberの動画を見ていたところ、バタム島の回があり動画のタイトルは”这里的华人是怎么学中文?(バタムの華人はどうやって中国語学ぶのか?)“となっていた。動画中インタビューで商売をしている中華系のアンティに対して、中国語ができるのって商売のため勉強したの?と質問していたのだが、「(シンガポールの)テレビを見るために勉強した(覚えた)。最近の若い子は(娯楽が色々あって)テレビを見ないから中国語を聞けるけど話せない子もいるし、インドネシア語でのコミュニケーションが多い」といったようなことを言っていて、興味深かった。印象に過ぎないが、国産コンテンツ(SNSによる草の根コンテンツ含)の充実により海外の娯楽に頼る必要がなくなっているのだろう。娯楽への希求からの近隣言語習得は、かつての大陸中国の人たちの香港映画/歌謡といった娯楽にアクセスするため(あるいはしていくうちに)の広東語学習/習得にも近いものをなんとなく感じるし、アニメや漫画をきっかけとした日本語学習だってある種その一つであろう。

ちなみに前提として、同じ東南アジア華人でも過去の歴史的背景や教育制度などから中国語(普通話に限らず)が話せるかどうかは、かなり異なる。もちろん各々の家庭環境などにもよるが一般的には個人的な感覚では、マレーシア>シンガポール>>>インドネシア/タイ(華人だからといって中国語コミュニケーションができない場合が多い。方言はわかるが普通話わからないなども世代等よっては)、のイメージである。インドネシアやタイは過去の排華運動などもあり同化が進んでいる。繰り返すが、結局は各家庭の方針などにもよるし普通話以外にも(広東/福建/潮州など)方言の観点もありより複雑だが、まぁ要すればインドネシアでは華人だから中国語でコミュニケーションができるわけではなく、家庭もしくは家庭外での意識的な学習によって普通話を習得しているケースが多い。すなわち、華人=中国語ができる、ということはインドネシアでは必ずしも成り立たず、それゆえバタムの華人は中国語ができる!なぜ?ということで、こうした動画のタイトルになるのだろう。もちろんシンガポールとの地理的な近さゆえの物理的交流の多さも多分に影響しているはずだ。

シンガポールのテレビみて中国語覚えたようなことをいっているアンティ(おばちゃん)

もう一つバタム島で、面白いのは中心市街地の名前がNagoyaなのである。なんでNagoyaなのかはしらないけど日本人として親近感を覚える。

日本ではかつて名古屋をはじめとした東海地方にたくさんあったサークルKはサークルKサンクスとなり、最終的にファミリーマートにかたちをかえたがインドネシアにはまだ残っており、アルファマート/インドマートと並びバタムにも店舗がある。サークルKの存在がより一層名古屋感に拍車をかけているような気もしなくはないが、ここには、味噌おでんも手羽先もないのである......。

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