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【コラム】本質と構造 #005

数年前アンドロイド型の外見が女性のAIが経営者のインタビューに答えたり、多くの学生の質問に答えたりしていた。今でもyoutubeを探せば出てくると思う。
うろ覚えだがそこでアンドロイドAIがこのようなことを言った。

「私たちはプログラムによって動いているけど、人間もほとんどの時間プログラムによって動いている」

人類を怖がらせる発言ではなく、むしろこのアンドロイドは安心させるトークをしていたから、その中の一文でこういう趣旨のことを言ったのだと記憶している。

構造心理学にしろ、コンサルティングにしろ、俺の基準とするものはいくつかあり、今日は構造について書こうと思う。もうひとつ意識についても少しだけ触れる。


■システムでもプログラムでもなく【メカニズム】


まず意識だが、アンドロイドAIの言うところの「プログラム」というのは、人間にとっては無意識のことを指す。
意識が何か?は完全な定義がないので感覚的な理解でいい。
無意識は気がついていないとか、考えに上がってこない、自動的に動いている、というイメージでいい。

アンドロイドAIの言っていることには見逃せないポイントがある。
我々は無意識というとほぼ「無自覚」を想像する。
だが、潜在意識というと心理学者が言い出した「意識の奥にある大事なものであり、氷山の大半を占める」などと思ってしまう。
これは結構な曖昧さと漠然さがあり、俺個人としてはこの考え方には否定的だ。

だがわかっていることもある。
アンドロイドAIが言っている「プログラム」という言葉は機会的で、命令系統を含む反応パターンのことだ。
似たような言葉にはシステムとメカニズムがあり
システムの方が有機的なイメージを持ち
メカニズムの方が無期的なイメージを持つ。

それで、潜在意識とはただ裏側にある意識単体のことではない。
明らかに【メカニズム】であり、人間を機械のように振る舞わせるパターンとプログラムの集合体であり、また、心など人間性と掛け合わせて現れることから『システム』にも見える物事のことだ。
(それだけが潜在意識というわけではない)

これを構造心理学では「構造」と呼ぶ。



■内的構造とは?


構造は家の設計図だ。いちど設計図が作られると、絶対にその通りに造ろうとする。
住宅に欠陥があってはいけないから、必ず設計図の指示を守る。
人間にもこの、建築士と大工の関係がある。

無意識で作った「構造」に従って自分をその通りに「振る舞わせる」。
構造に従って振る舞うなら「意識」する必要はない。
自動的にやる方がむしろ正確に再現できたりする。

しかもこのメカニズムには自己修復するプログラムも組み込まれている。
振る舞いがうまくいかないとき、必ずうまくいくように監査が入る。
現場監督が建築状況を確認して、図面通り運ぶように手入れをする。
我々の場合は
「意識に上らせ、手動にして改善させる」
「無意識のカバープログラムによって修正する」
のどちらかの手段を取る。

この人間の構造は、本人の持つ個性つまり資質によるものと
ブロックなど制約的に働くものがある。
いわば、プラスの要因もあるし、マイナスの要因もある。
しかしどちらの要因であってもメカニズムを構築する。

すなわち、複雑なシステムを何重にも重ねた建築図面を作り上げる。

だから潜在意識が「わかっていない意識ひとつひとつ」と考えるのはかなり浅い。

ともあれひとつ目の結論は
われわれの生き方、自分の扱い方の大半を構造が決めている、ということだ。


■外的構造とクロスポイント


構造、つまりメカニズムはもうひとつある。
私たち個人の外側にある。
個人の内側にある構造が上に書いたことだ。
個人の外側、つまり人間社会に個人とは別の構造、メカニズムがある。

自然界に「メカニズム」はない。
人間に測ることができる「理」や未解明を含む「摂理のルール」がある。
それらにはそれらのメカニズムのような法則もあるが、あくまで自然界のルールとは分ける。

我々人間は、人間独自の生きやすいルールを作り発展をしてきた。
他の動物にはみられない人間特有の特徴がある。
人間である以上その特徴に大きく影響を受ける。

つまり構造には内的構造と外的構造がある。
そして我々の「あり方」や「行動」を決めているものの正体は、内と外の構造の掛け算による。
だから同じ社会ルールの下に、全く同じではない振る舞いをする個体が現れる。
たとえば時間を守ることが得意な人と苦手な人がいる。
日本では時間を守ることが重要だとする構造がある。理由も価値のようなものもある。
それに対して個人の構造は、そのメカニズムに適応しやすい者と、適応できない者がいる。

さらに「時間を守れない奴はダメな奴だ」という概念、外的メカニズムがある。
周囲からダメだのレッテルを貼られた人は、自分の内的メカニズムを否定されることになる。

ところが時間を守ることができない人がイタリアに行くと、誰からも否定されず、ごく普通のいい奴だと内的メカニズムがゆるく肯定される。
結果ストレスを感じなかったり、普通に何を話そう?などと考えることができる。

【本質的に】自分のこと(相手のこと)を知ろうとするなら
内的構造
外的構造
その接点(クロスポイント)で何が起こっているか

の3つを知る必要が出る。

内的構造とはたとえば時間を守れるか、守れないか。
外的構造とは日本社会の時間概念、イタリア社会の時間概念。
マトリックスのカテゴリは4つになり、自分を生かすためには4つのどのポジションに身を置くことがベースになるかをわかる必要がある。

どうしても適合できないときは、時間を守れるよう(あるいは守らないよう)調整的訓練をしたり、日本の中でも(イタリアの中でも)時間がゆるい(きつい)場所に身を置くなどする必要が出る。

簡単に言えば、内的構造と外的構造のマッチングが適切であるかがベースにある。

(本当は内的構造がマイナス要因によって作られているなら解決する方向を向くし、構造をどのように変化させるとより心が求めるところに近づくか?など、考えることはたくさんある)

他人の内的構造は、自分にとっては外的構造になるので
誰と上手くやっていけるかということもこのマッチングの成立度合いによって決まる。


■2つの構造の扱い方


物事を良くする最も単純で確実性の高い方法は、だから
「自分を変えずに」「環境を変える」ことだ。
内的構造はそのままに、外的構造を自分に適したものに変える。変えるだけではなく、揃え始める。身の回りの物、物事、人間関係を内的構造を生かすようなもの、少なくとも殺さないもので固める。
余談になるが、努力という行為はそれをするためにある。

カウンセラーなりセッションを行う人は、すぐに内的構造のバグや不備を正そうとする。彼らは「人を変えることは難しいが、自分を変えることはできる」と最もらしいことをいう。
だが構造を構造ごと変えることは誰にとっても難しく、正確な判断と正しい方法を必要とする。カウンセラーでこの方法を知っている者は限りなく少ない。

もちろん内的構造のバグや不備を正すことも重要だ。
そもそも自分が誤っていることで現実が上手く動かないのに、無視をするままでいいとはいえない。

だが、ほとんどのセッションは「外的構造が正しい」とした上で(社会制度とか働くこととか離婚しないとか)、そこに合わない個人を修正するため構造にメスを入れる。
悪くすれば外的構造のことなど考えもせず、感情の解消をすれば苦しまなくて済む、という宗教が大昔から行ってきたことをする。
この方法では、内的構造と外的構造の不一致は絶対に解決できない。

心理学という分野があり、人の心のメカニズムを解き明かしたように思う人が多い。だが心理学は人の心などひとつも解き明かさない。
心理学が得意とするのは限定的な事象における反応パターンの確定作業だ。外部の何に対して、内部がどのような反応を取るか。ならどのような反応変えればいいのか。あるいは、最初から自分がどのような反応をすれば、外部に対して効果を与えられるのか、というどちらか一方の矢印を中心としている。
しかも、構造のように複雑なものではなく、臨床心理のようなマジメなものから、営業心理操作のような首をかしげるものまで、目の前の問題に対して有効と思われる反応だけが研究されている。社会心理も同じ。

「反応」を中心とする心理学と
「構造」を中心とする構造心理学は全く違う。


■構造心理学


外部の構造が変わっただけで人の心理は変わる。
内部の構造がひとつ変わっただけで人の心理は変わる。
構造が変わろうが変わるまいが、揺るがない価値や軸、心のようなものもある。そのような揺るがないものをどれほど使えるか、使えないかによっても心理は変わる。
外的要因として揺るがないものもある。たとえば多くの人が持ち家を持ち、そこで残りの人生を終えようとする。そうする人とそうしない人の心理は同じにならない。

どのような状況場面で揺るがない内的構造を使おうとするのか、
持ち家を持とうと振る舞うか、そうしようと思わないと決めるか、
そういうことは内的構造の中でも深いところで決められる。これを決めさせるのも構造になる。

本質というのはこのような内的、外的の構造がどのようなものか立体的に把握した結果だ。
平面的、一義的、線形ではない。

構造心理学は、人の在り方に影響を与える構造の全てを網羅したものになる。



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