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01.トータルサービスというしくみの考え方

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サービス全体をトータルサービスとして見てみると、時間軸で、基本サービス提供前、提供中(提供するとき)、提供後に分けて考えることができる。
お客は、店舗に足を踏み入れるなどして、その経験がはじまってから終わるまでを通じて、全体的にサービスを感じる。
基本サービスだけでサービスを体験することはほとんどない。

全体を通じて適切に提供されたか、されなかったかを感じて判断する。
もしくは提供途中で気分を害して、サービス利用がキャンセルされることもある。

ハードと基本サービスは、サービスコンセプトを100%反映することで形作られる。
しかし、しくみの段階になってはじめて、利用者の意向や受け取り方が課題として組み込まれるようになる。

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たとえば、スーパーのレジやファーストフードで、順番待ちを飛ばしてサービス利用することはできない。
お客は、待ち時間や待つ状態も含めて、サービスのプロセスをトータルで経験する。
このことが、サービス提供前と提供後のしくみ作りに大きく影響する。

サービスには、ファーストフード店のように接客に強く依存するものもあるし、公共の交通機関のようにハードの利用がイコールサービスという場合もある。
ファーストフードのように受け渡しを行った瞬間にサービスの提供が終わるものもあれば、電車利用のように目的地に到着するまでサービスを提供し続けるものもある。

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サービスが提供される方法やリードタイムの長さによって、それぞれのサービスに応じた確実なしくみを築く必要が出てくる。

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たとえばある会社の場合、英会話をはじめたいお客が申し込みをしてから、実際にスタートするまでに、自宅や職場の最寄り駅近くのカフェで無料体験レッスンを受けることができる。
講師とフィーリングが合わなければ変更することができる。
サービスを理解し、自分に合った学習法を絞るために、スタッフが対面で無料カウンセリングを行う。わからないことは何でも聞くことができる。

これがサービス提供前のしくみで、お客は不安を軽減できるし、サービスをより詳しく理解することができる。自分のスタイルと、会社のカラーが合っているかどうかを判断することができる。

ちなみに、この行為を営業だと考える人もいるかもしれない。
営業は売りたいものを売る行為であって、マーケティングではなく販売促進の考え方に近い。
この会社では、あくまでサービス提供前のしくみとして、お客に役立つことだけを正直に話す。
そして契約を望む人だけに契約方法や申し込み手順などを説明している。

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サービス提供後のしくみもある。
英会話をスタートさせて、時期や期間を空けて最初の3ヶ月に3回のメールを送り、レッスン状況や、講師との相性、悩みや不安などがないかを確認する。
レッスンや講師に問題があれば、講師と相談をするか、お客にアドバイスをする。
相性が悪ければ講師を替え、悩みや不安などがあればその声によく耳を傾けて対応する。

他にも社長がしくみを作り、管理していた初期には、半年以上続けている生徒全員に「生徒による講師の評価」をしてもらい、講師が自覚していない問題を改善するようなこともしくみ化した。

また別の方法では、一人担当者を設けて、生徒全員に電話フォローを行い、メールでは億劫だし言うほどのことではないが、電話ならなんとなく話すことができるという声に耳を傾けるようにしくみを作った。

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これらがサービス提供後のしくみで、こういったしくみを含めた全体のサービス像をお客は感じ、良いのか悪いのか、自分に合っているのかどうかなどを判断する。

このサービス提供前、提供後のしくみに対して、サービス提供中のしくみ作りもある。
それはルールであることが多い。

この会社では基本サービスは講師が提供する。
カフェでプライベートレッスンを行う場合、たとえばドリンク代は、講師も生徒も自分のものは自分で支払う。
テキストは何を使うのか、それとも使わないのかの目安を定め、それを講師に伝え、生徒がレッスンをスタートする前にテキストを買うのか、それともとりあえず英字新聞など身近なものを使うのか、あるいは全く使わないのかなどということを決める。

基本サービスそのものの質を守るためのしくみもある。

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この会社では英語のネイティブを講師として採用しており、採用までに主に三つの面接を行う。
第一に送ってもらった履歴書の内容はもちろん、書式、単語ミス、文法ミスなどがないかをチェックしふるいにかける。書類に問題がなければ電話をし、発音、言葉使いなどに耳を傾け、さらに必要な情報をその場で得る。
最後に対面の面接を行い、服装や態度などを観察する。

経歴や講師の経験はもちろん必須であるが、人間性の何をチェックするかということまで細かく決まっている。
さらに、今までに講師経験がないか、少ない人に向けて、教え方や文法説明などの講座を開催する。
この講座に参加することで、講師はレッスンの的確なポイントを理解できると同時に、生徒が何を望み、何に不安を抱えているのかということをよりよく知ることができる。
また、理由なく講座に参加しない講師未経験者には、極力生徒を紹介しないこともある。

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サービス提供前、提供中、提供後のいずれの場合も、基本サービスを中心としてトータルサービスが作られていることがわかると思う。
サービス提供前・提供中・提供後の3つのプロセス全てを通じて、

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が、しくみを作ることであり、トータルサービスの考え方である。

この考え方とは違って、無料のアフターフォローを用意することで「サービスを良くしている」と考えるのはまちがっている。
無料のアフターフォローをだけを取り上げて、それをサービスとはいわない。
あくまでトータルサービスを形作る、しくみの一部でしかない。

また、このアフターフォローがとても緻密で親切に感じるからといって、そのことでサービスが良いともいえないし、不快に感じたからといってサービスが悪いともいえない。
ここでいえることは、提供すると約束したサービスを正しく提供することができていれば、それは正しいサービスであり、提供できなければ正しくないサービスだということだけである。



前話: 第6章 04.信用はこうして守られる 
次話: 02.しくみの「改善」と「更新」



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