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05.人事としての接客者の変更

接客者のレベルと配置はこれまでに書いた4段階、第1に正確にサービスを提供できる段階、第2にマイナスを挽回することができる段階、第3にサービスの枠を超えることができる段階、第4にサービスの提供を断ることのできる段階の、第1から第4のレベルに応じて配置する。

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接客のレベルが高い、または適切であるのにサービスが上手く機能しなくなるのは、レベルに応じた人事配置に間違いがあるか、これらの条件を満たさない人を接客者として配置していると考えられる。

新しい接客者が仕事を行うとき、コンセプトを理解し説明でき、サービスの提供をルール通りに行うことが求められる。
正確でない接客を改善修正し、正しくサービスを提供できる必要がある。
サービスのコンセプトに沿って自分の役割と仕事を正確に理解して、実行することができない接客者は、他業務に異動させる必要がある。
少なくとも見習い期間を終了することはできない。

また、このレベルにある接客者が、クレーム対応やサービスの枠を超えた接客を行ってはならない。
利用者の多くは接客によってサービスを評価する。
その判断が正しいかどうかは別として、適切でない接客対応はサービス利用停止の原因となる。
だから、接客者がサービスを正しく提供できないことを放置したままにすると、気がついたときにはサービスが上手く機能しなくなっている。

第1のレベルをクリアしたら、クレームを含む問題と機会に、正しく対処、対応できるようになる必要がある。
対処とはサービス全体を俯瞰して

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であり、対応とは目の前の機会と人に対して解決策を示し、

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のことである。

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対処により長けている人材は教育係、しくみの改善ミーティングの参加、マニュアルの作成など社内機能に向く。
対応をより得意とする者は、第一線のベテラン接客者の素質があり、サービスの枠を超えた接客を行うこと、ブランドを構築するための接客を行うことなど、接客者としての素質を高めることと、現場で活躍する社外機能に向く。
両方ができる者はマネージャーや管理職の可能性があり、両方ともできない者は現場の接客者の中でも、最も基本的な作業を行わせるだけにとどめるか、他部署に異動させる。

正しくサービスを理解、提供でき、かつ問題に対処、対応できる者は、サービスの枠を超えた接客を行いはじめる。
そのための行動は、現場で修正がききやすく、ルールに則ったものから行う。
マニュアル化できないことは多いが、できるものからしくみに落とし、できないものは経験を蓄積する。

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サービスの枠を超えた接客には、基本サービスの不備の解消、はじめての利用者へのサービス、特別利用者への対応の3つがある。
それぞれの習得の順番は各サービスによって変わるけれども、習得していないスキルに対して、それを必要とする役割と仕事は与えない。

また、この段階でマネージャーなどのマネジメントに就任させてもならない。
マネジメントにはマネジメントの能力と責任が求められる。
このレベルの接客者は、接客レベルは熟練レベルにあるものの、マネジメントの能力が高いというわけではない。
マネジメントに求められる責任を果たすことができるとは限らない。

ここまでの3つの条件をクリアする人材は、接客者としても特に現場のエキスパートか、教育者に向く。
「サービス提供を断る作業」はいずれにしても、これまでのレベルをクリアした者でなくては行うことができず、行わせてもならならない。

そして、サービス提供を断る作業ができる全ての接客者は、しくみの改善に携わるようにする。
しくみの改善は接客者の現場の経験がベースになり、接客のエキスパートとして現場の経験の何を、サービスの条件に取り入れなくてはならないか理解している必要があるからである。
逆に考えると、このレベル4の接客者以外の接客者をしくみの改善に参加させるには、スキル的にもサービスの理解的にも不十分だということになる。

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接客によって改善されるしくみが、不十分なスキルと理解の接客者によって決定されているのであれば、即座に見直す。
これとは別に、しくみの改善に接客者が参加せず、マネジメントだけで決定されることがある。
接客者だけの決定が現場志向に偏るように、マネジメントだけの視点はサービス志向、または商売志向に偏る。
両方の参加が必要であることを前提に、しくみの改善を行う。

サービスがうまく機能しない場合の接客人事の改善は、これらの条件をベースとし、それぞれのレベルで不適正な人材をまず適正な位置にポジショニングすることからはじめる。
つまり能力に合った役割と仕事を与えることから再構築し、年齢や経験年数ベースなどの配置を見直す。
見直しは、サービスを断る作業、サービスの枠を超える作業、問題の解決、正しいサービスの提供(レベル4からレベル1へ)という順で行う。
つまり、接客者の中でも上級の者やマネージャークラスから適切なポジションに再配置する。
理由は3つある。

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第1に、重要な仕事に不適切な人材が就いている場合の方が、サービスを上手く機能させなくなる可能性が大きいこと。
同時に、これまで低く評価されていた人材を、上の適切な位置にポジショニングすることで、サービス機能を速く取り戻すことができること。

第2に、重要なポジションは人員が限られており、結果を早く得ることができること。

第3に、サービスが上手く機能しない原因は高いポジションのマネジメントに不備があることが考えられ、適切な人員を配置することで指揮系統を再構築するため。

これらの条件によって、サービスを断る作業やサービスの枠を超える作業の人員再構築が完了したら、その下のポジションの人員と役割を変更する前に、接客教育者としくみの改善に参加する人材の選定を先に見直す。
この3つのポジション(マネージャー、教育者、しくみの改善参加者)を変更することで、接客に関わるサービスの人事は半分が終了する。

接客教育は各レベルで定める。
必要があればトピックスごとに定める。
接客教育者は必ずしもベテランの教育者やマネージャー、管理職である必要はない。
むしろそれは望ましい状態ではなく、教育することに長けているという能力を持った人材を配置する。
外部の教育者は役に立たない。
オリジナルのコンセプトを持つサービスの接客教育は自分たちで行うしかない。

しくみの改善に携わるミーティングに参加する人員は、レベル4の中でも現場の状況と、サービスの理解が優れている者に決める。

このような条件とは別に、接客のどのポジションにおいても採用してはならない人物、というのが2種類ある。

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ひとつは、コミュニケーション力のない、または低い人材を採用しないこと。
もうひとつは、ルールを守ることのできない人材を採用しないことである。

これらは人材配置以前の問題であって、現在このような人材を配置していることでサービスの機能に狂いが生じているのであれば、取り急ぎ接客の仕事をはずし、全く別の他の仕事に異動させることで対応する。
これは基本中の基本である。
この条件を満たさずに他の条件を満たしたとしても、接客によって影響されたサービスの機能は回復しないか、回復に大きな時間がかかる。
回復しないこともある。
少なくとも、大きな回復は期待できない。

人事の改善は、これまでの人間関係のしがらみに影響を与え、サービスの質を完全に変更することになる。
接客が変わればお客の感じ方が変わる。
たとえ良い改善であっても、お客に混乱が起こる。

しかしそれでもサービスが既に上手く機能していないのであれば、改善は直ちに実行しなくてはならない。
適切でない人材が、適切でないポジションに居座り続ける方がリスクは高い。

変化は必ず混乱を呼ぶ。
時に反発が起こる。
しかし変化しなければならない実態、サービスがうまく機能しない状態が既にあるのであれば、改善を避けることはできない。

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改善はサービスが上手く機能しないまま徐々に改善するか、ショックを伴いながらも一気に改善する方法がある。
どちらの場合も、多かれ少なかれ必ず混乱する。同じ混乱が起きるのであればコンセプトに沿った正しい状態を一気に取り戻すようにする。
痛みを伴うのであれば、痛みを分割しない。
間違った人員配置で、間違った仕事を行っている人材の気持ちに遠慮をして、徐々にできるところから変更するという方法は、いたずらに混乱を長引かせる。
接客者にもお客にも不安を長引かせることになる。
そして結局、サービスの不備が解決されないまま完結しなくなってしまう。

正しいことを正しく行い、正しいサービスを取り戻す正しい方法が明確なのであれば、改善は一気に行わなくてはならない。



前話: 04.サービスの提供を断る作業
次話: 第14章 01.コンセプト反映の手抜き対策



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