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勝手に極論で語る新生児のトリセツ はじめに

はじめに

 「新生児の管理は難しい」「こんなに小さい子を触るのが怖い」「なんとなく見ているけど本当にこれでいいの?」「赤ちゃんはかわいいけどスタッフが怖い」……
 研修医の先生や周産期にどっぷりつかっているわけではない一般小児科医にとって、周産期・新生児の医療は何か特殊で近寄りがたく、何となくうまくいっているけど実際よくわからないままみている、決め事から外れるとすぐに文句言われちゃうけど本当にそれでいいの?、上の先生に聞いても詳しく説明してもらえない、病院が変わるとお作法やルーチンが全然違う、など取っ付きにくい世界だと思われている節があるのではないでしょうか。私もかつてはそうでした。
 でも今の私から見るとこどもの腹痛を見る方がよっぽど複雑で落とし穴の多い難しい世界で、私より上手にみることのできる若い先生方にお任せしちゃいたいくらいです。立場が変わると全然違いますね。実際のところ、ほとんどの新生児は鑑別診断が限られていますし、ある程度お作法に従っていれば管理できてしまうのですから、あまり頭使わなくても大きく間違うことは少ないんです。それはお前が新生児ばっかり見てるからそんな風に言えるんだ、って?じゃあ、そんな新生児を見なければならないけれど、どうも難しいと感じている方々に、教科書に書いてあったりなかったりする十数年にわたって身につけたExperience-based中心で、かつ日常診療で遭遇するような内容を紹介しましょう。平成の時代にNICUで22週が生まれて72時間くらいずっと張り付いて新生児をみてきて手に入れた経験や感覚って、ホワイトな働き方しかできない令和の時代には身につける機会は二度と訪れない石器時代の遺物のようなものでしょうし、私のような古い世代とともに消えゆく運命にあるものでしょう。でも昨今の学会で「歴史はくりかえす」を体現したような、昔同じこと言ってた人いたよねとか、まだそんな話題が発表のネタになってるの?的話題を耳にすると、レジェンド達が試行錯誤で得てきた知識って馬鹿にできないことも多いと思ってしまうんですよね。そんなレジェンドの下で馬車馬のように働き、令和の時代に乗り損ねたロートル新生児科医が語るカビの生えてそうな知識で新生児ってそんなに難しくない!と思い、"新生児が苦"を"新生児楽"に変えるTipsになるとともに、周産期をみる楽しさが伝わるとうれしいです。

※なお、「勝手に」極論でトリセツを語っているので本家本元の極論シリーズやトリセツシリーズとは関係ありません。
※22週、23週のような早い週数の治療は病院ごとで管理方法も成績も全然違いますので、そういう週数の話はなるべく出さず、主に一般小児科医でもタッチするような正期産児と後期早産児に焦点を当てていきます。

著者略歴
 北九州で年間救急車6000台を受け入れていた野戦病院で初期研修終了後、3年目は総合診療医として1年勤務。そのうちの半年は泌尿器科、耳鼻科、皮膚科、産婦人科、小児救急病院と色々と回り小児科で使える知識と技術を学ぶ。4年目からは、産業医科大学のNICUで21週を生存退院させた記録を持つ新生児科医が大学退職後に新設した民間病院NICUに就職。一日の大半を赤ん坊に張り付いて過ごす。新生児医療の技術と心構えはすべてここで学んだ。3年の後、小児科専門を取るために長野県の某小児病院で小児科専門医研修と新生児研修を行う。残念なことにここでは患者に教わったことは山ほどあったが、少なくとも「新生児医療」に関して医者に教わったことはなかった。福岡の病院に戻るが分娩の減少に伴い数年後NICU閉鎖となり職を失う。その後長野県の地域周産期センターに就職し現在に至る。周産期に関わってそろそろ20年くらい。


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