純国産ワクチン、実用化は遠い・・・
新型コロナウイルス対策として、国民に待望論がある国産ワクチンは、いまだ流通の目途が立たない。
国内生産が始まっているのは、アストラゼネカが開発し、厚生労働省で審査中のワクチンのみである。
接種が進むファイザー製や、次の最有力候補とされているモデルナ製はいずれも全量海外からの輸入となる。
日本の製薬会社が自社で開発する純国産のワクチンは多くが供給開始時期未定で、海外頼みがこの先もしばらく続きそうである。
「早ければ5月中に薬事承認が出る可能性がある」
ファイザー製の次のワクチンに関心が高まったのは、3月の田村厚労相の発言がきっかけ。
現在、承認申請中のワクチンはアストラゼネカ製とモデルナ製の2つ。
このうちモデルナは、武田薬品工業が日本での臨床試験や流通を受託しているが、製造自体は海外で行われる。
一方、アストラゼネカのワクチンは、日本の製薬3者が受託生産に動き出している。
JCRファーマ(兵庫県芦屋市)が神戸市内の工場で原液を製造し、3月末に出荷を開始した。
第一三共と明治グループのKMバイオロジクス(熊本市)は、原液を容器に充填する工程などを手掛ける。
承認取得の前から本格的な生産に踏み切るのは異例。
接種後に血栓が生じる事例が欧州などで報告されているのが不安材料だが、アストラゼネカは承認を得られ次第、速やかに供給できる体制を整えている。
海外で全量生産しているファイザー製は、各国が囲い込みに動く中、日本向けの早期確保に苦労しただけに、国内生産が順調に進めば安定調達への期待が高まる。
ただ海外メーカーが開発したワクチンは、政府がメーカー側と契約した量の受け取りが終われば、その後も安定的に確保できる保証はない。
「1年目はそれでいい。だが、お金を出せば今後も売ってもらえると思うのはどうか。」と、ワクチンを海外に頼る現状に警鐘を鳴らしている。
日本メーカーでは、塩野義製薬、第一三共、KMバイオロジクス、大阪大発のベンチャーのアンジェス(大阪府茨木市)などが開発中。
政府はワクチン安全保障の観点から設備費用の補助などで後押しするが、研究開発資金やノウハウ面で海外勢に見劣りする。
ファイザー製が世界で利用実績を積み上げる中、後発組は必要な治験参加者を集めるのが難しくなっている事情もあり、軒並み苦戦を強いられている。
現在、供給開始時期の目標を掲げているのは、「2023年度中」のKMバイオロジクスだけ。
塩野義製薬やアンジェスは当初、21年中の実用化を目指していたが、今は未定に後退している。
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