現実に降伏せよ!

現実に降伏せよ。

そう言われて、すんなり納得できる人は少ないかもしれない。

そもそも痛みへの抵抗は生物にとって当然の反応であり、これがなければ原始の厳しい環境を生き抜けなかっただろう。

つまり現実への降伏とは、生物の標準プログラムに反する不自然な行為だと考えられる。

さらに言えば、今の社会には「人生を変えよ」や「好きに生きよ」といったスローガンが溢れ、私達は折に触れて障害への抵抗を促される。

そんな状況で降伏の利点を認識するのは困難。

そこで、もう少し降伏への考え方を掘り下げてみる。

例えば、自分が激しい頭痛に悩まされたとする。

急性の頭痛が予告なしに襲いかかり、その度に脳天を激しい苦痛が貫くような場面において、抵抗する人と降伏する人はどのように違うのか?

まずは、外側から見た反応には目立った差はない。

頭痛薬を飲み、ストレッチやマッサージなどの対処を行う点は、抵抗する人も降伏する人も同じ。

ところが、内面については両者の反応は大きく異なる。

抵抗する人は、痛みは消さねばならない、または大した痛みではないと考え、治療の効果にも過度な期待を抱く。

そのため、もし痛みが満足に減らなかった場合は強い怒りや落胆を覚え、必要以上のストレス反応が起きる。

他方で、降伏する人は治療には効果が出ないこともあると思っており、予想より痛みが改善しなくても動揺せず、自分を責めることもない。

今の痛みはこれぐらいのレベルだとただ現実を見つめ、その上で心に波風を立たせないまま別の対策を探し始める。

苦しみから逃げるのではなく、隠そうとするのでもなく、ただ痛みのレベルを適切に見積もり、出来る限りの対処を行うわけである。

現実への降伏がうまい人は、物事へ積極的に白旗を上げる姿勢を持っている。

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