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ESD(Education for Sustainable Development)の歴史前編~2006年

 持続可能な開発という概念が1992年に提起されてから30年が経過しました。
その間、この重要な概念に関して多くの検討が行われ、その意味が明らかになると共に、人類共通の目的であると理解されるようになりました。そして、私たちは2005年に、UNESCOを主導機関として「持続可能な開発のための教育の10年DESD(Decade of Education for Sustainable Development)」を発足させました。
人類共通の目的であると認識するに至った持続可能な開発、そしてそのために教育が重要であることも、早くから指摘されていたにもかかわらず、その教育をなぜ今改めて取り上げるのか、その点についての洞察と共通の理解が、DESDを成功させるための鍵であり、また出発点であると言えます。

持続可能な開発における教育についての議論

 地球環境問題についての検討の歴史を見ると二つの特徴があります。一つはそれが深刻な問題であると社会的に広く認識されるまでに長い年月がかかることであり,もう一つは数々の問題が指摘されながらそれらの相互の関係についての認識にまた長い時間を必要としたことです。

地球温暖化はその典型的な例でしょう。地球の温室効果についての科学的考察は1827年の J. Fourier に提言され、その後も19世紀に J. Tyndall,S. Arrhenius などの優れた科学者の考察を経て,やっと20世紀半ばになって測定精度の向上と,地球科学の進歩によって,温暖化がもたらす影響の深刻さが理解されるようになりました。
1950年ごろから多くの科学者から温暖化が人類の活動拡大に起因して増大する二酸化炭素をはじめとする有害ガスを原因として進行することが指摘される警告が多数発せられました。しかし、その報告が社会の行動を促すまでにはさらに数十年の歳月を必要としました。

1992年アジェンダ21(Agenda 21)

アジェンダ21(Agenda 21)

 1992年の地球サミットにおいて、参加国政府は「アジェンダ21」を採択した。持続可能な開発のあらゆる領域におけるグローバルな行動のための包括的な計画である(https://www.un.org/sustainabledevelopment/)。その実施と関連のコミットメントは2002年に南アフリカのヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」および2012年6月にブラジルのリオデジャネイロで開かれた「持続可能な開発に関する国連会議」―もしくは「リオ+20」―で再確認された。

 「アジェンダ21」は、持続不可能な経済成長モデルから成長と開発に不可欠な環境資源を保護かつ更新させる経済活動へと世界を動かして行くものである。行動領域には大気の保護、森林破壊や土砂流失および砂漠化との闘い、大気・水質汚染の防止、魚種枯渇の防止、有害物質の安全管理の促進などが含まれる。「アジェンダ21」はまた、環境にストレスをもたらすような開発様式、たとえば、開発途上国における貧困と対外債務、持続不可能な生産と消費の行動様式、人口問題、国際経済の構造なども取り上げている。行動計画は、持続可能な開発の達成に貢献する主要なグループ、すなわち女性、労働組合、農民、子どもと若者、先住民族、学術団体、地方自治体、企業、産業界、NGO(非政府組織)が果たす役割を強化する方法も勧告している。

 「リオ+20」は1992年の「地球サミット」開催20周年、2002年の「世界首脳会議」開催10周年を記念する会議であった。会議は、持続可能な開発を実施するための具体的措置を載せた成果文書、「われわれが求める未来」を採択した。「リオ+20」は、持続可能な開発を進めるための新しいボトムアップ・アプローチを始めるなど、持続可能な開発のための具体的成果をもたらすための700件を超す任意のコミットメントが生まれた。加盟国もまた、一連の持続可能な開発目標を発展させるプロセスを開始した。

1992年(ECO-ED)A WorId Congess for Educationand communicationon Environment and DeveIopment


The United Nations Conference on Environment and Development (UNCED)

 また、1992年10月には、教育とコミュニケーションを主体に持続可能な開発に関する最初の世界会議が、「環境と開発に関する教育とコミュニケーションの世界会議(ECO-ED)」というタイトルでトロント(カナダ)で開催された。

1996年UNESCOより「学習内なる宝」が発行


 

1996年に、ユネスコが将来にふさわしい質の高い教育を構想するために、
下記の教育の4つの柱、

◆知ること
◆行うこと
◆存在すること
◆そして(持続的に)生きること

Learning: The Treasure Within

を取り上げたデロールズ報告書「学習:内なる宝」が発行されました。
4つの柱の詳細をご覧になりたい方は下記PDFをご覧ください。

2002年UNDESD(公式教育および一般大衆における ESD の意識が採択

 2002年、リオ(ブラジル)での地球サミット10周年を記念して、ヨハネスブルグ(南アフリカ)で開催された持続可能な開発に関する世界会議で、国連システム全体で持続可能な開発のための教育に関する10年(UNDESD)が承認されました。 公式教育および一般大衆における ESD の意識の本格的な伝搬開始。
 日本政府の文科省HPでも公開。

2005 年に、「持続可能な開発のための教育に関する国連の 10 年」(2005 ~ 2014 年)が開始

「持続可能な開発のための教育に関する国連の 10 年」(2005 ~ 2014 年)


 2005 年に、 ユネスコは、ESDの組み込みにおける教師教育の重要性を促進するために、ユネスコ議長が28カ国の30の教師教育機関と協力して作成した、持続可能性に向けた教師教育の方向性を変えるためのガイドラインと推奨事項を発表しました。

2006年ESDの為のUNDESD国際実施計画および枠組みを発表

 

2006年、ユネスコは、公式教育のあらゆるレベルでのESDの実施をさらに支援するために、国連機関、各国政府、市民社会組織やNGO、専門家や専門家との広範な協議を経て、UNDESD国際実施計画および枠組みを発表。
上記のブックの写真をクリックして頂ければFramework for the UN DESD International Implementation SchemeのPDFのダウンロードが可能です。
ユネスコ版では日本語掲載がなく、日本語版は文科省のHPからダウンロードが可能です。
※注:英語版原文は46ページになります。文科省の翻訳したものは日本語ですがESDの展開スキーム等が日本調へ翻訳されていますが原文を翻訳して閲読頂く方が本来の目的としているESDの理念の理解には有用だと思います。

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