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まいにち決算⑩【最強のスタートアップ AI inside】

大阪大学企業・投資研究会です!
今日は11/11発表のAI inside株式会社の2020年7月~9月の四半期決算を見ていきます!

企業の概要と事業内容

AI inside株式会社
・2015年設立
・社員数95名
・時価総額:2781億円(2020/11/25現在)
・ミッション:世界中の人・物にAIを届け豊かな未来社会に貢献する
・ビジョン:AI inside X
 「X=様々な環境」に溶け込むAIを実装し、誰もが特別な意識をすることなくAIを使える、その恩恵を受けられる、といった社会を目指しています。

AI insideは人工知能を使った「手書き文字の認識技術」を提供している、AI開発会社です。


メイン製品:DX Suite

メイン事業は、ディープラーニングを活用した手書き文字認識AIサービス「DX Suite」です。人が認識ルールをプログラミングするのではなく、コンピューターが文字画像データを学習し、自動でルールを設計します。

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DX Suiteは3つのアプリケーションを備えており、代表的なものが「Intelligent OCR」※です。

※OCR:光学文字認識(手書き文字をデジタル文字コードに変換する技術)

Intelligent OCRでは、各種申込書や受発注帳票、アンケートなどのあらゆる定型帳票をデジタルデータ化することができます。(以下変換例)

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また、DX Suiteはさらにオプション機能として
・同書類の帳票を仕分ける「Erastic Sorter」
・請求書などの非定型帳票をデジタルデータ化する「Multi Form」
といったサービスを備えています。


DX Suiteの提供方法は基本的にはクラウドサービスでの提供です。
しかし、AI insideでは官公庁や地方公共団体のオンプレミス※需要に対応するため、特別なインテグレーションなく誰でも利用が可能なハードウェア「AI inside Cube」も開発・提供しています。

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※オンプレミス:サーバーやソフトウェア等などの情報システムを、企業などの使用者が管理する設備内に設置する事で自社運用すること


新規サービス:AI inside Learning Center

さらに2021年3月期中にローンチする新サービスとして、社内システムだった「AI inside Learning Center」を製品化することが発表されています。

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これは「誰でも簡単にAIが作れるツール」と称しているように、開発者でなくてもAI開発の操作をできるようにしたシステムです。

具体的には、AI開発におけるステップを網羅的にカバーし、データ管理からAIの自動生成までを実現するサービスであるとしています。

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AI insideのこのサービスを開始する狙いは、
①AI insideが介入なしにユーザーがAIを自動生成できる事による省力化
②様々なユーザーが生成したAIを自由に利用できるAIのプラットフォーム化への布石

の2つにあります。

これらのサービス展開でAIをプラットフォーム化し、誰もが特別な意識を持たずにAIを利用できる社会というビジョンを実現するという事ですね!


決算

それでは決算書を見ていきましょう!2021年3月期 第2四半期決算です!
AI inside株式会社 2021年3月期 第2四半期 決算説明資料
AI inside株式会社 2021年3月期 第2四半期 決算短信

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前年同期比で売上高が+217%、営業利益が+465%と驚異的な成長を遂げており、さらに営業利益率も29%→52%へと大幅に改善しています!

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この好業績について、経年での業績推移を追ってみるとものすごい成長の仕方をしていることが分かります。先ほど2Qの前年比で大きな成長を遂げていると書きましたが、既に現時点で前年の通期決算も超えています。
2015年8月設立なので今年でまだ6期目ですが勢いが凄いですね笑

四半期報告書では、この業績は製品の契約数の増加が理由としています。

自己満足制作物

確かに主力事業のIntelligent OCRの契約数の伸びが著しいですが、これはキャンペーン施策による一時的な急増であり、下期は同様の施策を取る予定はありません。
下期は今回獲得した顧客の体験を高めるためにインフラやサービスの充足を進める方針に転換していくようです。


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ちなみに、この契約数をもってDX SuiteはAI-OCR市場で62.5%という圧倒的なシェアを獲得しています。
AIはユーザーが増えて画像認識のデータが集まれば集まるほどデジタル化の精度が上がるものなので、ここまでのシェアを獲るとそうそう新規参入の脅威に晒されることもなく市場を独占できるのではないでしょうか。


業績が向上した理由はわかりましたが、その内訳を見ていくと収益構造にも大きな変化が生じていました。

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顧客がサービスを利用する限り継続的に発生するリカーリング収入の割合が大きくなり、安定した収益基盤の構築に成功しています!

リカーリング収入の成長は、上場時に発表された最重要経営指標であり、経営陣がこだわって伸ばしてきた点でもあるので、ここで80%を超えてかなり順調な経営ができていると見ていいのではないかと考えます。


経営体制について

さらに安定した収益構造の構築による資金確保とAIプラットフォーム化に向けたサービス拡充に向け、研究開発費が大きく増加していました!

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元々開発チームには大手IT企業の研究開発職や大学の専門的なディープラーニング研究など高い専門性を持つメンバーが揃っているそうなので、プラットフォーム構想を実現するサービスの完成も近いかもしれません…

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例としてインフラエンジニアの中途の募集要項を調べてみましたが必須スキルだけでも非常に多様なスキルセットを要求しており、人材レベルは高そうです…(中の人は文系なので半分くらい何言ってるかわかりません笑)

余談ですが、AI inside の研究開発チームには、ビジョンから大きく外れない範囲で、業務時間の20%を好きな研究に充てることができる「20%ルール」があるそうです。オープンに研究に打ち込める環境が優秀な研究者たちのパフォーマンスを最大化する秘訣?


またここで、エンジニアだけでなく営業組織や経営陣についても確認。

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取締役は3人でそれぞれバックグラウンドもエンジニア・営業・ファイナンスと違う畑出身なのでかなりバランスが良い組織なのではないでしょうか。

個人的に経営陣で驚いたのは、執行役員に"CRO"が設けられていた事です。
CROとは「Chief Revenue Officer」の略で、福田康隆氏の『THE MODEL』という本ではこのように紹介されています。

”会社全体の売上に責任を持つ立場であり、マーケティング、営業、インサイドセールス、コンサルティング、カスタマーサクセスなど、売上を生み出すプロセスに関わるすべての部門を率いる役割だ”

マーケティングや営業など特定のスキルに依らず、顧客のライフサイクル全体を俯瞰し、売り上げにつながる営業活動のレバーを引く指揮を執るという思想をもった役職で、日本ではまだ置いている企業は多くありません。

AI insideは営業組織構築でもかなり先進的な取り組みを実装している企業と考えられます。
ここまでサービス作りとその先の営業までこだわってたらそりゃ成長するわな…と思わされる組織でしたね笑

社内の雰囲気もオープンなようです


今後の戦略

今後の戦略として、AIプラットフォームの構築を目指していることは何度も紹介しました。

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その具体的な道のりとして、AI insideが今期取り組むことに
①DX Suiteの海外進出(使えるエリアを増やす)
②AI inside Learning Centerの製品版提供開始(作る人を増やす)

を挙げています。

上期の事業状況では両方ともまだ果たされていない事業ではあるので、下期の決算では新たに挙がった2つの指標がどのような状況となっているかも注目してみたいですね!


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最後にチャートですがこちらも綺麗に右肩上がり。
株価が7万ってもう中々手が出せませんね笑
圧倒的な技術力と経営組織へのこだわり、市場シェアの獲得と安定した収益構造の確立。知れば知るほど凄い企業でした…!!

という事で今回の「AI inside」のまいにち決算は以上です!
今日も読んでいただきありがとうございました!!

以下、参考書籍です。

①”CRO”を含むBtoBの営業組織の構築について学びたい方はこちら


②決算資料から色々考えられるようになりたい方にはこちら


③スタートアップの事業の強みや社内組織などで見極める観点を知りたい方はこちら



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