怒られると思って行ったらめちゃくちゃ楽しい話を聞かせてくれた ~『君たちはどう生きるか』の感想~
『君たちはどう生きるか』を観てきました。
タイトルから「こんな尊い生き方があるのにお前はさぁ……」みたな映画
かもと怯えて前日まではあまり乗り気ではなかったのですが、
「宮崎駿の作品を前情報一切なしで見るなんて今後不可能じゃない?」という誘惑に抗えず、結果公開当日のお昼に観に行きました。
当日朝のハッシュタグ広報でどうやら主題歌が米津玄師と分かったものの、
映画館に着いた頃の気持ちは「説教くさい映画だったら嫌だな~」が100。
もう公開二日目となり怒涛のように情報が解禁されてるので、
皆なんとなく映画の方向性を把握できるようになってると思いますが、
自分と同じように80歳に二時間グチグチ言われることに怯えている人もいると思うので、感想を書きます。
ということで以下は映画『君たちはどう生きるか』のネタバレを含みます。
物語の結末をはじめ「映画の美味しい部分」には触れないつもりです。
ただやはり感想の中で物語の展開には触れたいので、読んでいただける方はその点には気を付けてください。
まず端的に。本作の印象は身構えていたものと全く異なり、
「最後まで面白くてずっと楽しい、ワクワクが尽きないジブリ映画」です。(タイトルから、なんなら最初の10分程度までは「命の尊さを描いた感動作品」「メッセージに溢れた考えさせられる作品」なんだろうなぁと思っていました)
本作は「戦時中に東京が戦火によって焼かれる様子」とともに、
主人公の少年が「戦火によって母親を亡くし、父親に連れられた疎開先で義母と義母に夢中な父親のもと一人母親を失った孤独を感じている」という、
『そういうのお腹いっぱいです!』と言いたくなるスタートを切ります。
「戦争で人を失った悲しみ」とか「血が繋がっていないけど暖かな家族愛」とかはもういいよ……と一瞬思うのですが、主人公が疎開先となった義母家の近くで塔を見つけてから、物語の色づき方がまったく変わります。
『ハウル』のような重たさとぎらつきを備えたゴシック調の『下の世界』。
冷たさ異質さと共に、「この世界・物語の先に何があるんだろう」と
観ている人をワクワクさせる異世界冒険劇が本作のメインにして醍醐味。
そして何より楽しく個人的に大満足だった点として、
「冒険・物語が進むたびに、旅する世界がコロコロと様相を変え」ます。
ネタバレしすぎないようにぼやかして羅列すると、
『ハウル』を彷彿とさせる、この世の理が通じなさそうな『異世界』
『千と千尋の神隠し』にも通ずるような、古代中国やインドのようなどこか親近感を覚えがらも圧倒的な異国として佇む『異世界』
『猫の恩返し』や『アリエッティ』を想起させる、慣れ親しんだ世界がまったく違う法に支配されているような『異世界』
こういった世界を、「人探し」という明快で一貫した目的で旅します。
そしてこれまた魅力的なのが、物語が進み世界がその景色を変えるごとに、主人公の傍に立ち冒険を支え導くキャラも立ち替わっていきます。
主人公の前を歩き手を引くキャラ、嫌味を言いながら背中を押すキャラ、
ともに肩を並べて歩んでくれるキャラ。どれも個性的で関わり方が様々。
また『もやしもん』を思い出すめちゃくちゃ可愛いマスコットキャラや、
めちゃくちゃジブリな「一見薄気味悪いが実はただただ親切な老婆」が
冒頭から大量に出てきたりとテンポを損なわず様々な楽しみがあります。
もちろん映画を彩る、どころか骨組みとして映画を形作る久石譲の劇判は、
冒険における臨場感や底知れない不気味さを最高に演出していますし、
そもそも絵は言わずもがなめちゃくちゃに魅力的です。
もちろんところどころで「どういう意味?」という描写や、
「これ絶対なんかの比喩じゃん」というシーン、「あの設定結局なに?」という展開などがあります。これも映画の楽しみでしょう。
ただ本作ではそういう点をガッツリ無視しても100%楽しめると思います。
総じてタイトルの説教ぽさに反して、
込められたメッセージ性や比喩描写に対する考察なんかをすっ飛ばしても
「最高にワクワクドキドキして楽しめる映画」として非常に傑作でした。
宮崎駿のジブリはあと何回体験できるか分かりませんし、そういうレアさみたいなところでも見に行って損はないんじゃないでしょうか。
ちなみにキムタクはめちゃくちゃキムタクで、一声聞けば分かります。
事前情報無かったのに「え、キムタクじゃん」となりました。
逆に、菅田将暉は「なんか聞き覚えのある声だな」と所々思いましたが、
エンドロールを見て初めて「菅田将暉じゃん!」ってなりました。
著名人で「え、この人でてたの?」もジブリの楽しみ方な気がします。
そういった楽しみも是非でっけえスクリーンのエンドロールで。
まだ始まったばかりですし、力の入れ具合的に結構長いことやる気がしますが、ちょっとでも「アリか?」と思えたら是非見れるうちに見てください。
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