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水中で暮らすクモが持つ超絶技術

えら呼吸ができる魚以外にも水中で生活する動物は数多く存在しますよね。一般的には長時間息を止めておくことができるクジラやペンギンといった動物が有名ですが、とんでもない方法で水中で呼吸する生き物もいるんです。

今回は、驚きの手法で水中生活を可能にしているミズグモの生態について紹介していきたいと思います。

水中で暮らすミズグモの秘密

当然、ミズグモはえら呼吸ではないので、気体の空気で呼吸しなくてはなりません。そうすると、当たり前ですが、ずっと水中で暮らすなんてことはできないはずですよね。

そこで、このミズグモは気泡を体で包んで、水中に持っていくという方法です。人間であれば酸素ボンベのようなものが必要になりそうなものですが、このミズグモは何ももたずに空気を上手に包むことができます。

この時点で、かなりすごい技術ですが、そうはいっても空気は使えばなくなってしまいますよね。つまり、空気を消費していけばその内、水面にでて再度気泡を作って水中に持ってこなければならないわけです。

しかし、このミズグモは空気を回収しなくてもずっと水中にいられるようなんです。どうやったら、使えばなくなってしまうはずの空気を調達せずに水中で生き続けるなんてことができるのでしょうか?

実は、このミズグモが作り出す気泡は私たちが想像する以上に高機能だったようです。もう少し具体的な話をするために、気泡とは何かという話からしましょう。

参考文献より引用

気泡とは、そのまま水中にある空気の塊ですね。そんなことは、言われなくてもわかっているよ!といわれそうです。そして、理系知識があれば当然ですが、この空気を占める分子は主に窒素と酸素です。

私たち人間をはじめ、このミズグモも同様に呼吸には酸素が必要で、その酸素を使ったら二酸化炭素を吐き出しますよね。

吐き出した二酸化炭素は水中に溶け込みなくなるようですが、同時に酸素も少しずつ減っていきそうなものです。しかし、このミズグモが作る気泡を良く調べた結果、どうやら水中に含まれる酸素が気泡に取り込まれて、気泡中の酸素の量が大きく減少することがないそうなんです。

論文ではこの仕組みのことを物理的なえらと表現しています。確かに水中の酸素分子を取り込むという意味ではえらですが、かなり驚きの技術ですよね。気泡中の酸素分圧が低下すると、水中の酸素が分子が拡散し、気泡内に取り込まれるという仕組みのようです。

正直初めて見たときは嘘だろ!って思いましたが、調べてみると、水中で生活する昆虫やクモといった生き物はこの原理を使うものが少なからずいるようです。このような物理的なえら(気泡)のことをプラストロンといいます。

しかも、このミズグモは水中にクモの巣を張り巡らせることで、糸によっても気泡(プラストロン)を水中に保存することができるため、ほとんど水中から水面に上がる必要がありません。これはミズグモが水面で他の捕食者に襲われないためにも重要なポイントだそうです。

参考文献より引用

とはいえ、魚と違い永久に水中で生活できるわけではないようです。それにしても、人間からしたら到底考えられない生活を送っているよなって感じますよね。

最後に

今回は水と空気を操り水中で呼吸することができる特殊なミズグモについて紹介しました。こんな不思議な生き物がいること自体にも驚きましたが、世の中では人間には真似できない芸当をもった生き物がたくさんいますね。

このミズグモをはじめとする水生生物が持つプラストロンが私たちの生活に直接使えるかはわかりませんが、この小さな世界で見られる水と空気の制御技術は意外と工業や医療といったところで使えるかもしれないなと感じました。

参考文献

The diving bell and the spider: the physical gill of Argyroneta aquatica

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