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博士って何なんだ?

「末は博士か大臣か」といわれた時代もあったようですが,今では博士になれば定職につけず,大臣になれば叩かれるという時代になってしまいました.

少々極端な書き方をしましたが,今では大学でも「博士号は足裏の米粒」といわれ(とらないと気持ち悪いが,とっても食えないの意),金銭的に豊かな生活を目指す聡明な学生は早々にビジネスの世界に進出します.

社会としては高い教育費をかけた博士人材を活用したいと考えているものの,なかなかうまくいっておらず,博士は研究職ぐらいしかあてがわれないというのが,現状のようです.

今回は,この記事を読んで思うところもあり,そもそも博士って何なんだろうと疑問に思ったので少し調べてみました.

博士ってなに?

巷でよく聞く高学歴という言葉は難関大学の出身かどうかという意味で使われています.正しくは学歴とは義務教育の小学校からはじまり,中学,高校,大学(学部),大学院(修士,博士)という経歴を意味します.

そのため,正しくは東大の学部卒よりも,聞いたことのない大学の修士卒の方が学歴は上になるんですね.

そして博士号というのは,日本の教育において最後に位置する大学院で最終的に授与される学位ということになります.つまり,特定の分野の学問を修めたといえる立派な証になるわけです.

もちろん,大学院にまでなるとその分野は細分化されているため,博士が何でも知っているというわけではありません.ある特定の金属材料で博士はプラスチック材料の素人なんてことは良くある話です.

博士というと,白髪髭もじゃでなんでも知ってるイメージを持たれる方もいるかもしれませんが,自分の専門以外はあまり詳しくない一般人なんですね.

みなが思い浮かべる博士のイメージ

博士号の歴史

さて,そろそろ本題の博士号についてもう少し深堀していきましょう.調べてみると面白いことに博士というのは,1887年に学位令というものが生まれたときに最初に設定されたそうです.つまり,この頃は「学位といえば博士」というぐらい,とても希少な称号だったわけですね.

最初に設定されたのは法学,医学,工学,理学,文学の5つの分野の博士号です.これらは今でも存在しますが,時代の流れとともに薬学や農学,最近ではコンピューター科学まで細分化された様々な博士号が設定されています.

ちなみに当時は博士とともに大博士という学位も設定されたようですが,誰も授与されることなく後に廃止されました.まさに幻の学位ですね.

今では博士に続き,誰もが名前は聞いたことがある修士号は学位として戦後に追加され,それ以降しばらくの間,博士と修士が学位として認められていました.

ここで読者の方は一つ気になることがあるのではないでしょうか?学部卒業者に与えられる学士はどうなっているのかと.最近では学士を持っている方は多くなりましたよね.

どうやら,学士は博士と同様1800年終わりからあったんですが,1991年の改正学校教育法まで「学士の称号」であり,学位ではなかったのです.

こうみると意外と最近まで学位ではなかった時期があるのは驚きです.言葉としては平安時代からあったようですが,教育制度として整備されたのは1800年後半から1900年後半の100年間というわけですね.

さらに,2005年には短期大学士と呼ばれる短大卒業者に与えられる学歴も学位の仲間入りを果たします.こうして,現代では博士,修士,学士,短期大学士の4つの学位で運用されているということになります.

正直,何が学位に相当するのかなんて気にして生活している人は少ないと思いますが,このように歴史を紐解くと知らなかったことがたくさんあって面白いですね.

就職できない博士の苦しみ

さて,そんな歴史ある博士号は現代の日本ではとっても食えないものだといわれています.博学で専門知識があるはずの博士はなぜ就職に困るといわれるのでしょうか.

一つには博士課程に進むような人は変人で社会生活を送れないからだという意見もありますが,日本の場合は受け入れる側に問題があるというのも否めません.もちろん人として変わっている人が多いのは否定できませんが,そんなこといったら学歴に関係なく変な人はいますよね.

日本の場合は,若手で教育できる働き手が欲しいという時代が続いたせいで20代後半まで学生をやっていた博士は扱いにくいと思われているそうです.

最近では緩和されてきたともいわれますが,やはり人材市場などを調べてみると学士以上では学歴よりも社会人歴(企業人歴)が重視され,アカデミックな専門性はそれほど重宝されないという背景もあります.

個人的には社会人歴=企業人歴という社会の風潮には納得できません.もちろん大学では学べないことが企業にはたくさんあることを知っていますが,逆に企業では学べないことが大学にもたくさんあります.

海外では大学院生は研究者として認知されていますし,修士や博士の学位をとることはある意味,資格を取るのと同じような感じです.

なぜ工学修士は雑に扱われるのにMBA(経営学修士)は重宝されるのでしょうか?もちろんそこには希少性や相対的な難易度というものもあると想像しますが,おそらく社会が作った価値観に踊らされている気もします.

「うちはうち,よそはよそ」という意見があるのもわかりますが,日本の社会の価値観は世界の標準ではないということも知ってほしい気持ちがあります.

少々長くなったので,後編に続きます.次回は海外の博士のキャリア事情についてみていこうと思います.

最後に

ちなみにPh.Dという言葉を聞いたことがある人も多いかと思います.これはDoctor of Philosopyという言葉の略です.

直訳すると哲学博士ですが,実際は学術博士という方が近いかもしれません.何が違うんだろうと感じますが,実際の使用上は博士もPh.DもDr.も同じ意味です.そのためプロフィールにPh.Dと書いてあったら,何かの分野については詳しいんだろうな,と思うといいですね.

くれぐれも何でも知っていると勘違いしないでくださいね.あくまで一分野の専門家ぐらいのイメージが正しいかなと思います.

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