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本質の見つけ方・深め方

哲学者フッサールが提唱した「現象学」における「本質」、このコラムではその見つけ方を説明します。本質を見つけることを、専門用語で本質観取(ほんしつかんしゅ)と呼びます。

(読了時間:約5分半)

本質とは?

現象学の「本質」とは、ある物事の共通点のことです。つまり、全ての○○に共通する点=○○の本質となります。本質は、含まれる物事が増えるほど、一般性(いろんなものにあてはまる)と普遍性(いつでもあてはまる)が大きくなっていきます。一般性や普遍性の高い本質は、真理と呼ばれます。

本質の見つけ方

「全ての○○に共通するものは何だろう?」

それが、本質を見つけるための問いです。ですから、○○の具体例をできる限りたくさん集めるほど、より正しい本質を見つけやすくなるのです。しかし、要素が多すぎるとより抽象的(=あいまいな)な概念になっていくため、自分の求める意味の範囲に合うものだけを集める必要があります。なので、集めた後で取捨選択することをオススメします。

たとえば、私が「夢」の本質を探したときは、類語と連想語辞典を用いて、夢に似た単語をたくさん集めました。次のように、意味が重複していても構いません。

理想、希望、望み、願い、野心、求める、未来、見る、願望、渇望、膨らむ、祈る、叶う、目的、目標、的(まと)、将来、大志、見通し……

ところが、私がイメージしていなかった「夢」の一面がだんだんと見えてきました。それは、将来の夢ではなく、寝ているときに見る方の夢です。

絵空事、幻、幻想、物語、机上の空論、空想、神話、眠る、寝る、枕、儚い、妄想、妄想、甘い、夢現(ゆめうつつ)、短い……

これら全てに共通する点は、どちらも私たちが生きている現実にないもの、あるいは私たちの現実とは違うものという意味になりそうです。つまり、「夢」の本質は「非現実」なのです。もしも「将来の夢」だけの本質を探すば、「期待」になったでしょう。

本質の深め方

「真理はいつも1つ!」ではありません。なぜなら、情報はひとりぼっちでは見つけられず、つながりの中で始めて意味を成すからです。

よって、本質を深める方法は、つながりを見つけることに等しいです。つながりの代表は「反対」のものです。つまり、本質の深める問いの1つは次のようになります。

「これの反対、対比されるものは何だろう?」

先ほど、「夢」の本質を「非現実」と説明しました。すると、その反対は「現実」となります。このような形で、対(つい)となるものを探していくのです。私は、真っ先に対義語辞典を調べることが多いです。

ただ、反対のものが複数見つかることもあります。これは間違いではなく、本質が複数の一面を持っている表れなのです。

本質を更に深める方法

本質とその反対のものを見つけたら、次はまたその共通点を探します。もしかすると、その2つをは同じグループとしてみなせるかもしれません。これは、グルーピング、日本語では分類といえます。

本質とその反対の共通点は、分類だけではありません。0度に対する180度、「+1」に対する「‐1」のように、反対のものが成り立つならば、必ずそこにとなる共通のものがあるはずです。

言い換えると、テーゼとその反対のアンチテーゼを統合したジンテーゼを探すのです(カッコいい)。このジンテーゼを探すことを、弁証学 では「アウフヘーベンする」と呼びます。

本質を深める、その具体例

たとえば、私が「支配」の本質を調べていたときに起きた、奇妙なことを紹介しましょう。

支配の対義語は、従属(服従)です。しかし、服従の対義語は、抵抗です。反対の反対が元の単語になっていません(ちなみに、抵抗の対義語は、屈服なので、服従に近い意味です。)。

それどころか、支配には対義語がもう一つあります。それは、独立(自立)です。自立の対義語は、依存です。やはり、反対の反対が元の単語にはならないのです。

支配、服従、抵抗、自立、依存……。これらの単語の関係性を見つけなければ、本質を理解したとは言い難いですね。その結論は、次のようになります。

まず、支配の反対は、被支配(支配されること)です。被支配には、2つの方向性があります。それが、服従と抵抗です。これは、支配を受け容れるか拒むかの違いを持っています。

そして、支配と被支配(服従と抵抗)は、まとめて依存と呼べます。なぜなら、お互いがお互いの存在を前提とする相補的な関係だからです。すなわち、支配者がいなければ、誰も抵抗したり服従する必要はありません。同じように、服従したり抵抗したりする人がいなければ、そもそも支配することができません。つまり、王様のいない王国が存在できないのと同じように、民なき国の王様は存在できないのです。

そして、最後に依存の反対が自立です。依存は、他者の意志に影響を受けた状態で行動を決定すること。これに対して、自立は、(他者の意志に依らず)自分の意志で行動を決定することで、反対になっています。

反対の反対が元通りにならなかったのは、このような「反対」の入れ子が生まれていたからです。

まとめ

本質とは、共通点のこと。だから、本質を見つけることはすなわち、ある物事全てに共通するところを見つけること。

本質を深める方法は、見つけた本質のつながり(関係性)を見つけること。その代表が「反対」や「対比」。本質の反対を見つけたら、更にそれらの共通点(分類)を探し、つながりを増やそう。

おわりに

考えるのってワクワクします! けれど、考えるのは難しいです。なぜならば、そこに至るまでの過程が分からないからです。ですが、むしろ分からないから楽しくなるのです。

このコラムを読んだ人が、自分の知りたいことを知れること、そして、知る過程そのものを楽しめるようになることを願っております。

よろしければ、スキを押していただけましたら幸いです。

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