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エディトリアルデザイン的思考で仕事をする

HINODEというポップアップレストランを企画して、1カ月ほど、25歳以下の料理人たちのメニュー作りの過程を見てきました。

基本的にオンライン上でのやりとりだったので味の変化については追えてないのですが、料理の作り込み方を見ていると、紙メデイア編集という同じものづくりの立場から、僕らがもつエディトリアルデザイン(雑誌、新聞などの紙媒体のデザイン)的思考が、試行錯誤しながらポップアップイベントで自分のメニューを出そうとしている若い料理人さんに役に立つんじゃないかと思ったので、まとめてみたいと思います。

メインとサブを決めたら最後まで動かさない

エディトリアルデザインでは(いろいろな方法があるとは思いますが)、見開きページのなかで大部分のスペースを占める、メインになる写真とサブになる写真を最初に決めます。そして大きさや、大小差を決めてから、2枚の写真を配置します。

このとき大切なのは、読む人の目の動きを意識して、メインとサブの大きさの差をしっかりつけること。メイン写真→サブ写真→タイトルと目が動くような視覚のデザインを意識します(メインとサブの大きさに差がないと、目の動きを誘導できなくなり、読む気が起きないレイアウトになります)。

それを、10ページの特集なら、10見開き分構想してから、各見開きのタイトルの大きさや位置、文字を流す場所、参考図版の位置、色などを決めていきます。

このとき仕事ができない(遅い)デザイナーさんは、参考図版やタイトルの都合で、最初に決めたメインとサブをこちょこちょいじっちゃうんですよね。つまりページにある要素の都合で、本質をずらしちゃうんです。

そうすると、さらに違う場所の参考図版を動かしたり、タイトルの位置をまた動かしたりすることにり、どんどん全体のバランスが崩れて、最初に決めたメインとサブの画像の大きさの差もわからなくなって、結局最初の企画意図がどこかへ行ってしまった、意図のないレイアウトになってしまいます。

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一方で、良いデザイナーさんは、メインとサブの関係性をぜったいに動かさない。そのかわり、タイトルの置き方や本文の流し方は、いろいろな方法をためします。場合によっては、「タイトルが長いので短くしてほしい」や「この図版必要ですか?」「風景写真を入れないので、写真を送ってください」などという、フィードバックをしてきます。これだと仕事は早いし、編集側が意図した以上の効果的な誌面(これをデザインといいます)にできあがってくるわけです。

タイトル位置や文字位置をどう置こうが、最初に決めたメインとサブは動かさない。この、本質(メインとサブ)を要素(タイトルや文字位置)の都合によって変更しないというのが、エディトリアルデザイン的思考なんじゃないかと思っています。

動かさない部分を決めれば細部の調整に時間が取れる

若い料理人さんが、このエディトリアルデザイン的思考を実践すれば、もっと早く、意図したメニュー作りなどがができるようになるんじゃないかと思います。

実際、HINODEで1カ月見ていて「作りたい料理を作る」ということでメニュー作りをスタートしても、たとえば、メインの食材とそれに合わせるソースを決めたのに、途中でソースを変えちゃって、付け合わせも全部変更とか、味がきまらないから料理を変更するなど、料理を構成する本質的な部分を、コロコロ変えていってしまう。

そうではなく、何を作るのか、メインとサブの食材(主食材とソースとか)の組み合わせは何か、そのあとの味はいくらでもつくっていける調整できる要素的なので、最後まで作り込んで磨いていく。重要なのは、最後に調整できるものにために、伝えるべきことを変えてはいけない

そういう考え方があるうちは、おそらくそれぞれが勤めている厨房でも、仕事の本質ではない、要素の部分の都合によって本質的なやり方を変えちゃったり、効率よさを考えて仕事を簡略化したつもりが、ポイントがずれていて、かえって本質を損なうことになってやり直したり、上司からの評価が得られなかったりするんじゃないでしょうか。

まずは、メインとサブを考えたらそれを動かさないで、作り込んでいく。それはつまり、本質を考えることが何よりも大切なことであるということも言えます。

太くて強い幹があれば、枝葉はいかようにもなる。

そういった考え方でポップアップイベントのメニュー作りや、日々の仕事に挑んでみてはどうでしょうか?

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