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レストランシーンへの挑戦「HINODE」

12/8(日)に20代の料理人の料理発表の場として、ポップアップレストラン「HINODE」を開きます。

このレストラン、まったく無名の若い料理人たちがレストランをやりたい、という思いから始まったもので、僕は、それを全面的にサポートしています。

投げ銭は参加者に精神的な負荷がかかるのに、なぜ?

このレストランのもう一つの特徴は、コースと飲み物の代金を原価分しかいただかないことです。そのかわり、若い料理人の情熱や可能性を感じてもらえたら、値段に上限はありませんので、投げ銭して帰ってください、というスタイル。料金が決まったうえで予約する、これまでのレストランではあまりない、定価のないレストランなのだ。

このシステムは、HINODEに来ていただく方にとっても、挑戦になるのではと思っています。というのも、これまでレストラン側が決めた価格に対して、私たちはその満足度を判断してきたのに、共通の価値基準が無くなったときに、はたしてどんな価値を見出して、評価することになるのか。発見がいろいろあるのではないかと思っています。

HINODEはMAX30席。広く多くの方に来ていただきたいと思っている一方で、僕自身が信頼している方のなかで、この難題にどんな答えを出してくださるのか聞いてみたいという方には、直接お声がけしさせていただいています。

そのなかのおひとりに、こんなメッセージを受けました。

投げ銭は参加者に精神的な負荷がかかる方式なので、なぜにこの構造にしたのかという考えをお聞きしたいところです笑

たしかに、「わーい、1万円くらい取られる料理を、原価の4000円で食べれるなんて、お得~」っていうのではなく、投げ銭してもしなくても、それが評価になりますからね、というのは、食べ手にとっても酷な話だと思う。レストラン、もっというとレストランシーンをどう評価するかという軸をもたないと、楽しんでもらえない構造である。

これくらいでいいかな? って、迷ってしまっては、けっきょく後悔して帰ることになりますからね。

この点、僕自身に、かなり明確な意図があったので、まとめておこうと思います。

洗脳によってできたレストラン観を壊すこと

最初に20代の料理人とこのイベントを始めようとしたときに話していて、まず「だいたい、いくらのコース料理、いくらにする?」という話から始まりました。それ自体、まちがっていないのですが、せっかくイチから考えられるレストランなのに、成功しているレストランのようなことをしても、だれも喜んでもらえないんじゃないの? そもそも、そんな真似事をしても、誰もきっと喜ばないと思うよ、という話をしました。

まずは、現代のレストランシーンを沼化させている「洗脳されたレストラン感」を壊してしてみる必要があるな、と思ったのです。そして、この洗脳は確実に食べ手もおよんでいて、いわば共犯関係にあると思っている。

そこで前からぼんやり思い描いていた、この体験した人の満足度によって支払額がかわる投げ銭レストランをやろうと思いつきました。

洗脳されたレストラン観というのは、例えば以下の3つです(ほかにもあるけど)。

1.食材至上主義、拝金主義

〇〇産の牛肉、〇〇産のマグロ、高級食材や希少食材であふれたレストラン。高級店であればあるほど、食材にお金を払っているだけで、レストランや料理人に対してお金を払っていないんじゃないかと思うことがある。料理人の技やクリエイティビティにも(こそ)価値があるべきではないか

僕は、高級レストランの存在を否定しているわけではないんです。ただお金で測れるものしか、その価値を判断できないのは問題だと思うのです。

2.料理だけで語られるレストラン評価

先に述べた食材以外の料理人の技やクリエイティビティ以外に、レストランにはどんな価値があるのだろうか?

ドリンク全般やサービスやカトラリー、食器、その他の設え、照明や空調の雰囲気にまつわる様々なサービスによってレストランは成り立っている。投げ銭をすることは、そうしたものにも価値を見出してもらえるチャンスが生まれることにもなります。

レストランがブラック体質といわれる最大の原因は、価格競争に巻き込まれているからだと思っています。いかに安くサービスを提供するか。でも、本来はお皿の上以外のことについても、レストランはたくさんのリスクを負っていている。そこを理解していないと、食べる方が適正な価格を支払うことができないのではないか。

レストランは総合芸術だと思うのです。

またこれは、レストランの内部にとっても痛烈な皮肉でもあります。

厨高席低で、現代のレストランは明らかにサービスが弱い。サービスがいいから行きたいな、というお店がほとんどない。しかしお客さまが最初に関わるのはサービススタッフである。もっと若いスタッフが現代の形でサービスするようなお店が出てきていいはずだ。オールドスタイルがあまりに多すぎる。

今回は、おそらくサービスまで気が回らないと思うが(そこはきちんとサポートしないと)、サービススタッフの存在がレストランを支えているということに、若い料理人に感じてもらえればと思っている。

3.経歴重視の青田買い

シェフは、フランスの三ツ星店で~というふれこみのお店がすごく多い。三ツ星店のすごさは、放映中のドラマ「グランメゾン東京」でも描かれている通りで、そこで”やりとげて”きた料理人は、料理の腕もさることながら、人格者でもあり、別格としか言いようがない。

しかし果たして、名店で結果を残した料理人をヘッドハンティングして人気店にするようなことが若い料理人への支援なのではないと僕は思っています。それは、ただの才能の消費でしかなく、才能の育成ではないからだ。

もっと料理人として駆け出したことから上の世代が支援、投資していかなければ、人は育たない。料理人もサービス人も。

ヒヨコが生まれてから手をかけるのではなく、卵の段階から孵化させるべくあたためていかないといのではないか

さらにこれは、HINODEの料理人にも、考えるきっかけになると思っている。現在の自分たちは、いったいどんな社会的価値があるのかということを。

最後は告知、12/8(日)17時~茅場町で、僕と握手!

HINODEの料理人はみんな、まだ役職もない料理人です。これからどう成長していくかも予想できない。だからこそ、その瞬間が大事なのではないか。お客様によって孵化した料理人が、料理界に旋風を巻き起こしてほしいと本気で夢見ています。

このスタイル、現代のレストランシーンへの問題提起がかなり詰まっています。

ということで、12/8はポップアップレストランHINODEがオープンします。まだ若干1テーブルほど空きがありますので、興味を持たれた方は、僕のTwitterからDMをください!

当日僕は、サービスしたり、司会したりしています!

イベント名:HINODE ~初日の出20191208
日時:12月8日(日)17時~
場所:カステリーナ茅場町
参加料金:原価(4000円)+投げ銭(通常レストランで提供料金1万円程の内容)
予約方法:江六前のTwitterからDM @icro_erkme 
料理のテーマ:日本
料理の内容:前菜3品、魚、肉、デザート(ワイン、お茶のフリーフロー付)
参加料理人:鈴木康敬、吉野瑠華、三木恵基、村上 凌、松田樹生、斎藤勇佑、白石桃果
サポートスタッフ:伊東龍之介、鳥羽顕明、石川海歩(サービス)
演出:坂田佳菜女
監修:福田浩二(プルマン東京 田町)
特別サポート:関口幸秀(カステリーナグループ 統括料理長)
企画:江六前一郎



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