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Human|陶芸家 Keicondoさん

11月から刃物ブランド「貝印」さんが運営する、料理家、料理教室をサポートを目的としたメディア「Kai House」でインタビュー記事を書かせてもらっています。

先日公開されたのが、笠間焼の陶芸家、Keicondoさんのインタビューです。

料理家マニュアル」という料理人や料理教室の先生など、食を仕事にする人や、プロの料理家を目指す方向けの、料理人や料理にかかわる旬のクリエイターさんたちのインタビューから、「求められる考え方や感性」を浮き彫りにしていくような企画。

次にくるトレンドを教えてください」とか「料理家に必要なものとは何でしょうか?」という、ある種の働き方ハウツーのようなものではない企画なので、1時間半ほどのインタビュー時間をじっかくり使って、何かを創造しようとする人の中に現れる、心の動きだったり、気の使い方や、思いやりのようなものをつかまえて、文章にしていく。そのなかから、その人の生き方や決断の瞬間の考え方などから、クリエイターに求められる感性の磨き方みたいなものが、読んだ人のなかでいろいろと見えてくるといいなと。

そして同時に、何かを創り出す人間は、俗世とつながることが不得手なことが多く、つねに孤独をかかえながら、創作と向き合っている。そうした人たちに、コミュ障でいいじゃないか。そうした孤独のままでいい。その先にオリジナリティがあるから、もう少し踏ん張ってほしいという、エールのようなものが伝えられたらいいな、という思いも込めて書いています(エラそうにすみません!)。

この企画では、僕は取材の人選は担当していないので、「●●さんなのですが、書いてみませんか?」という連絡で取材相手を知ることになる。存じ上げている方になることもあれば、前職で取材をしたこともあったりもする。

Keiさんのことは、依頼で来て初めて知りました。そして、陶芸家にインタビューをするのはおそらく初。インタビュー前には、どんなときも下調べするのですが、Keiさんのインタビュー記事はほとんどなくて、久々に前情報なしでの取材になりました。

初めましての取材でのインタビュー術

僕が、初めてお会いする方のインタビューの時によく聞くのが、幼少期のことです。「三つ子の魂百まで」という諺があるように、子どものころの性格や経験を多くの人は引き継いでいるので、当時の話を聞いて、「いまもそれほど変わらないな」、という印象なら、話した印象とバッチリあってるので、そのまま行こう! でも、まれに幼少期のイメージと違う方もいらして、そういう方は、青年期以降に大きな転機があったりするので、そこを掘り下げて人生のターニングポイントを探ります。

Keiさんにも「子どものころはどんなでしたか?」ともちろん聞きました。そうしたら「え、そんなこと聞かれると思ってなかった」とちょっとビックリされ「うーん」と考えこんでいました。それなら「五人戦隊なら何色?」と聞くと「グリーン」とのお返事。けっして主人公ではないけど、チームの広がりとか、重要な脇役というようなイメージがあるパターンなので結構納得。これで最初のインタビューの10分ぐらいで感じている、Keiさんの人柄とそんなに印象が違わないことがわかり、「このままイメージで進められるな」と安どした瞬間でした。

ちなみにあと、僕がよく聞くのは「勉強が嫌いだったので」という話に対して「なんで嫌いだったんですか?」という追い込み(笑)です。

勉強が嫌いだったので」って答えてるのに、ビジネスではけっこう頭使って仕事してるな、って人いませんか? たいていそういうのは、できなくて嫌いだったわけじゃなくて、「勉強というシステム」が合わないだけっていうパターンが多い。「ひとつしか答えがないのが嫌」とか「じっとしてるのが苦手」、というように、その方にもう少し考えてもらうと理由が出てくることが多くって、そこからまた人柄が見えてきておもしろい。

Keiさんの場合は、「美術や技術などのモノづくりが好きだった」という話を聞き、元来のモノづくり好きなんだなぁと、このあたりも人物像を膨らませるのにすごい役立った。

さらに、僕の原体験探しは続いて、Keiさんがサラリーマンをドロップアウトして、地元・笠間の陶芸の学校に入学したら、ろくろを回すのが楽しかったんだ、という話になって、また「どう楽しかったんですか?」と食い下がる。「どうって。。。」と一瞬悩む中、「それまで、サラリーマン時代もサーフィンとか車とか、楽しいことはあったんですが、陶芸を始めたら、そういうのをやらなくなったんです。サラリーマン時代はストレス発散で楽しいことを探してしていたんだと思う」と、いう答え。よし。これは使える。

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と、そんな感じでしつこく質問していたこともあって、「陶芸家になって10年のことを考えるきっかけになって、よかったです」とインタビュー後に言ってもらえました。記事になって読者のもとに届いて感謝されるのとはまた別で、取材させていただいた方にもインタビュー時間が良い時間になったといわれるのはうれしいもの。「三方良し」(インタビュー相手、読者、クライアント)になれたかな、とほっとしました。

誰かの一番より、自分が愛せるものを

CRFTSMAN × SHIPのイベントで、食のクラフトマンたちとの話を聞きながら、「クラフトのプロダクトを選ぶということは、生き方を選ぶということに似ているよな」と感じるようになっています。

記事には書かなかったですが、「器は料理を安定させるため、ものが溢れないようにするためのものでは、もうなくなっていって。気分によって使い分けていくようになっていくし、そうなっていってほしい」とKeiさんも話していました。

そのプロダクトが、たとえば100万円だったり100円だったり、となりでつくったものだったり外国製だったり、誰かがいいって言っていたりたまたま拾ったり。情報がいろいろあるなかで、どのストーリーと関わっていきたいか、どのストーリーのなかに自分はいたいか、というのが、プロダクトを選ぶうえで、理由になってくるような気がしています。

誰かの一番より、自分が愛せるものを。

それは人を愛することに似ていて、その人が、誰かより優しいとか、誰かよりいい顔している、みたいなことではあまり考えないですよね。もちろん好みとかあるとは思いますし、わかりやすいステータスに愛情を抱くこともあるかもしれませんが、誰かがいいって言っていたから、人を愛するなんてまずない(少なくとも僕はない)。

自分なりのフレームでその人を見たときに、ものすごい輝く瞬間を見つけてしまったとき(しまった、というのもヘンか?)に、その人がずっと光って見える。そんな感じだと思うんです。

クラフトのプロダクトもそうだと思っていて、好みや個人が考えるクオリティと価格があるなかで、そのプロダクトを愛せるか、そのプロダクトとどんな日常を過ごしたいか、というようなことが使いたくなる動機になってくるのではないか。

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そういう意味では、Keiさんの黄色い器は、使いたくなる器だ。

Keiさんのシャイだけど人を包む雰囲気は、男ながらに惚れてしまう。敬意をもって会話をしてくれているのもすごく伝わるので、僕もついつい、いつも以上に自分のことを話してしまった(インタビュアーなのに)。「優しい」という言葉が適切なのか、「人の多様性を認めている」からなのか、そこはまだわからないが、取材が終わっても、もっとKeiさんと話していたいな、と思わせてもらえた、貴重なインタビューだった。

2月に「GO KASAMASHIKO via TOKYO」というイベントにKeiさんも参加するようです。もしご興味あればぜひ。僕も会いに行きたいです。

「GO KASAMASHIKO via TOKYO 理想のクラフト郷へ -笠間と益子の魅力-」
日時|2月16日(木)-22日(水)11:00~20:00
(初日14:00から/最終日18:00まで)
メイン会場|渋谷ヒカリエ8F 8/COURT(東京都渋谷区渋谷2-21-1)

益子のアトリエにも行きたいな。

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