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7「戦車」✵幸運は耕耘することで手に入れる

前回の 6「恋人(たち)」で調和を目指していたカードから数字も物語が進み、新しい可能性に向けてチャレンジを試みます。

戦車の男性はマルスかアポロンか

まずはウェイト版の「戦車」のカードを見てみましょう。

「戦車」のカードは蟹座サイン・が対応していると言われており(諸説あり)、甲冑の肩当てには月が配され、胸当てや天蓋のデザインには四角(=数字の4)が強調されています。
月は蟹座を支配する惑星であり、蟹座は12星座の中で4番目に位置するサインです。

堂々とした姿で戦車に埋まっている乗り込んでいるのは、華々しい甲冑に身を包んだ若く壮健な男性。

対応惑星は月だけど、どうみてもマルス(火星)に見えてしまう…。

月は占星術で「夜の女王」とされており(太陽は昼の王)、火星は月と同じ「夜」の惑星に分類されています。
また、月は「ドミサイル」という品位により主力として蟹座を支えますが、火星は「トリプリシティ 」という品位によって月と協力して蟹座を盛り立てていきます。
火星は主に「若い男性」「戦士」「闘争や攻撃」「情熱」(そしてトラブルも)などを表すことを考えると、甲冑を着た「戦士」「戦車」に乗っている姿が描かれているのはなかなか思わせぶりですね。
それに前へ進もうとする強いエネルギーを表すカードだし、やっぱりマルスっぽいような。

そう考えていると、いけだ笑み先生『いますぐ深読みできるフレンドリー・タロット』では、冠の太陽、両肩の月から「夜と昼と星を御するアポロンの力を担うカード」とありました。
アポロンはギリシャ神話の太陽神です。
確かに戦車の天蓋には星、ベルトには太陽(アポロン)の通り道である黄道も描かれています。
笑み先生がこの男性について「相応の秩序と統制力を有するはず」と推測するように、激しい気質を持った4頭の馬が引く日輪の馬車の手綱のバランスをとるのは至難の業でしょう(息子パエトーンはその馬車を御せず悲劇を招く)。
つまりこのカードでは、強く激しいエネルギーを持ちながらも方向を一つに定めるための力量や技、精神力も求められているようです。

余談ですが、このカードを制作し始めたのは火星が山羊座に入ってからです。
山羊座では火星の激しいエネルギーが目的に沿って統率され、具体的な結果を出していきます。
日輪の馬車を御するアポロンとちょっと共通する点もあるような。

とりあえず男性がマルスなのかアポロンなのかは一旦横においといて、次の解説へとグイグイ前進していきます!
強引さも「戦車」の意味のひとつですw

「開墾だ!」

農耕の「戦車」は「トラクター(鋤)」!

ではでは、絵の説明に。

数字の6「調和」から進んだ数字、7「挑戦」のカード。
農耕や豊穣がテーマのタロットなので、戦うための乗り物や武器は「戦車」ではなく「トラクター(鋤)」です。
一本の鋤で人力で地道に耕すのとは違い、動物が牽引する力も利用して力強く大地を掘り起こしていきます。

男性の手にはオリーブの苗。
前回の「恋人(たち)」が持ち寄った苗から育ったものでしょうか。
また、「恋人(たち)」で背景に広がっていた土地が、今回のカードでは城壁に囲まれた町に(町や城壁も蟹座の象徴みたいですね)。
堅固で繁栄した町は恋人(たち)の子孫が築いたもの、または戦車の男性が胸に抱いている理想なのかもしれません。

聖なる獣「猪」

ウェイト版で「黒と白」「雌雄」で描かれた聖獣スフィンクスは、「2女教皇」でも解説した二元論を表していると言われています。
こちらのカードもスフィンクスと同じく「聖なる獣」とされる猪を雌雄で描きました。

今にも飛び掛かってきそうな荒々しい雄猪とゆったりと草を食べている穏やかな雌猪。
陰陽を表す猪には陰陽を表したアクセサリー付きの首輪をしてはいますが、ウェイト版のスフィンクスがそうであるように猪たちにも手綱はありません。
これは目的達成のために、先述のアポロンの手綱さばきの技術や器量、意志力によって、対立する概念をコントロールすることを表しているのです。
女教皇では相反する原理を(二本の柱の間に静かに座り)女教皇が知性や知恵で、戦車では(二頭の猪の間で堂々と立って)戦士が強い意志や情熱(太陽や火星の象徴)でバランスをとろうとしています。
全く性質の違う二頭の猪(男性性と女性性、本能と理性、能動と受動など)をうまくコントロールすることが目的達成のカギとなるのです。

ところで、畑を荒らしたり人を襲ったりといった害獣のイメージが強い猪は日本でもお馴染みの動物です。
私が住んでいる地方でも、子供の通学時の注意喚起として猪の出没情報がメールで届きます(瀬戸内海に浮かぶ島から泳いでやってくるらしい。たくましい……)。

その荒々しさは、海外でもシンボルや象徴に変化していました。
ハンス・ビーダーマン『世界シンボル事典』によると、ケルト人は「闘争心や強さのシンボル」として兜や盾の飾りに、北欧では「恐れを知らぬ戦士の象徴」として猪の頭の形をした兜がかぶられていたとか。
また、ケルト人には「聖なる獣」と呼ばれていたり、古代ローマでは「マルス(!)の持ち物」だったのです。

「危険と背中合わせの強い闘争心」
一目でそのイメージが伝わるかと思い.聖獣スフィンクスの代わりに猪を描きました。

(猪についてコメントしてくれた たわ鹿さん、ありがとうございました!)

本来は馬や牛のように人間に従順ではないけれども、人間もあやかりたいと思うような強さを持つ猪。
この猪たちをうまく統率することができれば、ものすごい力を発揮してトラクターが進んでいくように見えませんか?

幸運は耕耘から

「戦車」のカードは蟹座対応で月が支配していることは先述しましたが、占星術ではその蟹座で木星が大歓迎されます(品位「エグザルテーション」)。
つまり木星が意味する「豊かさや富」「繁栄」は、このカードの中で「理想とされている概念」のように思えるのです。

そしてカードに描かれたトラクターは別名「耕耘機」とも呼ばれており、面白いことに、石井ゆかりさんもご著書の一部で「木星」がやってくる期間を「耕耘期」と述べられています。

木星のくる時期は、私に言わせれば「幸運期」ではなく「耕耘期」、つまり、自分という畑がざくざくと耕されて、新しい可能性をセットされる時期、ということのようです。(中略)木星は、12年に一度の幸運を持ってきてくれる星ではありません。そうではなく、12年をかけて育て上げるための幸運の種を、土にまいていってくれるのです。

石井ゆかり『石井ゆかりの星占い教室のノート』実業之日本社.p.95

ウェイト版で描かれている戦車にヘルメス(水星)の象徴である翼は、こちらでは少し変えて「5法王」で法王(ゼウス)が持っていた杖の飾り(ワシ=ゼウスのシンボル)として描いてます。
ゼウスは占星術では木星であり、ヘルメスの父です。
「法王」で説かれたゼウスの教えが行き渡り、トラクターの男性がその教えに従いつつ自らの行動により実践していく段階になっているのです。

このように、「戦車」のカードは、「幸運(耕耘)期がやってきたら、迷わずゴリゴリと土地を耕していこう!そうすれば豊かな実りを手にすることができるよ!」と力強く背中を押してくれるカードなのです。


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