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4「皇帝」・5「法王」は二つの男性原理

「皇帝」「法王」のカードについて先日X(Twitter)でポストしたスレッドを、加筆編集して再度こちらでまとめました。

4「 皇帝」のカード

皇帝の手には「農耕」と「時」の王たる証である、黄金の鎌と黄金の砂時計。

4 皇帝

「皇帝」は牡羊座・火星対応のカードです。
椅子には牡羊の頭の装飾が4つ。
4の数字は、安定を表します。

皇帝は前回の豊かな土地で暮らしていた女帝と異なり、切り立った山を背にし、草一本生えていないような土地にいるようです。
我が身を律するためか、手に持つ鎌の刃の先は頭上に向いています。
逆位置になると、この刃はますます緊張感を帯びてきますね。

皇帝の左後ろには、かすかに川も。
この貴重な水源は皆のために皇帝に守られているようにも、もしくは皇帝にしか使用が許されていないようにも見えます。

刃の先の王冠には法王が治める、または統一しようとする土地の豊穣を表すブドウ柄の装飾が施されています。
そして、「魔術師」のカードでも描いたレムニスケート∞も。

占星術の品位

「牡羊座」「火星」の対応カードとなる「皇帝」に土星先生を配して見ると、結果的には占星術で扱われる品位(惑星の力の発揮のしやすさを見る)が入り混じった状態になったようで面白く感じました。

土星は火星が支配する牡羊座では「フォール」と呼ばれ、土星は居心地が悪い状態になります。
勢いや始まりを表す牡羊座では、土星先生が持つ安定感や継続をうまく働かすのはなかなか困難になるのです。

一方、土星が支配する山羊座では、牡羊座を支配する火星が「エグザルテーション」となり、存分に火星らしい力をふるうことを推奨されます。
そのため、火星の情熱的な力や他を排除する技を、山羊座が表す「実用的・組織的」に集中して発揮できるようになります。

王たる者とは「孤独に耐えながら土地を守ることに意欲を注ぐ」のか、「傍若無人に権威を振りかざし自らの利だけを貪る」のか。

個人的には、「皇帝」のカードが持つ問いを、品位の交錯がわかりやすく投げかけてくれたように思えました。

それにしても荒れた土地がよく似合う、きりっとした表情の土星先生。
やはり寒い冬の山羊座や水瓶座を支配する神ですね。

5「 法王」のカード

5  法王

5「法王」は、牡牛座・金星対応のカードです。
息子たち(アポロン・ヘルメス)に生命や宇宙の神秘を諭すゼウスのイメージで描きました。

2枚のカードはどちらも男性原理を象徴しますが、皇帝は「物質的な」、法王は「精神的な」達成を目指します。

皇帝が持つ鎌の刃は地に向いていましたが、法王が左手に持つ笏の鷲は天に向いて羽ばたこうとしています。
地を治めるべく独り自らを律するか、天の慈悲を三位一体(親子)で降ろそうとするのか。
方向性は異なる2つのカードですが、実現のために秩序を重んじるあたり法王にも皇帝のような土星味があるように思えます。

既出の2「女教皇」のカードでは、雲上の神殿でこの世の真理を女教皇がひっそり隠し持っていました。
今度は、地上の神殿で(現実的に)法王が真理を受け継ぎ布教しようとしています。
女教皇がプラトンが説いた理想的な世界「イデア」を知る存在ならば、法王はイデアの「影」を地上で再現しようとする存在なのかもしれません。

威厳あふれる姿で(シリーズのテーマである)ブドウの柄が刻まれた椅子に座り、法王は右手に黄金の袋を掲げています。
豊穣を表すザクロにも似た形のこの袋には、この物語のカギとなる「豊かさ」の種や秘密が入っています。
ただし、それは女教皇が持つ「観念的」な秘密よりも、形を伴う「実体的」な秘密です。

うやうやしくゼウスの教えを聞いているのは、左右対称のヘルメスとアポロン。
空を飛ぶ鳥の羽をモチーフにした「翼のヘルメット」、地上に育つ樹木から生まれた「月桂冠」をそれぞれ身につけて、二元論の一つである天と地を表しています。

黄金となったそれらのモチーフを両方持つことで、法王は彼らより上位の立場、両者に調和をもたらそうとする存在になります。
三位一体(父と子と聖霊)を説くキリスト教において、法王はPapa「パーパ」とも呼ばれますが、このカードでは文字通り「パパ」ヘルメスとアポロンの父=ゼウスともなっています。

さて、法王を通じて、いよいよ地上に神の意志が降り立ってきそうな段階になりました。
次は出会いや選択を表す「恋人」のカードになります。
「年内には描きあげたい!」との気持ちはあるのですが、どうなることやら。


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