1 魔術師 ー 創造(解説あれこれ)
前回の記事「魔術師」のカードについての続きです。
無限を表すレムニスケート∞を探してくださった方、ありがとうございました!
「魔術師」が表すもの
最初のカード「愚者」は、ティタノマキアで敗北し息子ゼウスに追い出され、行先も目的もわからず気の向くままに旅しているサトゥルヌスの姿でした。
この次のカード「魔術師」は、サトゥルヌスは新天地(ローマ?)で新たな世界を創造しようとしています。
「世界が変容する瞬間に立ち会う」ような期待感と緊張感のあるシーン(を描いたつもり)です。
ウェイト版では魔術師のインスピレーションに無限の可能性を与えるかのように頭上に描かれていたレムニスケート∞ですが、このタロットでは形を変えサトゥルヌスの手の中に。
これからどこまで伸びるのか、どんな花が咲くのか、「芽」が持つ変化の可能性は無限大です。
ウェイト版と同じく、四大エレメントの一つである「火」(情熱や生命のエネルギー)は枝で表されています。
一度切り倒された木から伸びた枝に芽吹いた葉は、生と死の循環です。「芽」自身が持つ可能性だけでなく、長い時をかけて命をつないでいく生命の営みも無限だと思うのです。
天の理(ことわり)と豊かな大地の恵みの間、まだこの世に顔を出したばかりの芽が開くよう願いを込めて、サトゥルヌスは静かに集中し始まりのエネルギーを注ぎ込んでいます。
四大エレメント
サトゥルヌスの周りには、万物を創造するための道具(四大エレメント)も揃っています。
四大エレメントとは、「火」「地(土)」「風」「水」で表されるエネルギーです。
「火」は、先ほど述べたように「枝」。
「火」が表す高い精神性や情熱、行動なしには何も始めることはできません。
心や愛情のつながりのエネルギーである「水」は「桶」。
「愛情を注いだり愛を育てていくこと」が水やりにもたとえられますね。
水が干上がると大地がカラカラになるように、気持ちが満たされていないと心虚しくなってしまいます。
物質や安定のエネルギーである「地(土)」は「クルミ」。
「固い」殻を持つクルミは、占星術では土星が象徴する植物であり、生命活動の結果が形(物質)となった果実(種)です。
食用としては栄養が高く滋味豊か、木はウォールナットとして高級木材に。
実からとれる油は油絵の具の成分にもなるのだとか。
なんと実用的なんでしょう!まさに「地」のエネルギー。
クルミの中に「種(これから新たな命が始まる)」があることからも、サトゥルヌスの農耕の物語にピッタリに思えたのです。
他の象徴も面白いので以下ご紹介しますね。
さてさて、今回エレメントを象徴するものを描くにあたって一番困ったのが、「風」です。
ウェイト版では「剣(ソード)」として描かれます。
が、どうしても刃物はサトゥルヌスの鎌とかぶるんですよ…..
まさに思考や情報のエネルギーである「風」をフル回転させるかのように、農耕に関連する道具を調べまくりました。
今後小アルカナを描くことを考えるとデザイン面でも制限があるし、象徴的にも納得いくものはないかしら……。
そして、ようやくたどりついたのが「鋤(すき)」です。
(絵の形のものはピッチフォークという鋤の形らしい)
鋤で耕すことで新鮮な空気(風)を土に含ませたり、一度に大量の収穫物を持ち上げたりできる(「風」が表す知性から生まれた)農具です。
そして決め手となったのが、剣に手の届かない農民には武器の代わりにもなっていたということです。
ということで、「風」のエネルギーを表すアイテムとしての「鋤」、どうでしょう?
「鎌」が表すもの
最後に、このタロットならではのサトゥルヌスの「鎌」についてです。
ここでは、天と地のエネルギーをつなげる役割として描いています。
天に向かった柄と大地に向いた刃、これは天のエネルギーが大地に降り立つことを意味しています。
この鎌には、芽の成長の邪魔になる雑草を刈ったり、実がなったときには収穫に使ったりといろいろな用途があります。
実践でも状況に応じて、いろいろな想像を膨らませていただけそうです。
また、農耕の収穫でなく時間も刈り取られることも表しています。
「全ては揃った。あとは自分の意思次第」
せっかく「魔術師」のカードのような状況にあるにも関わらずグズグズしていると、私たちに残された時間はサトゥルヌスにあっという間に刈り取られてしまうのかもしれませんね。
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