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喪失感新婚旅行 [11] 小樽 海上地獄倶楽部



小樽に到着したら、行こうと思っていたパン屋さんがあった。
そのパン屋さんは崖の上にあり、インスタグラムのアカウントは無く、Googleの情報だけが唯一の情報だった。
あまりGoogleの口コミとかが好きでは無いので、あまり見ずに行った。

本当に崖の上に建つパン屋さん。雪で覆われた階段を少し登って、木のドアを開けると、美味そうなパンの香りに幸せな気持ちになった。思わず深呼吸をしてしまうほどだ。
こんなロケーションにあるお店なのに、お客さんは絶えず来ていて、すごい。と思った。
私がもし、お店を開こうと物件や土地を探すとなったら、ある程度の集客が見込めるところを選ぶだろう。
しかしここは違くて、攻めっ攻めのこの場所に建っている。
でも、お客さんは絶えず来ている。
きっと、お店の人の色々なセンスが良過ぎて、どこでお店を開いてもお客さんが来てしまう、という事なんだろうと思った。なんて、かっこいいのだ。

パンを幾つか購入して、小樽のフェリー乗り場へ向かった。
フェリーで、翌朝にパンを食べようか、すぐ食べてしまおうか、考えるだけでもわくわくする。でも、誘惑に負けてすぐ食べてしまいそうだ。船内のレストランにも行きたいから、食事の前に食べるのはやめておこう。夜は晩酌をして…とっても楽しみだ。

フェリーに乗り込み、部屋の鍵を開けると、部屋の中は綺麗めなビジネスホテルのような空間だった。お風呂も、トイレもある。
なんて贅沢をしてしまっているのだ。贅沢をすることに対しての罪悪感?ありません。今回もGoToトラベルを使ってチケットを取ったので、お得に泊まれるのです。最高。

夫と船内を探検しつつ、晩酌で飲みたいお酒を購入。すごいわー!なんか、豪華客船じゃん!とその時はわくわくしていた。その時は…。

シャワーも浴びちゃおっと。と、出航と同じくらいの時間帯にシャワーを浴びていた。
…揺れる、揺れる。シャワールームの手すりに捕まりながらサッと済ませて、パジャマに着替えた。
それにしてもすごい揺れ、三半規管がおかしくなりそうだ。ジェットコースターのフワッの瞬間がありつつ、体が何回転もしているかのような、凄まじい感覚だった。NASAの訓練はこんな感じだろうか。
とっても気分が悪くなってきたので、横になれば楽になれるかなと思いベッドに入った。
んー。イマイチ。何をしても、どこにいても、気分が悪い。もしやこれは、船酔い?
まさかそんな、船は出航したばかり。長い時間、船を満喫しなければならないから、船酔いなんてしている場合じゃないんだ。そう言い聞かせても、もう無理な話で、私は撃沈した。
船内を散策してくると言っていた夫が部屋に戻ってくると、
「え、大丈夫?どうした?」
と、声をかけてきた。
「船酔いがヤバい。てか、この船ヤバい。もう、無理。」

「あら〜。酔い止め売ってるか聞いてくるね。」

「…ありがとう。助かります。」

そうしてこの日の夜は、夫が買ってきてくれた酔い止めを服用し、私は寝た。
レストランも行かず、晩酌もせず、ただただ寝るしかなかった。
夫も、船酔いしたので、夫婦共に酔い止めの睡眠効果により、朝までぐっすり寝た。

目が覚めると外は明るくなっていた。船の揺れも穏やかで、なんて気持ちの良い朝。
朝日が海を照らし、キラキラと輝いている。
レストラン、行けなかったな…昨日小樽で買ったパンを頬張る。お茶を飲む。
静かな朝、フェリーはまだ目的地へと向かっている。それにしても壮絶な夜だった。
けれど、夫が買ってきてくれた酔い止めのおかげで助かった。
この先の人生でフェリーに乗るなら、酔い止めは必須ということを学んだ。

海の上ではネットは繋がらないので、もちろん圏外。
ついついスマホを触るが「あ、繋がらないんだった。」と、ここでは何度も繰り返した。
それほど私はスマホに依存している。
とりあえず何もすることがないので夫とお喋りする。
一度群馬に帰ってすること、この旅の感想、次の旅で行きたいところ。
そうしているうちに下船案内が放送されて、次の目的地、新潟に到着した。

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