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喪失感新婚旅行 [7] 八戸港 北海道へのフェリー

朝、秋田市を出発して八戸港へ向かった。
八戸港からはフェリーに乗って、フェリーの中で一晩を過ごす。翌朝になれば、いよいよ北海道に到着する予定だ。
今回の旅の目的地にいよいよ到着する。群馬を出発してから数日かけてここまできたけれど、どの日も濃かったからあっという間だった。

一泊するフェリーのプランなら、GoToトラベルの利用が出来ると北海道に暮らす友人の富樫さんが教えてくれたので、私たちは迷わず利用した。
結果、かなりお得に北海道への切符を手に入れることが出来たし、地域共通クーポンという商品券も貰えたので、ちょうどこの時期にGoToトラベルを実施してもらえて本当にラッキーだ。

八戸港のフェリーターミナルで時間を潰して、夕方、乗船時間になったのでフェリーに乗り込んだ。
だだっ広い雑魚寝部屋には、私たち夫婦しかいなかった。
男女混合の雑魚寝部屋を選んでしまったので、知らんおっさんのいびきも聞かなければならないのかとか、とにかく色々な不安があったのだけど、その部屋が貸切状態だったから物凄く安心した。

出航前に、船内のお風呂で旅の疲れを癒すことにした。コンパクトな浴場の湯船は、波に揺られてゆらゆらと不思議な水面を描いていた。

「ごめんなさいねぇ、ロッカーを開けてくださいます?歳を取ると力が入りにくくてねぇ。」
小柄で華奢なおばあさんが、私に助けを求めてきた。

「このロッカー硬いですよね、ここだと手も届きにくいかもだから、下の方のロッカーにしますか?」
ロッカーの扉は硬い上に、背の低い人だと使いにくいくらい下の段以外は高い位置にあった。

「あら!そんなところにもあったのね!見えなかったわ〜。ありがとうね。」

「いえいえ、また困ったら言ってくださいね。」

「嬉しいわ。私はこれから札幌へ帰るのよ。あなたも道内に帰るの?」

「私は、富良野に遊びに行きます。観光です!それから石狩にお友達が暮らしているのでお世話になろうと思っています。」

「あら、そうなの。今はコロナで騒がしいけど、楽しんで下さいね。」

なんだか優しさに満ち溢れた気持ちになった。
ちゃぷんと湯船に浸かり、窓からは光に照らされて黒光りした海がキラキラと輝いているのが見えた。
私たちが暮らす群馬県には海が無い。だから、海の景色は貴重で、私は窓にべっとり張り付くような勢いで景色を目に焼き付けた。海、いいなぁ。
部屋に戻り、軽くご飯を食べて就寝した。
船の音がなんだか心地よく、思った以上に爆睡した。

翌朝、目が覚めると苫小牧港に到着していた。
初のフェリー移動は、船酔いせずに案外余裕じゃん、と自信がついた。

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