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雑記note16 最後に感じたのは

こんばんは。えりたです。
私は10月31日をもって
書店員を辞めました。
今日のnoteは
その日感じたこと、です。

■最後に感じたのは愛しさでした

10月31日、私は遅番シフトでした。
そのため、閉店後、
お客さまのいなくなった売り場を
ひとり歩き回る時間を持つことができました。

正直に言えば、
ここ何ヶ月かは精神的に追い込まれ
私が担当しているコミック棚は
ほぼメンテナンスできていませんでした。
それでも。
最後の日の閉店後、
静まり返った売り場で
棚を一つひとつ眺めていると
不意に涙が溢れてきたのです。
それと同時に
心の底から湧いてきたのは
「愛しい」という感情でした。

それは、コミック担当になって
初めて「棚は担当の表現である」
強く実感した時間でもありました。

この棚たちは私そのものなんだなぁ。
すごくすごく愛しいなぁ。

私は、最後の最後で
そのシンプルな事実に行き当たったのです。
コミック担当として独り立ちして一年。
遅すぎたのか、それとも、
最後にそれを知れてよかったのか、
正直、分かりません。
でも、私自身は
最後に感じたのが
棚への愛しさでよかったと思っています。
それだけで、
苦しかったこの一年が報われた
とても温かな気持ちで、
売り場を後にすることができたのですから。

■がんばって、がんばって、力尽きた

実は、店を辞めることを
私は同僚に
ほとんど伝えていませんでした。
どう伝えていいか、いつ伝えればいいか
よく分からなかったのです。

でも、さすがに
辞める2~3日前になって
尚、何も言わないのはまずかろうと
ぼちぼちと伝えていきました。

そしたら。

みんながそれぞれの感じ方で
私の退職を惜しみ、悲しみ、
同時に、
これまでの私のがんばりを
いたわり、ねぎらってくれたのです。
それは、とても幸せで救われた時間でした。

「あなたが担当してから
コミック棚がよくなった」
「めちゃくちゃがんばってたよね」

ワンオペコミックでしたし、
業務の多さにいつも時間が全然足りず
迷い、惑い、苦しむことのが多かったです。
失敗もたくさんしました。
みんなに迷惑をかけたことも
一度や二度ではありません。
でも、同僚たちは
懸命に棚に向き合う私の姿を
ちゃんと見ていてくれていたのです。

それらの言葉をもらって
辞めると決めてから
私は初めて泣きました。

・ ・ ・

同時に、
同僚たちと話しながら
私が店を辞めることにしたのは
端的に言えば「力尽きたから」だろうと
思い至ったのです。

ワンオペのコミック担当として。
初心者書店員として。
他店よりも業務の多い店の一員として。

私はその全部を何とか
高いレベルで成立させようと
がんばって、がんばって、がんばって。
失敗して。また、がんばって。
叱られて、注意されて、否定されて。
それでも、何とか立ち上がって。
がんばって。

でも、そうしている間に
自分でも気づかないうちに
私の体力はどんどん消耗し。
私の気力はどんどん摩耗し。
あるとき、とうとう、力尽きた。

正直に言えば、最後の日、
コミックの棚を見て回ったとき
改善点とか、修正点とかが
改めて目についたんです。
でもね。
私、それらを変えたり直したりするだけの
体力や気力がもう
全く湧いてこなかった。
それらは枯渇したと言ってもいいくらい
カラダのどこも動かすことができなかった。

これまでいろんなことを
気力だけで乗り切ってきた私が
そのとき、生まれて初めて
「もうがんばれない」って呟いたのです。
そして、多分、
それが全てなのだろうと思うのです。

■傷は深いけれど

先日、見たい本があり、
まったく違う系列の書店へ行きました。
ふわふわと棚をめぐっていたのですが
15分も経たないうちに
立ち眩みを起こしそうになり
吐き気が起きたのです。
それは最後の3か月、
仕事場で戦っていた症状と
まったく同じものでした。

あれほど好きだった書店へ
体調的に、メンタル的に
長くは居られないという事実

それは
それだけ私のメンタルの傷は深く
相当ずたずたになっているのだ

自覚するのに十分でした。

でも、生々流転、いつかきっと
この傷だって回復する。
時間はかかるだろうけれど
でも、必ず修復されて
楽しく書店へ行ける日が来る。

そんな希望をほのかに持ちつつ
苦しくも、楽しかった書店員ライフに
私は区切りをつけたのでした。

休憩のときいつも見てた景色

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