読書日記38 『書く力』
■詩が足りない
以前、2年ほど
Webライターをしていました。
特定の専門分野はなく、
美容情報や食事、栄養についての話、
恋愛のお悩み解決なサイトなど
さまざまな案件を掛け持ちするライターでした。
ついでに、同時期、
とあるオンラインサロンで
公式Twitterの中の人もしていました。
で。私ね。
それぞれのサイトの編集さん全員に
異口同音に言われた言葉があるんです。
それが
「あなたには詩が足りない」でした。
・ ・ ・
私は、今でも
聞く人に合わせて
何かを端的に説明することは
おそろしく得意です。
だって、私、元プロの国語講師ですもの。
「説明」が生業だったのですから
それは昔取った杵柄なわけです。
駄菓子菓子。
エンタメ系の文章、
たとえば、
読む人の想像の幅を広げ
ぐっと印象に残る、
そういった類の表現はマジで苦手なんです。
そして、それは
相当に強い劣等感になっています。
でも今、私は
書くことを生業にしようと奮闘している。
だったら、
苦手とか言ってる場合じゃないと自覚したとき
出合ったのがコチラの本でした。
『書く力 私たちはこうして文章を磨いた』
■池上彰/竹内政明
■朝日信書
■720円+tax
帯に「文章がどんどん書きたくなる
職人の技を大公開」とあります。
著者のお二人が
「どのようにして文章を磨いてきたのか。
テーマの決め方、構成方法、
稚拙な表現からの脱出方法などを、
惜しみなく披露する」
とても具体的で実践的な指南満載の対談本です。
■『書く力』について
この本は
文章を不特定多数の人に向けて
書き続けているお二人が
日々の文筆を支える習慣や視点までも含め
心構えや表現、構成の仕方などを
惜しげもなく語り尽くしたものです。
そのなかで、いちばん大切なのは
このことだとお二人はおっしゃいます。
つまり。
格好つけたり、
自分を大きく見せたりしようとすると、
大概の場合、失敗する。
そうではなくて、
自分の書けることを
自分の言葉で誠実に書いていくことが
自分の魅力を培っていく道なのだと。
他ならぬお二人の、この言葉は
きっちり自分の芯に言い聞かせました。
だって、コレ、まじでやらかしがちですもの(涙)
そして、さらに。
対談のあちこちに
ガーンと腹に響く内容が
しれっと語られています。
曰く。
■言葉への関心は、文章への関心へつながる
■自分は何を主張したいのか、何を譲れないのか
■その文章を良い文章と思った理由を分析する
■「誰に読んでもらうものか」を常に意識する
何かを書こうとするとき
これらはふんわりと頭にあります。
でも、それは
あくまで「ふんわりと」であり、
文章に結びつく手前のところで
思考が止まっていることは否めません。
少なくとも、私はそうです。
書き慣れてくると
何かが足りないという自覚は
いつもあります。
でも、書き慣れてしまったがゆえに
それが具体的に何なのかが見えない。
そんなとき、本書を読むと
不足を感じる部分が
具体的な姿を持って見えてきますし
さらに、どうすればそれを解消できるのか
糸口さえ、掴むことができるのです。
■たとえば、書き写す
さて、最初に書いたように
私の最大の問題点は
「詩が足りないこと」です。
つまり、
説明には向いてるけど
エンタメ要素の全くない点が
乗り越えるべき課題であると。
んじゃ、どうするか。
この本にあった解決策は
「名文を書き写す」でした。
たしかに、本を読んでいると
知らず知らずのうちに
その本に引っ張られた表現を
用いていることがあります。
それを自覚的に行おうというのが
本書の提示する方法なのです。
じゃあ、やってみようと
以前、「詩が足りない」と言われた時
おススメされた詩集が
積読山から発掘されましたので(え)
それを書き写すことにしました。
始めたばかりなので
これがどう影響してくるかは
まだ分かりませんが。
それでも、久しぶりにする
「書き写す」作業は
純粋に、とても楽しい。
『枕草子』や『論語』もいいなと
今後、書き写す候補に入れていたりもします。
■まとめ
お茶目な毒舌もありつつ語られる
具体的で実践的な方法ももちろんですが、
それだけでなく、
お二人のことばの端々、行間から学ぶものも
とても多い本でした。
文章を書き慣れてきた人にこそ
読んでほしい一冊だと思います。
記事をお読みいただき、ありがとうございます。いただいたサポートはがっつり書籍代です!これからもたくさん読みたいです!よろしくお願いいたします!