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七夕の日の願い

 七夕の日、大体毎年天気が悪い。
 今年も雨だ。
 雨が降っていたりすると、職場の皆はこんな事を呟く。
「今年も織姫と彦星は会えないね~」
 と。
 なんで? 雨が降っているのは地球上の話でしょと言いたいが、私はぐっと堪える。
 雨が降っているから逢えないという考えは、地球上の私達の視点でしか物を見ていなく、他人事だからそんなバッドエンディングが作れるのだ。
 空には雲が覆っている。覆っているから、天の川が見えないだけのことで、宇宙から見れば、そこには綺麗な橋がかかっている。それはそれは、息をする事も忘れるぐらいの美しくて幻想的な天の川には、ちゃんと橋が架かっているのだ。
 雨で橋が渡れない? ならばそんなもの、魔法でも使って渡れば良いではないか。愛し合っているのなら、それぐらいの異世界的根性は彼らにあるだろうと私は信じる。
 それ以下の愛ならば、地球上の皆はガッカリしてしまうことだろう。少なくとも私はドン引きをする。
 織姫と彦星、ぜひ、私たち地球人に真実の奇跡の愛を見せて欲しい。
 というわけで、織姫と彦星は、今日も確実に逢えている。
 雨が降っているから今年も逢えないだなんて、そんな悲しい物語は、私の中ではありえないのだ。
 
 今年も、織姫と彦星は久々の再会に、心臓が口から飛び出るほどのドキドキ感と幸せを感じている事だろう。

「織姫、久しぶり。元気してた?」
「ええ、元気よ。毎日毎日あなたの事を考えない日はなかったわ」
「僕もだよ。会えて幸せだ!」
 
 という会話をしているはず。
 
 今日が終わろうとする時も、
「僕は帰らない。また1年後にしか逢えないだなんて、耐えられない!」
「でも、神様に叱られるわ・・・」
「そんなことはどうでもいい! 叱られたって、ボコされたって、この愛は永遠だ!」
「彦星ったら、男前。私、うれしい!」
 
 という会話をしているはずだ。
 
 そんな妄想をしながら、私は娘と一緒に和紙折り紙で作った短冊に願い事を書いている。

 神様、私の妄想で、織姫と彦星が逢えていますようにという気持ちが強すぎたけど、それは私の願い事じゃありません。彼らに対するただの私の応援です。
 願い事2つは駄目だと、私の真の願いを脚下しないでくださいね。 
 あ、今のも願い事じゃないですよ。
 神様、私の真の願い事は、短冊を見てくださいね。

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