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ジヴェルニーの食卓 原田マハ/読書感想文

印象派の巨匠4人の美の謎を色鮮やかに描き出した短編集。
モネ、マティス、ドガ、セザンヌという4人の印象派の巨匠たちの、創作の秘密と人生を鮮やかに切り取った短編集。ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)
語り手は画家の身近にいた女性たち。美術史や評伝から見えてこない画家の素顔や心情が、キュレーターの経験がある作家の想像力によって色鮮やかによみがえる。

気になっていた原田マハさんの作品。絵画を見るのが好きで、特にモネやゴッホなど印象派の作家が大好きな私。読む前は私のもともと持っている彼らのイメージが覆ったら嫌だだなぁと思いつつも、口コミを見ているととても素敵な感想が多かったので読んでみました。
読了後は本当に読んでよかったなぁって思える作品でした。もちろんフィクションなのだけど、モネやマティスなどこの作品に出てくる作家はもちろん、語り手の作家の周りの人たちも含めて実際にこんなふうに時が流れていたら素敵だなと思える作品でした。
私、涙もろいので小説でも映画でもよく泣いてしまうんですが、この「ジヴェルニーの食卓」は目の奥全体がじわっと熱くなって今にも涙が溢れそうになるんですが、すんでのところで止まるっていのを何度も繰り返して、そういう読書って初めての経験だったので、とっても不思議でした。
原田さんの文章の表現がとっても美しいなと思ったのですが、登場人物の会話とすごくバランスがよくて、文章全ての世界観が本当に大好きでした。
まだまだたくさん原田さんの作品があるので、これからもちょっとずつ読んでいこうかと思います。

余談ですが、読了後に上野で開催中のロンドン・ナショナルギャラリー展に行ってきました。この物語に出てくる作家たちの絵もたくさん飾られていたのですが、いつも鑑賞するときとはちょっと違った、作家たちの人生観だったり生活感だったりを感じることができて作家自身との距離感を縮めて絵を観ることができました。原田さんはキューレーターだったということもあって、彼女の本を読むことで絵画をさらに深く鑑賞できる、物語を書く力があるんだなと思いました。
こちらの展示は東京で開催後、大阪でも開催予定なので、お近くでタイミングが合えばぜひです。


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