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とろ日記(こういう日に限って②)


 こういう日に限って。


電車が遅れる。
鼻毛が気になる。
化粧が落ちる。
汗が吹き出して止まらない。



なぜだ。なぜなんだ人生。


↓前半




 トイレで身だしなみを整え、イベント会場へ歩く。意外と遠い。目的地までの時間が掛かるほど、緊張って増す気がする。


お店に到着。イベント会場は本屋兼喫茶店である。ガラス扉を開けると、スタッフのお姉さんがにこやかに迎えてくれた。イベント参加者だと告げ、飲み物を注文してから2階の階段を上がる。


階段を上り終え、「いざ」と意を決する。
イベント開始10分前くらいに着いたと思うが、この時間は喫茶休憩のお客さんも5,6人いた。
どの人がイベント参加者なんだろう、とドキドキしながら主催者へ声を掛け、席に座った。
他の参加者の方が声を掛けてくれて、軽く準備をしながら世間話をした。ドギマギ。


この日は急病で欠席者があり、4人でのイベントだった。アットホームな雰囲気でほっとする。
軽く自己紹介を、ということで、名前や何と呼ばれたいか。今日は何をしていたかを順番に話した。わたしは一番最後で、何を言おうか考える時間があったはずなのに、少しテンパってしまった。わたしは普段テンションが低いのに、緊張すると手振りが大きくなったり、ぶりっ子みたいな話し方になっている気がする。あ〜やってしまったかも!と思いつつも、緊張しているから直せない。落ち着けー落ち着けー。


そのあと、それぞれが書いたものを読んだ。部屋の各所に貼られた文章を読み、それから思ったことや感じたことを話し合った。


「なんか楽しいかも」


会が進むにつれて、そう思った。
引き続き緊張はしていたが、誰かが書いたもの・自分が書いたものについて話し合うのは興味深い。当たり前に、それぞれ考えていること、感じることが違う。そういう見方があるのかと思う。
主催者の方が話をふってスムーズに進めてくれるのも、参加者の方々が話し上手、聞き上手なのも心地良い。
言葉にすることで、自分がどう思っているのかが、どんどん分かった。
気持ちを表に出すのはこわかったけれど、人の考えを否定・肯定ではなく、そっと受け止めてもらえている感覚があって、嬉しかった。



そんな中、後半から鼻がムズムズしだした。この感覚は、もしかして……。鼻毛……?
鼻毛の先端が、ちょこちょこ触れている感じ。出たり、入ったり……。
鏡を見るわけにもいかないし、トイレ休憩に行く時間も惜しいくらいだったから、わたしは何度も鼻をこすったり、顔周りに手を添えたりして誤魔化そうとした。
あぁ。なんで今日に限って鼻毛?
全身全霊を傾けて会話をしたかったのに。鼻毛に少しでも気を取られている自分がもったいない。
せっかくのご縁で出会った参加者の方々にも「この人鼻毛出てるじゃん」と思われたくなかった。
大事なときこそ、鼻の入念な手入れをしようと誓った。



イベントもあっという間に終わり、それではと解散した。
終わってからも、わたしは興奮状態。
やり遂げた達成感と、「楽しかった」と感じていることへの嬉しさと驚き。ほとぼりが冷めてほしいような、ほしくないようなと思いながら駅まで歩いた。


が、駅は暑かった。
夏のもわっとしたプラットホームの暑さが、興奮したわたしの体熱と相まって大量発汗させてくる。汗で化粧が落ちる。いやだ〜やめて〜。ただでさえ、わたしの鼻周りは赤くなっているのだ。
(※鼻をこすり過ぎたため化粧が落ち、鼻周りが赤くなっている)


周りの人は涼しげで、マスクをしている人もいるのに。ひとり汗だくだくのわたしは、終わりまでぐだぐだかよ!っとツッコミを入れた。



こういう日に限って。


電車が遅れる。
鼻毛が気になる。
化粧が落ちる。
汗が吹き出して止まらない。


なぜだ。なぜなんだ人生。



だからこそ、人生はおもしろいし、こういう日は記憶に残る1日になる。



自分の発言が誰かを傷つけたり、嫌な気持ちにさせていないか不安にもなったが、書いている人に会えたことは、想像を遥かに超えて楽しく、満たされるものだった。このイベントにまた参加してみたい、と思えたことがなにより嬉しい。




もしサポートいただけたら、部屋の中でものすごく喜びます。やったーって声に出します。電車賃かおやつ代にさせていただきます。