趣味【ショートショート・Twitter300字ss企画】

 ヒーローも楽じゃない。スポンサーがいないから衣装はお手製だし、助けた相手から交通費をもらうわけにもいかない。それに、勝手にやっている訳なので当然、クレームもくる。
「誰が救ってくれって言った」
 今しがた、命を救った男が呟く。その視線は私を通り越し、彼を追い詰めた何者かに向けられている。暗い、悲しい目に、私は答える。
「言われてませんよ、誰にも」
「そのあとの世話もできない癖に」
 もう何度も言われてきたことだ。だから私も何度も言う。同じ言葉を、何度だって。
「救いたいから救ってるだけです。あなたが、やりたいようにやるのと同じようにね。何度だって、私は救いますよ。必ずね」
 男の肩が震えた。


 Twitter300字ss企画参加作品。
 お題は「救う」でした。

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