チューリップ(パーロット咲き)

 相手に捧げる愛、献身的に支える愛、盲目的に尽くす愛、エトセトラ。愛には色んなバリエーションがある。
 私の愛は、一途な愛。好きになったらもう、その人のことしか目に入らない。そして、彼の愛はさしずめ、突き放す愛だろう。
「いや……マジでお前、気持ち悪いんだって。もう顔見せんなよ」
 そんなことを言いながら私から距離を取ろうとする彼だけれど、その言葉の裏に、私への思いが隠されていることは、よく分かっている。私が贈った手作りお菓子や、原稿用紙に換算すると30枚程度になったメッセージなどの画像が彼のスマホに入っているのを、私は知っている。それを告げたときの彼の表情を思い出すと、今でもぞくぞくしてしまう。
「あれはストーカーの証拠画像として……いや、それよりお前……スマホのロック、どうやって解除したんだよ」
 ストーカー、なんてとんでもない。私はただ、彼への愛を大切にしているだけだ。愛する人の言動は逐一、目で追ってしまうもの。スマホのパスコードなんて、自然に分かってしまうものの筆頭だと思う。彼が何回コードを変えても、私には分かる。だって、愛しているんだもの。
 彼の冷たい言動も、ひとつの愛の表現なのだ。苦しげに寄せられた眉根も、嫌悪に歪む唇も、たらりと垂れる冷や汗も、全て私への愛の裏返し。どんなに酷い言葉を投げつけられても、それが分かっているから全然平気。
 さあ、今日は彼に、どんなアプローチをしようか。


 花言葉「愛の表現」。

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