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ていの創作小説

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自分の創作小説をまとめています。
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2021年4月の記事一覧

キングサリ(誕生花ss)

 呪いの魔女は、美しい人だった。  依頼を受けて人を呪い、報酬を得る、そんな恐ろしいこと…

てい
3年前

カキツバタ(誕生花ss)

「国民の幸福指数」が低下し続ける我が国で、政府が全国民に支給し始めたのは、幸福になる薬だ…

てい
3年前
3

ユスラウメ(誕生花ss)

 ひたすら上を目指して登っていた。体を巡る赤い液体が、そうするように叫ぶのだ。  上を目…

てい
3年前
2

アジュガ(誕生花ss)

 帰宅してすぐ、居間にある大きな鏡の前へ行く。手洗いうがい、着替えをする暇も惜しんで、家…

てい
3年前
4

コデマリ(誕生花ss)

 春という季節は、なぜこうも駆け足で過ぎ去ってしまうのか。そんなことをぼんやり思いながら…

てい
3年前
1

ニワゼキショウ(誕生花ss)

 カメラを構えると、息子たちは嫌そうな表情を作りながらも楽しげな顔を向けてくれる。 「パ…

てい
3年前
1

アスター(誕生花ss)

 未だ生まれもせぬ身ではあれ、この世のことにつきまして、凡そのことは存じております。そもそも生命というものは、母胎の、卵の、種の中から追い出される前に、己の辿る運命を熟知しているものなのです。遺伝子と呼ばれるらしいものが、我々に予め、無に帰すまでの予定を耳打ちしてくるのです。  それによりますと、私はある冬の寒い夜に、この居心地の良い小さな海から放り出され、それほど裕福ではない、かと言って食うに困ることもない、ごく普通の家庭で、ごく普通に育てられます。おとなしく、ひとり遊びが

ミヤコワスレ(誕生花ss)

 いくつもの駅を通ってきた。  気がつけば揺られていた列車には、それぞれのタイミングで人…

てい
3年前
2

ストロベリーキャンドル(誕生花ss)

 美しい少女が、体を軋ませながら、私に向かって胸を開く。それはまったく、言葉通りに。  …

てい
3年前
1

アザミ(誕生花ss)

 アザミ様に触れてはいけない。  私たち村の子どもは、大人からそう言い渡されて育つ。アザ…

てい
3年前

ムラサキツメクサ(誕生花ss)

 同僚のアカツメさんは勤勉で、朝から眠い目をこすりダラダラ仕事を始める俺とは対照的にテキ…

てい
3年前
2

オステオスペルマム(誕生花ss)

 この一年、食生活には細心の注意を払い、適度な運動を欠かさず、良質の睡眠を取れるように努…

てい
3年前
2

シレネ・ペンデュラ(誕生花ss)

 彼女と目があったら、それが最後。死ぬまでその側から離れることはできず、他のどんな人間に…

てい
3年前
1

キンギョソウ(誕生花ss)

「大昔に生きていた『ヒト』という種族は、私たちみたいな外殻も多足も、持ってなかったって本当ですかー?」  アンテが、無数に枝分かれした多足をうねらせながら、先生に尋ねた。それは私も気になっていた。教室中の四眼が、壇上の先生を見つめる。平べったくて直立不動の先生は、合成音声で答える。 《推測では、イェス》 「わあ、本当にそうなんだ!」  アンテが歓声を上げ、私たちも顔を見合わせる。もう遥か昔に絶滅したと言われるその生き物は、ほんの僅かな時期に高度な文明を発達させ、瞬く間に滅び去