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パリ1日1話〜3 すずらんの話

駅前や花屋ですずらんの花がならぶようになったら、すずらんの日が近くなっているということ。由来にはいろんな説があるみたいですが、あまりそういうのには興味がないので、おそらく多くのフランス人がそうしているように「しあわせのしるし」としてのすずらんを買い求めます。

すずらんの日は5月1日で、国民の休日である「労働者の日」なので、わたしの彼はすずらんは「おつかれさまのプレゼント」だと思っていたのだそうです。まあ、そうかもしれない。でも、どうせなら「しあわせ」のほうがいい。

本来は5月1日に買うのですが、彼がその日は出張でいないため、すこし早めの金曜日に買うことにしました。花の値段というものはほんとうに店によって違って、うちの近所にも花屋さんがたくさんあるのでよく同じ種類の花の値段を比べて確認したりしています。すずらんの花もまさにピンキリで、たとえば道端で、おそらく不法で販売しているおじさんはすずらん数本をブーケのようにして「2ユーロ、2ユーロだよ〜」と声をあげているし、チェーンのスーパーでは1本を2ユーロで売っているし。

今年はどこで買おうかと、ふらふらといくつかの店をまわって家に近づいたところ、まだ寒いところに小糠雨が降ってきて、最寄りのスーパーで買うのもなんだか味気ないので、その2軒となりの小さな、ちょっとさえない花屋で買うことにしました。ちなみにこの店は、わたしと彼の間では「ねこの店」と呼ばれていて、それはずいぶん大人しくておおきな茶トラの看板猫がいたからなのですが、最近いなくなってしまいました。パリの店にありがちな、すこし暗くて、入ったら買わないといけない雰囲気に負け、値段も聞かずにすずらん1本をレジに持っていきましたが、そこではなんと3ユーロで、なんだかとても微妙な気持ちになりました。こんなの高いから買わない、といえない気の弱さ。店のおじいさんは、小さな花を軽く包んで、ていねいに小さなシールを貼ってくれます。「わたしはしあわせを運びます」と書いてあるシール。やっぱり、みんなしあわせになりたい。

まだ雨は降っていたものの、すこし気分がよくなって、パーカーのフードをぬいで家路を急ぎます。うれしそうな顔をしていたからか、後ろから来ていたおじさんに声をかけられました。「すずらんはプレゼント?やさしいね〜」、わたしは「はい、そうです」と答えましたが、おじさんは「でも、5月1日は月曜だからね、まだ早いよ!」といって、颯爽と去っていきました。そう、フランス人は期日前になにかをするのが嫌い。誕生日を前祝いなんてしようものなら、悪魔に呪われると言わんばかりのレベルで怒られます。でも、「しあわせのしるし」なのでね。すずらんくらいは大目にみてくださいね、見知らぬおじさん。

写真は3ユーロの高級すずらん。やっぱりかわいい。でも香りは力強いですね、すずらんて。

それでは、パリ1日1話、きょうはここまで。





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