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春眠暁が本当に覚えられない


眠い。
ここ最近、本当に眠い。

「春眠暁を覚えず」とはよく言ったものだ。
まさにそれ!ホンマそれ!と思う。

春眠不覚暁(しゅんみんあかつきをおぼえず)
処処聞啼鳥(しょしょていちょうをきく)
夜来風雨声(やらいふううのこえ)
花落知多少(はなおつることしるたしょう)

私としては、孟浩然よ!よくぞ言ってくれた!てな感じで、ここぞとばかりにこの漢詩を乱用している。
人生で何回使ったか分からないほどだ。
きっと孟浩然も、そんな使われ方をされるのは不本意だろう。
生きている時代が違っていてよかった。
偶然にも街中で出くわしたら、まあまあな勢いで怒られそうだ。
サプライズ的に「いつもありがとう!」みたいな感じで、LINEギフトのスタバチケットくらい送っておいた方がいいかもしれない。

いつも起きたい時間に目覚ましをセットする。これは絶対だ。NO目覚ましなんてあり得ない。NO目覚まし・NOライフだ。
にも関わらず、セットした時間には確実に起きられない。
42年の経験から、私は敢えて二度寝を想定して目覚ましをセットする。この時間に起きられたらマジ理想的!を1回、二度寝想定してその15分後に1回、多分この時間がリアルに起きる時間だろうなを1回、その15分後に1回、トドメにこれで起きんかったら本当にヤバいっていう、ギリギリ間に合う時間で1回。と、ざっと5回の目覚ましをセットする。

で、結局いつ起きるかといえば、うっすらお気づきの通り、最後の切り札ギリギリ間に合う時間だ。これを寝過ごしたら、本当にヤバい!という時間に設定しているので、まあ確実に起きれる。
ただ「あーもう起きなアカンやん・・」というテンションではある。
渋々。しゃーなし。嫌々。起きざるを得ない感満載だ。

誤解無きよう言っておくと、実は私は早起きしたい人間なのである。朝日をあびて、植木に水をやり、何ならヨガでもやって、そのあと野菜多めの食事を摂取するような、長谷川潤スタイルで生活をしたいのだ。
だが、理想と現実は程遠い。Instagramをフォローしていても同じようにはならず、そんな現実にがっかりすることも少なくない。

毎日の寝起きをそんなふうにダラダラと過ごしているからなのか何なのか、今年は知らぬ間に春と言われる季節が来て、知らぬ間に桜が満開になっていた。場所によってはすでに葉桜になっている。
春は大好きな季節なのに、なんてこった。

まさに、 
"花落知多少(はなおつることしるたしょう)"
だ。

桜の見頃を逃し、春を存分に満喫することなく日々が過ぎようとしている。
田舎育ちで野山を駆けまわっていた私としては、残念な限りだ。

春は田んぼの水をかき混ぜてオタマジャクシと遊び、シロツメクサで花冠を編み、桜の木によじ登り人工的桜吹雪をまき散らしていた私。
夏はホタルを捕まえ、その翌日に命のはかなさを知り、夏祭りの夜店で器用さを炸裂させてGETした金魚に見惚れ、あっという間に面倒臭くなって水換えを疎かにした結果、コケと金魚のフンでみるみる水槽が沼のようになり、何が遊泳しているのか全く分からなくなった頃に、ようやく重い腰をあげて水換えをしたら、これは本当にあの障子紙で掬った可愛らしい金魚なのかと思うほど変化を遂げた、大きな朱色の魚が沼の中から出てきて生命の逞しさを実感していた私。
秋になるとただよう金木犀の香りが大好きだったり、道端に落ちている栗のイガを友達とぶつけ合い、あわよくば食べられそうな栗の実がないか探して、通学路に枝がはみ出している他人の家のナツメを勝手に収穫して食べながら帰ったりしていた私。
そして冬は、とかく雪の降る地域だったので、通学路の途中で、これまた存じ上げない他人の家の軒下に出来上がった巨大氷柱でスターウォーズさながら戦闘ごっこをしたり、土の下にできる霜柱を踏む感触や真っ赤な南天の実をつぶす事に病みつきになったりしていた私。

ざっと思いだすだけでも、こんなに春夏秋冬を余すことなく楽しんでいた私が、今となっては惰眠を優先して、木によじ登り人工的桜吹雪をまき散らすチャンスを逃してしまっている。
もし満開の桜にテンションあがり、眠気を振り払ってこれをやったら、秒で通報されそうな気もするが。そして、あの頃桜の木の下で喜んでくれた友達にも、他人のフリを決め込まれそうな気がするが。
シロツメクサの花冠は、”ピーターパン症候群の痛い人”と思われて友達と距離ができることこそあれ、さすがに通報はされないだろう。


どうすれば、長谷川潤スタイルで朝の時間を有意義に過ごせるのか。
課題は多い気がするが、もっと四季折々を味わって生きていきたいと思う所存なのである。


せめてもの救いとして、孟浩然もアラーム5回派で、最後の目覚ましで嫌々起床するタイプの人であってくれ。と願う。


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