Simon & GarfunkelのEl Condor Pasa (If I Could)についての雑感

アメリカのフォークロックデュオとして知られるSimon & Garfunkelは、アルバムBridge over Troubled Water(邦題『明日に架ける橋』)を1970年の一月にリリースした。このアルバムは彼らの最後のスタジオアルバムとなり、ビルボードなどの複数のチャートで1位を取っている。

アルバムのタイトルともなっている楽曲Bridge over Troubled Waterは、アルバムの1トラック目に収録されているが、この曲について言われていることがある。それは、19世紀のスピリチュアルOh Mary Don’t You WeepのSwan Silvertonesによるアレンジの影響を受けたということである。Bridge over Troubled Waterでは“Like a bridge over troubled water / I will lay me down”と歌われているが、これはSwan Silvertones版のOh Mary Don’t You Weepの“I’ll be your bridge over deep water if you trust in my name Mary”という歌詞にインスパイアされてできたことを示していると考えられる。

さて、このアルバムBridge over Troubled Waterの2トラック目として、El Cóndor Pasa (If I Could)(邦題『コンドルは飛んでいく』)が収録されている。この曲はペルーのDaniel Alomía Roblesによって作曲されたものに、Paul Simonが英詞をつけたものである。その歌詞に“Yes, I would / If I could / I surely would”という一節があるが、これとメジャーなヴァージョン(例えば最初のレコーディングを行ったFisk Jubilee Singersなどの歌唱)のOh Mary Don’t You Weepにおける“Well if I could I surely would / Stand on the rock that Moses stood”という歌詞が酷似しているように見える。(なお、この箇所をSwan Silverstonesは“If I could right now (If I could), / I wanna tell you that I surely would now (Surely would)...Mmmm, / Put my foot on the rock children (Stand on the rock), / Stand on the rock where Moses stood one day (Moses stood)”と歌っている。)

Bridge over Troubled WaterとEl Cóndor Pasa (If I Could)は同じアルバムに収録されていることからもわかるように、録音はおよそ同時期であると考えられる。ただし、両楽曲の作詞が同時期であったのかといったことや、El Cóndor Pasa (If I Could)にOh Mary Don’t You Weepの歌詞が影響を与えたかは寡聞にして知らないが、関係があったとしてもおかしくないだろう。もしそうであるとすると、El Cóndor Pasa (If I Could)は少なくとも二つのルートを持つ楽曲ということになるだろう。