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[20] Filopappou Hill, Pikionis Paths and Pavilion|複数の作家

5年に1度の国際芸術祭ドクメンタのアテネ会場を見てきました。いくつか作品を紹介します。このFilloppapou Hillは作品が設置されている場所がわかりにくいうえに、その場所に到達するまで山登りかと思えるほどの苦労が必要です。でも頂上に達するとパルテノン神殿が同じ高さに見えます。アテネの街が360度一望できます。野生の亀もいます。時間と余裕があれば登っていただきたい丘、と作品たちです。


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documenta 14
Athens

Venue Number [20]|Filopappou Hill, Pikionis Paths and Pavilion
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Rebecca Belmore
Biinjiya'iing Onji (From inside, 2017)

大理石で作られた難民キャンプのテント。丘のてっぺんにある遺跡からパルテノン神殿の方角を向いて左に進む石畳の道(これはDimitris Pikionisという建築家とその生徒たちが作ったもの)を進むと右手に見えてきます。

「テント」という言葉から最近特に想像されるのは難民テントですが、この作品の形状は北米原住民(インディアン)のテントを模しています。主に持ち運びができる素材で作られるWigwamsと呼ばれるこのテントからは、原住民たちの移動、そしてなぜ移動するのかについて思いを馳せることができます。しかしFiloppapou Hillのテントは大理石で作られています。移動のイメージを剥奪しようとしているのか、固着させようとしているのか。その両方かもしれません。物理的に移動できるという可能性を大理石という素材で剥奪しつつ、「移動」という宿命のようなものを固定させる。悲しい(というのは簡単だな…)彫刻です。

Vivian Suter
Nisyros (2016)

Rebecca Belmoreの作品のある頂上から道を下ると教会があります。私が作品を見に訪れた時は結婚式が行われていました。教会のそばにある建物の中にVivian SuterとElisabeth Wildの作品が展示されています。屋外にさげられた数々の布たち、そしてそこに描かれた色やその流れ、見るからに自然の跡をそのまま描いたような作品たちがVivian Suterの作品です。

欧州生まれの両親を持つ彼女は、ブエノスアイレスに生まれたものの第二次世界大戦の終わりごろバーゼルに移り住みました。美術の中心ともいえるその場所ではなく、北米~中米に魅せられた彼女は2007年から母親と共に中米(おそらくグアテマラ)に移り住みました。ちなみに母親はElisabeth Wildです。つまり教会の展示は親子の展示です。

台風が去った後に地面に広がるうねり、洪水の跡。Vivian Suterは破壊力を持つ自然と寄り添うようにして作品を作ります。彼女が見せる荒々しくも儚げな色の流れは、同時に、政治が執拗に繰り返す現実とそれが持つ破滅を暗示しています。

さてその母親のElisabeth Wildについて。

Elisabeth Wild
Fantasias (2016–17)

ナチズムから逃れウィーンからアルゼンチンに移住したワイン商家の娘として育ったElizabeth。テキスタイルデザイナーとなり、繊維工場を営むパートナーと結ばれます。そしてVivian Suterが生まれました。バーゼルに戻った後はアンティークショップを営んでいましたが、グアテマラに移住。そこで、彼女たち親子は熱帯雨林の…自然の静寂さを手に入れますが、同時に自然災害や人間の残酷さに直面することになります。(麻薬カルテルの恐怖)

雑誌から光沢や煌びやかさを切り出しコラージュした作品をElisabeth Wildは展示しています。口紅の広告やインテリアや家具の広告をコラージュすることで、商業システムからその美しさを切り出し、新しいイメージを提示します。サイト本文にはMagpie Strategyと書いてあります。(カササギのようにとにかく)なんでも集めたがる人、おしゃべりな人、という意味がMagpieに込められています。とにかく集め集積し万華鏡のようにコラージュすることで、その図像たちが持つ特別な美しさだけでなく、Elizabetu自身が持つ輝きまで見せてくれるかのようです。

母Elizabethは欧州に生まれ、娘Vivianはアルゼンチンで生まれ、母はナチズムと自然災害と麻薬カルテルに直面し、娘は自然災害と麻薬カルテルに直面しました。母は商品システムから商品イメージを切り裂き再構築することでその中にある新しい美しさを提示し、娘は自然の脅威に寄り添いそれを描き出すことで人間の産物である政治の持つ破滅を提示しています。

静かな場所でひっそりと展示されているこの親子の作品は、様々な対話のきっかけとなりそうです。見た目の若々しさはElizabethの作品にありますが、込められた困難や困惑や葛藤や闘争の力強さはVivianの作品から伝わりました。家族における個人的な対話から、ありとあらゆる事実につながることができる、そういう意味で「家庭」に期待している私にとってとても重要な展示でした。

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