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『文章は「形」から読む ことばの魔術と出会うために』

子どもの頃、新学期に教科書が配られると、真っ先に読むのは国語の教科書だった。

新しい学年では、どんな作品に出会えるのだろうと、わくわくしながらページをめくった思い出がある。

文章を読むことが好きだったから、文学作品でも、そうでない説明文でもどちらでもよかった。

けれど、子どもながらに、文学作品のほうが説明文よりも奥が深い森のようなイメージで、どんな読み方をしてもいいような自由な感触を持っていた。

さらに、文学作品は書かれた時代の文化や背景、常識、習慣などを知らないとイメージがわかず、文章の世界に入れないから、他の教科の勉強も大事なんだなと、なんとなくだけど感じていた。
子どもだけど、勉強ってもしかしていろいろと繋がっている部分もあるのかなと思っていた。

「文学作品はもういい! 実社会で使われるような文章を読ませるべきだ!」

そんな声に押され、国語教育の大改造が始まった。文科省が重視したのは実用性。文学はこの枠には入らないという。

しかし、この考え方は正しいのか?

文章を読む際に大事なのはことばの「形」を見極める力だと著者は言う。
そこを鍛えるトレーニングをしたい。
その助けになるのが文学作品を読む技術なのだ。
本書では契約書、料理本のレシピ、広告、ワクチン接種の注意書き、小説、詩など幅広い実例を用いて「形」を読む方法を指南する。
それは、生成AIが生み出す「文章」と渡り合う際にも格好の助けになるだろう。

画期的な日本語読本の誕生!

集英社 WEBページ 
集英社新書 著作紹介より

図書館で、本書の表紙裏に上の文章が記されているのを読んで迷わず手にとった。

著者は、東京大学文学部教授の阿部公彦さん。
はたしてどんな文体で、どんなことを論じているのだろうと少し身構えてページをめくってみると、そこには堅苦しい雰囲気はなく、わかりやすい表現で文章やことばに関する事柄が記されていた。

著者は、本書の「はじめに」において、『ことばはときに、さながら魔術のように不思議であるが、その秘密は「形」にある、というのが本書の答え』と明言している。

それでは「形」とはなんだろう?ということで、目次にある具体例について、それぞれの特徴や機能、ことばの働き方などを練習問題などを交えて説明してくれている。
各章の終わりには、要点を箇条書きにした「まとめ」もあり、振り返りに役立てられるようになっている。

【目次】
第1章 学習指導要領を読む
第2章 料理本を読む
第3章 広告を読む
第4章 断片を読む
第5章 注意書きを読む
第6章 挨拶を読む
第7章 契約書を読む(1)
第8章 契約書を読む(2)
第9章 小説を読む
第10章 詩を読む

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集英社新書 著作紹介より

本書を読み終えた後は、ことばの世界の奥深さや豊かさを改めて感じることができた。

未知の世界があって、その世界はいつでも開かれているから、好奇心さえあれば、いつでもアクセスできる。

新たな地平が目の前に広がっているみたいな。
新しいアイテムを手に入れたような。

本書は、自分のこれからのことばのとらえ方、読み方、使い方のアップデートをもたらしてくれた。

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