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「R·E·S·P·E·C·T」
ジャックナイフみたいに鋭い文章で、「自分が目で見て、感じている世界以外の世界の一面」を眼前にババーンっと示してくれる印象の、英国在住のライター・コラムニストのブレイディみかこさんの作品。
この物語は、2013年にロンドンで始動したFOCUS E 15運動(若者向け宿泊所で立退きを迫られたシングルマザーたちによるグループ)と、グループが2014年に行った公営住宅地の空き家占拠・解放活動(反ジェントリフィケーション運動)をモデルとしたフィクション。
ジェントリフィケーション
(gentrification)
都市において、低所得の人々が住んでいた地域が再開発され、お洒落で小ぎれいな町に生まれ変わること。
「都市の高級化」とも呼ばれ、住宅価格や家賃の高騰を招き、もとから住んでいた貧しい人々の追い出しに繋がる。
「R·E·S·P·E·C·T」より
「都市の再開発」って一見いいことのように聞こえるけど、階層(クラス)の変化が生じることにより、もとの住民の生活や精神にマイナスをもたらすこともある。誰かの幸せが、別の誰かの不幸せに繫がっているといったような。
日本でも、東京や京都などで問題となっている。
本書を読んで、この物語は人間の物語で現在進行形だと感じた。
本書の登場人物の一人である日本人の若いアナキストの幸太(人物紹介には、「イエス・キリストか又吉直樹かみたいな髪型で人なつこく緩い性格」とある。)が、アナキズムについて語るセリフには、はっとさせられてしまい、自分はどうだ!?と考えてしまった。
「反対じゃないよ。むしろ繫がっているというか、表裏一体。人間に何かを強制するものは積極的に壊していくべきだよ。
人間の生は自分自身のものであり、他の何者にも支配されるべきではないから。
だけど、人間って、実は支配されたほうが楽だと思う部分があって、そうすればもう自分で何も考えなくて済むし、安心だからと思って自分の生を誰かに丸投げしてしまうんだ。
たとえば、国家とか会社とかシステムとかにね。自分から進んで奴隷になりたがる。
で、そのうち「より優れた奴隷になりたい」って競争を始めたりして」
「R·E·S·P·E·C·T」より
「支配されたほうが楽」だとか、「社会のレールから外れるのが怖い」とかそういう気持ちは、誰にでもきっとあると思う。
でも、自分の中には、「自分のことは自分で決めなきゃ、つまんない。」「レールってなんだそりゃ。そもそもレール自体が壊れて腐ってたら終わりじゃん。」なんて思ってしまう気持ちもある。
一応、大人と呼ばれる年代なので、ある程度システム自体は有効に使えば効果的であることは、理屈ではわかっている。
だけど、システムに従っていればよいわけでは絶対なく、「なんか変だな、気持ち悪いな。」と直感で感じることができる人間ではいたいし、本当に行動すべき時には「えいやっ」と行動できるように心は鍛えておきたい。
タイトルにあるRESPECTは日本語では「尊敬」となる。
少しばかりのリスペクト。
それを勝ち取るためにジェイドは明日、裁判所に立つ。
リスペクトのないところに尊厳はないから。
尊厳のないところで人は生きられないから。
「R·E·S·P·E·C·T」より
自分にも、それに他者に対してもリスペクトをと、背中を押してくれる物語であり、現実世界にも自分なりに思考して、自分ができることから始めていきたいと思わせてくれる作品だった。
同じイギリスの19世紀末の大英帝国を舞台とした作品として好きな漫画。
当時の大英帝国の階級制度をぶっ壊して理想を実現するために動く物語としては、世界観、設定、キャラクター共に魅力的であったし、アニメも良かった。
フィクションだと分かっていても、作品の世界を楽しむことができれば、そこから歴史や関連書籍に興味を持てるので、本から世界が広がっていくワクワク感がある。
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