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「お味噌知る。」

疲れていても、冷蔵庫に昨日とっておいただし汁があれば、お味噌汁とあとお肉かお魚を焼けばなんとかなるなと思える。

だし汁を鍋にかけてから少したつと、かぐわしい香りがたってくる。
そこに、季節の野菜やお豆腐、油揚げ、わかめや卵などその日のおかずや気分に合わせて、具材を入れて弱火よりの中火でコトコト煮込む。

具材に火がとおったら、火をとめてからひと呼吸おいて、お味噌を適量溶いたら、お味噌汁のできあがり。

「一汁一菜」の提唱者、土井善晴先生、初の味噌汁レシピ本!初の親子共著!
『一汁一菜でよいという提案』から5年。毎食の食卓で、お味噌汁を楽しむ土井善晴先生に、真においしい味噌汁を習った1冊。土井先生のアシスタントを務める愛娘・光さんも大のお味噌汁派。父娘共著となる初のレシピ本。だしや和食のルールから自由になれる発想の味噌汁から、シンプルな旬のお味噌汁、伝承のお雑煮まで。心・体・暮らし、も整う「お味噌という発酵食品」の素晴らしさに触れてください。

世界文化社 「お味噌知る。」土井善晴、土井光著
内容紹介より


土井善晴先生にかかると、お味噌汁が無限の宇宙になる。

水で具材を煮て味噌を溶くだけで充分だし、具材は野菜にお肉などの油やタンパク質を含むもの、素材そのものから美味しいだしが出る乾物食材に、はたまた残ったおかずの唐揚げや餃子などもお味噌汁に入れられるし、いろいろ組み合わせると具材から溶け出した味が集まって美味しさが生まれる。

本には、5つのテーマに分けていろいろなお味噌汁のレシピが紹介されていて、それらを眺めるだけでもなんだかお味噌汁を飲んだあとのように、ほっとした柔らかい気持ちになった。


産後にあまりに疲れていて、「お料理すること」「台所に立つこと」がひどく億劫になってしまったことがある。
そこには「ちゃんとやらなきゃ。」という謎のプレッシャーがあった気がする。 

その時は、今は亡き大好きだった義母が温かい料理をたくさん作って持ってきてくれて、そのおかげで心身もだんだんと回復して、今では「お料理すること」「台所に立つこと」は疲れて大変なこともあるけど、今日もご飯が作れたという喜びを感じることができている。

あの時、おかあさんが作ってくれた具沢山の豚汁の味は今でも大事な思い出だ。


土井善晴先生は、本書の最後でこう記してくれている。

「自分で作って食べることがすべての始まり」です。
(略)
 人間はいきいきと生きていくためには、自由でないといけません。何かに拘束され、指示されて、やらされるばかりって、ぜんぜん楽しくないでしょ。
 自由には、責任が伴うもんですけど、自由って、自分で判断できることです。人が決めるんじゃなくて、自分で「いいか、悪いか」判断して、決めて、行動することです。
 それに、自然物や身の回りの物の中に、自分できれいなものを見つけることができて、いいなあって感じられることも、自分で判断することなのです。
 大きなことは後回しにして、最初は小さな自分の身の回り、身近なことの中でいいのです。それは、自分の命を自分で守ることにも繋がります。自分にとっていいものに気づくということは、自分にとって悪いものがわかるということだからです。
 自分でわかるってのは、判断することで、それは自立です。自由になるには、自立しないと。自立しないと自分で何も決められないということなんですね。
 小さなことから、だんだん大きなことがわかってきます。そのためには、毎日のことで、一番身近な、「食べる」というおこないを、大事にすることなんですね。
 だから、「自分で作って食べる」ことが、すべての始まりです。 
 自分の食べるものを、自分で作ることは第一の自立です。お料理には、不思議な力があるんです。料理は愛情って言われます。自分で料理すれば、自分を大切にすること、自分を守ること。家族を守る力。命を育む力があるんです。

世界文化社 
「お味噌知る。」土井善晴、土井光著  より

本著は、土井善晴先生の自分の仕事や考えてきたことが、愛をもって溶け出して詰まっている温かいお味噌汁そのもののようなだなと感じた。

読んだことで、わたしなりにお料理やお味噌汁作りをして、自立して、自由になって、一度きりの人生を最後の時に「いろいろあったけど、楽しかった!」と思えるように過ごしていく決意をそっとすることができた。



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