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猫の尻尾はするりと抜ける

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#短編小説

短編小説|カムパネルラの手紙

短編小説|カムパネルラの手紙

 目が覚めると、部屋の灯りはついたままだった。いつのまにか眠りに落ちていたらしい。まるで何十年も何百年も眠っていたみたいに体が重い。リビングの床に転がっていたせいで背中は痛く、寒い。ずいぶん遠くまで歩いた後のような、空腹と気怠さと果てしなさが重なった眩暈。時計の針は午前2時を回ったところだ。

 喉がやけに乾いて、力の入らないまま無理やり体を起こした。不必要に重力を感じながら、よたよたと歩き冷蔵庫

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