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料理人の私が作るデザート

東京での修行時代、某星付きグランメゾンでパティシエ部門に配属されていたのですが、

元々ケーキよりお煎餅派。そこまで(食べる方で)デザートに対しては熱意がなかったものの、甘い物が持つ人を幸せにするパワーや高い芸術性に感動し、''作り手としてのデザート''に対する興味はどんどんと高まっていきました。

↓シェフパティシエによるウェディングケーキ


コルドンブルーにて製菓の基礎は学んでいたものの、学校での授業と現場での実践は別物。特にパティスリーではなくレストランパティシエの仕事は、料理人の仕事に通ずるものがあり、何とも言えない緊張感や臨場感がありました。


ほぼ毎週末結婚式があるお店でしたので、新郎新婦のご要望を見事に形にする職人芸に感激しました。新郎新婦によるケーキカットのあと、ケーキはパティシエの元へ戻され人数分にカット。離れた場所にある厨房へ運びデザートとして提供するため、時間との勝負でした。また、運ぶ途中で何度もケーキを落としそうになり、「お二人の一生に一度の大切な日を台無しにしたらどうしよう……!」という緊張感も凄まじかったです。カットがうまくいかず、人数分足りないかも……!!なんて事も。私がパティシエ部門を離れる最後の最後、ウェディングケーキの仕込みから仕上げまで全て任せて頂いたときは、何とも感慨深い気持ちになりました。


とはいえ私はあくまで料理人。早く料理に戻りたくてシェフに直談判し、パティシエ部門を離れる事に。
ですがその後も私の''作り手としてのデザート''への気持ちは強くなる一方で、今ではアシェットデセール(レストラン等で提供されるお皿盛りのデザート)は私の大きな強みと言えます。

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スペシャリテの''タルトタタン''
じっくりキャラメリゼしながら火入れした林檎を崩したパイ生地で包み、カルヴァドスが香るサバイヨンソースをたっぷりと。コニャックとラム酒をたっぷりと使ったほろ苦いチョコレートのアイスと、抹茶、オリーブオイル、はこべの青さがアクセントに。


私がアシェットデセールを作る上で大切にしていることは、味のメリハリと香りの立体感
おやつではなくお食事の後に召し上がって頂くため、甘いだけのデザートでは食べ飽きしてしまいます。そのため、''酸味''だけではなく''苦味''や''えぐみ''、''青臭さ''など一般的にデザートでは使われにくい要素も、好んで取り入れています。
また鼻に抜ける香りがデザートに立体感をだしてくれるので、スパイスやハーブ、時には野菜などもよく使います。


かなり攻めた料理寄りのデセール↓


ずっしりめのチョコレートムースにローズマリー。酸味の効いたレモンカードとトンカ豆が香るクランブルショコラ。香ばしいくるみのキャラメリゼに、塩気と香りのアクセントにブラックオリーブのパウダー、アイスクリームはすだちが香るジンと牛乳にゲランドの塩をぱらり。

頭の中と現実がなかなか一致せず苦戦したものの、最終的に納得いく形に仕上がりました。
要素は多く複雑でありながら、食べると素直に美味しい!と思えるデザートを目指しています。

それからこちらでも書いたように、厨房が狭く置ける機材が限られており、現代的なレストランデセールで良く使われる、エスプーマや液体窒素、食品乾燥機等は使えないため、アナログな火入れや仕込みで作り上げています。
※どうしてもスチコンや大型のフードプロセッサー等が必要な場合は本店で借りる場合があるのと、アイスクリームもパコジェットを借りて仕込んだものをタッパーに入れて保管。使う際は冷蔵庫で少しずつ温度を上げて盛り込みます。

その他のアシェットデセールはこちら
良ければご覧ください。

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パティシエの方と一緒に仕事をして、その綿密さと仕事の美しさに驚いた事をよく覚えています。
「料理人は仕事が雑なんだよ…」と仰る方も多く苦笑、''感覚的''な料理人、''理論的''なパティシエ、という印象。(勿論、一概には言えないと思いますが。)

かくいう私も例に漏れず超感覚的な人間で、パティシエのような正確で綿密な仕事は出来ておらず、やはり技術では敵いません。(左右対称よりアシンメトリーの方が好きなので、盛り付けもちょっとラフな方が好み。)ですが、甘い物は苦手だけど角ちゃん(私)のデセールは好き!と言ってくださるお客さんも多く、料理人であるからこそ作れるデザートがあるとも思っています。

これからも色んな方に''甘いもののパワー''で幸せを感じてもらうために、私らしいデザートを沢山作っていきたいと思います。

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