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武田麟太郎 日本三文オペラ

縁あって武田麟太郎という作家を知った。
1904年うまれで、太平洋戦争が終わって1年足らずの1946年3月31日に肝臓を病んで亡くなっている。

その武田麟太郎の「日本三文オペラ」という作品を読んだのだが、これがとてもおもしろかった。
映画の視点を取り入れた描写と主人公不在の定点観測的な手法で、浅草にあるボロい集合住宅に出入りする人たちの人間模様を描いている。
噂ばなしとか、痴情のもつれ?とか、労働争議とか。

「中の下」みたいな人びとと自分のあいだにはそんなに大きな隔たりはなくて、物語の最後にうっかり死んでしまう活弁士なんかも、労働者と経営者のあいだで上手いこと立ち居振る舞おうとするずる賢さはいつの時代にもあるあるだなぁと思う。

しかしこの小説が発表されたのは1932年。軍国主義化にドライブがかかってる時代なので…のほほんと笑ってはいられない不穏な空気も感じたりする。

武田麟太郎はプロレタリア作家として文壇に登場、転向を経験して陸軍報道班員として戦争にコミットしている。
いろいろ読んでみたいなと思っていたら、共和国から「蔓延する東京:都市底辺作品集」という本が出たばかりだったので早速買った。

読むの楽しみだな。

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