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記憶

日中は暑いぐらいになってきたので、春先に着ていた洋服を整理していました。

断捨離後はずいぶん洋服も少なくなったのですが、冬から春先にかけて着ていた洋服を、一年後に果たしてまた着るかどうかを考えた時、着ているイメージが全く湧きませんでした。

ですので、さらに洋服類を一掃させ、ダウンのアウターを一着と、今シーズン着る物だけを残し、それ以外のすべて手放すことにしました。

風通しが良く、すがすがしい様子のクローゼットを眺めながら、今まで目にしていた、クローゼットにかかっていた洋服のことを考えていました。

残しているものはかなり厳選させていたので、すでに少なかったのですが、その厳選したものの中でもなぜか着ないものがいくつかありました。

ときめくものを残していたにも関わらずです(笑)

その洋服自体は気に入っていて、だから残しているのに、なぜか着てみるとピンとこないし、着てもなんか変だなと思ってしまうものがあったのです。

そして、その服を見ると着ていたころの出来事を思い出したり、買った時期の状況など、あまりいい思い出がない洋服もありました。

不思議なもので、その洋服には何の責任もないのに、それを見るたびに一瞬記憶の反芻をしているようなのです。

それはまるで、その洋服に想念が形状記憶されているような感じで、写真のようにその瞬間を捉えて離しません。

そのため、私はいつも洋服そのものを見ているのではなく、その洋服を目にした途端、呼び水のように、忘れていた過去の記憶や思いの方を引っ張り出しているようなのです。

それは、結果として、洋服を『見る』という行為が、そういう過去を何度も何度も振り返るためのスイッチになっており、過去へ戻ることから離れようとしない思いにも気が付いたのです。

結局、よくもわるくもその時期のことを忘れたくなかったのでしょう。

そう感じたので、処分しようと考え、すぐにまとめて見えないところに移動させたところ、気持ちが一気に晴れていくのがわかりました。

私達は五感を通じて、見る、聞く、香る、触る、味わい、その度に記憶を呼び覚まさせているのかもしれません。

ただ、その記憶が思い出して嬉しかったり、楽しいものだったらいいのですが、見るたびに嫌な気持ちになるとか、聞くたびに過去の記憶で怒りが沸き起こるとか、望まない記憶の場合もあるでしょう。

それらが無意識にトリガーになっているのであれば、出来るだけ五感から遠ざけて、過去を反芻するようなことをやめた方がいいかもしれないなと思ったのです。

思いや記憶の威力というか、念の強さは、おそらく洗濯したぐらいで消えることはありません。

そこに良い記憶を上乗せしたところで、むしろそれは表面的な効果に過ぎず、それどころか、今のいい記憶を打ち消すぐらいの威力はあると思います。

布が念を吸うと言っている人もいますし、ぬいぐるみや人形など、形作られたものはいろんなものが入り込む、依り代になりやすいとも考えられます。

ですから、離れるためにはもはや物理的に手放すしか方法はないのではないでしょうか。

ただ、中には捨てられないものもあると思います。

記憶や過去をまだ手放せないし、例え悲しい記憶であっても、大切に持っていたい場合もあるでしょう。

ですから、その時は思いを大切にして、焦らないでもいいのかなと思います。

そう考えると、私という存在であっても、もしかしたら記憶や想念の塊なのかもしれないなと思うのです。

確かに遺伝子の中には数えきれないほどの記憶、ビッグデータがありますから、その中で必要な記憶を瞬時に取り出すことが出来ているでしょう。

今必要がない記憶なら、あえて取り出さなくてもいいし、時間と共に記憶から感情が離れていくでしょう。

本当なら、記憶を呼び覚ますことから一切離れて、放っておけば心は早く楽になるかもしれません。

忘れたいにも関わらず、反芻し何回も何回も思い出すことは、記憶を頑張って定着させようとしている行為になりますから、早く忘れたかったら、関わる全てを五感から離すしかないのでしょう。

例えば、学校の勉強は、忘れないために繰り返し繰り返し記憶するように学びますよね。

記憶の反芻はそれと同じ行為です。

ですから、持つことがうれしかったり、それを身に着けている姿を想像して、そういう自分を好きだなあと思えるかとか、逆に見るたびに良い気持ちを起こさせる、そういう方向に呼び水になるものを新たに購入し直すしかないのでしょうね。

新しい記憶と共に日々を過ごすと、過去の記憶に向いていた意識が、今に向くかもしれません。

過去を見続けてもいいし、未来に向かっても、今を生きてもいい。
いつも自由意志を与えられているのです。

五感を研ぎ澄ましながら、これは手放せないなとか、これはもう卒業だなとか、見ていくのも楽しいかもしれませんね。

いかがでしたか。

今日もお読みいただきありがとうございます!




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