まずはロールプレイングで、概念を理解する Glicoグループのサービスマネジメントについて話を聞く【2/7】
江栄情報システム様(大阪市)は、Glicoグループ様の情報システム部門としてグループ全体のITシステムを担当しています。来年に基幹業務システムの刷新を控え、その土台作りのために全社規模でITサービスマネジメント(ITSM)を導入しました。「ITIL®4」という最新の考え方で「ServiceNow」を導入した事例はまだ珍しく、同社が経験したストーリーには大きな価値があります。2人のご担当者と、DIG2ネクスト代表の鈴木寿夫が対談しました。
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小泉様 ServiceNowは当初、海外の事業所だけで導入しました。時間が無かったこともあり、「とにかくこれを使って問い合わせしてください」という形で、トップダウンで使ってもらいました。
結果的には、それが奏功しました。様々な要件を聞いて作り込もうとすると、サービス管理に必要のない情報や機能まで作る結果になり、時間と労力を浪費してしまいます。ServiceNowを標準的な状態で導入し、あえてそのまま使ったことが成功につながりました。
日本の全事業所には結局、2023年6月に展開することになりました。まずは海外から導入し、効果を理解してもらった上で日本に導入する方が容易だと考えたのと、来年の2024年に基幹業務システムを「SAP HANA」に刷新する計画が進んでいるので、このタイミングでServiceNowを導入し、慣れておいてもらう必要があるからです。
まずは江栄情報システムにいる40人ほどのメンバーに、ITサービスマネジメント(ITSM)の概念を理解してもらう必要があります。2019年ごろ、その教育をDIG2ネクストにお願いしました。
鈴木 当社で講師をしている金田幹也が、メンバーの皆さんの教育からプロジェクト管理まで、3年ほどかけて担当しました。
小泉様 教育の最初に、サービス管理がいかに重要かを理解してもらうためのロールプレイングゲームを行いました(※現在は提供していません)。システムが止まると売上にどれくらいの影響が出るか、1つのインシデントがどういう事態を引き起こすのか。そうしたことをゲームで疑似体験し、システムと業務の関係性を効果的に理解します。
これを体験すると、私たちが本来注目すべき対象はITシステムではなく、それが使われている業務にあることを知ります。この理解を得ることから始め、「ITIL®」の専門的なトレーニングへと進んでいきます。
教育と並行して始めたのが、ServiceNowの展開です。基盤の導入と、プロセスを作り上げるところを鈴木さんにコンサルティングしていただきました。
鈴木 ITSMの仕組みを作ると聞きましたが、Glicoグループ様のシステムはかなり規模が大きく、通常のプランでは難しいと感じました。そこで小泉さんに詳しい状況を聞きながら、ITSMのプロセスの最初の部分を無料でアドバイスすることにしたのです。
Glicoグループの規模でやるなら、「ITIL®」と「SIAM™(Service Integration and Management=サービスインテグレーションとマネジメント)」の知見を組み合わせていかないと難しいと説明しました。
山下様 対象となる業務は、需給計画(製造量と在庫量の計画)、製造、在庫管理、受注、出荷、債券回収、財務会計、管理会計までが含まれます。営業、マーケティング、商品開発と間接業務以外のすべてがスコープです。
鈴木 「ITIL®」は基本的に単一プロバイダーのサービスマネジメントであり、「SIAM™」はマルチプロバイダーのサービスマネジメントです。実際、今回の対象は工場も含めたすべての基幹業務システムですから、まさにマルチプロバイダーになります。今回は小泉さんにも「SIAM™」の講習を受けていただきました。
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